絶望へのカウントダウン
一日2話投稿!?うせやろ!?
ズガァァァァァァァァン!!!!!
「…………ぐっ、は……!?」
「幻夢!?!?」
幻夢の胸元を槍がヘリごと貫いた。血を吐いて倒れる幻夢。
「幻夢さぁぁぁぁぁぁん!!!!!」
「おい、幻夢!?幻夢!?しっかりしろ幻夢!!」
「え…………!?」
「な、何でだ……ラベンダーの守護障壁はまだ発動していたはずなのに……!?」
怜虹は急いでヘリの窓から槍の飛んできた方を見た。そして彼は衝撃の事実を知った。
「なん…だと……!?こんな事…出来るやついんのかよ…!?」
怜虹が見たのは、守護障壁に入った大きなヒビ。しかしヒビはさっきの攻撃で入ったはず。
「何、怜虹!?一回目に槍を当てられたこと以外、守護障壁に異常はなかったはずだよ!!」
「いや……違ぇ。『ヒビが』…『一箇所しかねえ』んだよ…、おかしい…ならどうして一発目は貫かなくて二発目が貫くんだよ……!?………はっ、まさか!?」
「まさかって何!?早く教えてよ!!」
「……そのまさかさ。…あのバリアー、中々に強度がある。槍一発投げた程度じゃあそう簡単には貫けない事ぐらいデータにある。一発目は確かに防がれた…けど、ベアルさんはもう一発投げた。…そう、『バリアーのヒビが入っているところに向かって』槍を投げたのさ……そうでしょ、ベアルさん?」
「ああ、何もなっていない所にただ闇雲に槍を当てても変わらん。ヒビが入って、脆く、弱くなっている所に槍を当ててやればその障壁を貫くことが出来る…と踏んでな。ここまでは俺の想定内だがな」
「それにベアルさん、ラッキーだね。一人やっちゃったみたいだよ。あれは……幻夢君かな?」
「ふん…そうか、あいつには剣士として、剣で止めを刺したかったのだがな。まぁいい、どの道を通っても天使達は俺の手によって死ぬ運命なのだからな」
「ヘリが堕ちるぞ!!どうすんだよラベンダー!?」
「ま、まだやれる……!!まだホープを生み出せる…!!限界なんて考えるな…限界って決めるから限界なんだ!!限界だって思わないうちは………まだ限界なんて言わないから!!!」
ラベンダーの眼がビキビキと血眼になっていく。ドクドクと不整脈を起こしているように、ラベンダーの左眼も狂おしく脈打っていた。
「うっ…!!」
「大丈夫かラベンダー!?」
「もう、もう少しで…出来る!!もう少しで……!!、
『アイ解放』、『無限泡沫の揺蕩い』………『11番目の魔法・イサの気泡散弾砲』!!!!!」
ラベンダーが光泡を地面に向かって放つ。その泡はまるで石鹸のように膨らんで、ヘリをふんわりと包む緩衝材となる。しかしヘリコプターほどの重さがある物体を止めるにはまだ光泡は足りない、ラベンダーは必死に能力を使った。
「くっ……!!これじゃまだ全然足りない……このままじゃ堕ち…!!」
「まだ諦めんじゃねえラベンダー!!!!!」
光泡を放つラベンダーの手にそっと触れる手。その手は橙色に光っていた。
「俺のホープも分けてやるから、……お前は頑張れ!!俺達がついてる!!」
橙色の光がどんどん紫色に変わって、泡の出力もどんどん大きくなっていく。そのおかげでヘリの落下加速度はどんどん落ち、どんどん目前に迫っていた地面も緩やかに近づいていった。
「…死が遠のいたな。ほんの少しだけ…な」
ヘリコプターは不時着したものの、乗組員達が落下によって負傷を負うことはなかった。
「…幻夢……」
「…ちっ、情けねえ。結局俺は幻夢がいないと何も出来ねぇって…今になって気付かされるんだよ…」
少しずつベアルが近づいてきた。重い装備がぶつかり合う音を鳴らしながら、確実な一歩一歩で歩み寄ってくる。
「……往生際の悪い連中だ…しかし頭は討ったようだな。俺はあの塵のような数の愚か者に裏切られたが、スクラーヴや他の仲間達、そして俺が信じていた悪魔達の想いはこの俺の胸の中で鳴っている…その信じる人達のために、…ここでお前達を殺さなければならん」
ベアルは黒剣を振り、そして構えた。ここで剣術、否、武器を使えるものは幻夢しかいない…が、幻夢は意識を失って行動不能状態になっている。
「クソっ………たれが…………」
「まあそう怯えるな、全員必ず一撃で仕留める。お前らが無駄な抵抗さえしなければ…痛みもなく瞬く間に殺せるだろう。………………」
ベアルが目をギョロギョロと見回し、誰を最初に仕留めるか決めている。その時間はまるで死刑執行を待つ罪人のような、生きた心地のしない気分だった。
「執行を、開始する……………」
「………ころ、させるもんか……………殺させる、もんか…………!!!待てぇぇぇぇええ!!!!!」
「「「!?!?」」」
ベアルの方に向かって走っていく一つの小さい影。
彼女は立ち止まらず、寸分の躊躇いも見せず、どんどん急接近していく。全速力で走る彼女を止められるものは、誰もいなかった。
「ほう…………お前か?まずはお前から死にたいようだな………小僧」
「うぁああああああああぁぁぁ!!!!!!!」
ベアルの黒い鎧に渾身の殴打が放たれた。鋼に拳がぶつかった音が辺りに強く鳴り響く。
……ベアルに飛び込んで行ったのは、瞹だった。
「瞹!?!?」
「…哀れだなぁ天使達よ、こんなか弱い小娘までこの俺に逆らわせようとは」
「っっっっっ……!!!っつうぅぅぅぅ……!!!」
瞹は鎧を殴りつけた右手を押さえ込んだ。岩よりも固いあの装甲を殴った手が真っ赤に腫れ上がり、ズキズキと痛む。涙が出るくらい痛い。
しかし瞹はもう一度立ち上がって、今度は左手で鎧を殴る。
結果は変わらなかった。が、瞹はまた右手で殴り、その次に左で殴り、右、左、右、左…とベアルを殴り続けた。
「瞹!!!!!だめ!!!!!……戻ってきて!!!!!」
「お前は逃げろ瞹!!!お前だけでも生きて帰るんだよ!!!!!」
「……ハ、…フハ……、フハハハハハハハハハァァァ!!もう目も当てられないぞ天使達よ!!お前達がその力を持ってして守りたかったのはこの現実か!?俺の持っている、これこそが力だ!!!力のないものは強者に踏み躙られ、ねじ伏せられる…その現実が世の常だと、改めて思わせてくれるなぁ!!!!!」
ベアルは高々と、天使達を憐れむように高笑いを上げ、足元にいた瞹の足を踏み潰した。
ベキベキベキッッ!!!瞹の柔い足の骨が粉々に砕け散る。
「いあ゛あ゛あ゛あああああああああああぁぁ!!!!!あ゛あ゛あ゛ああああああぁぁぁ!!!!!!」
「瞹……!!!もうやめて………!!!」
悲痛の泣き声を叫びながら悶え苦しむ瞹。その上でベアルの剣が振りかぶられてるのも気づかないくらいに悲痛な激痛を感じていた。
「…煩い奴だ、無駄な抵抗さえしなければ痛みもなく殺せると言ったのに…まぁいい、とにかく死ね!!」
「瞹!!!!!避けろぉ!!!!!!」
怜虹に言われてやっとはっとした瞹。しかしもう剣先は目の前へと迫っていた。
瞹は咄嗟に目をつぶった。
剣が体を切り裂き、血が辺りに飛び散った。
瞹に覆い被さる青い姿。その背中には大きな傷が刻まれ、止めどなく血が吹き出していた。
「………え…、………えっ……!?あ………、あ………」
「瞹ちゃん…、早く、逃げ、て………瞹ちゃ…ん、生きて…ね」
意識を失ってなお、彼女の邪魔にならないように、瞹を避けて、碧は倒れた。
「碧さああああああああぁぁぁん!!!!!!」
「嘘でしょ…!?碧、あんな……」
「順番が変わってしまったが…まぁいい。次はお前らだ」
ベアルは剣をラベンダー達に向けた。
ラベンダーは息を荒らげながら、銃を形取った指をベアルに向ける。
「…よくも…、よくも碧と幻夢をやったなぁあああ!!!」
「ラベンダー、無茶するな!今のお前のホープじゃ奴は倒せな…」
「『9番目の魔法・ハガラズの泡』……!!!」
「くどい!!!!!」
ベアルは一瞬で間合いを詰め、ラベンダーの首を掴んでギリギリと持ち上げた。彼女は全身をバタバタ動かして抵抗するが、彼女に残った体力では、ベアルに抵抗する事すら出来なかった。
「が………ぐ………、ぁ………」
「もう無駄と解かれ。お前達は負けたのだ。この『戦争』に負けたのだ。お前達がここで何をしてどう足掻こうが無意味だということをやっとで知ったか」
ラベンダーは意識を失い、暴れていた脚もダランと垂れた。ベアルはラベンダーの首から手を離す。
「…テメェ……、折角死ぬぐれぇならここでお前に一泡吹かせてから死んでやるよ……俺の『希望』はまだ終わっちゃいねえ…俺はまだ戦う!!幻夢、ラベンダー、碧…そして瞹のために!!!『アイ解放』『烽火連天の憎喰』…!!!」
怜虹が能力を発動した。左眼あたりの血管がビキビキと浮き出る。しかしベアルは振り向きもせず淡々と言った。
「…下らんな」
「……あんだと…!?」
「お前如きこの俺が手を下すまでもないという事だ。俺はこれからあの小娘に止めを刺しに行く…邪魔をするな」
「…ふざけんな!戦いはまだ終わってない!!お前が戦士か剣士か何だか知らねぇがここでお前を引き止めて、瞹を逃が………」
「やれ」
怜虹の体の内部から突然、黒い大きな針が無数も飛び出した。その針は全身中から突き飛び、そして怜虹はそのまま倒れ込んだ。
「な……今になって、これ…が…………」
「ナーイスタイミーング。中々いい時にやってくれたね。まだ君のヘイトを怜虹君の体内に留めて置いておいたのかー…、君も割と執念深いもんだね」
「………こいつは僕が殺すと決めていたから、ベアルは僕に譲ってくれたんだよ…で、まぁこいつはもう死んだね。さよなら。もう二度と顔見せんなよ。
『Flexibles Quecksilber(形を持たない凶器)………』」
読んでいただきありがとうございました
紛うことなき絶望劇ですね〜、この状況をどうやって抜け出すのでしょうか…次回も乞うご期待
☆Babyfaced Rumors
「先鋭の蘭香陽菜さんはトレーニング好きで、ソルジャーのトレーニングジムコーチも兼任しているそうです!熱心ですね!それではまた!」