反撃開始!!!
相変わらず疲れてます。
私のキャリアが低速になってしまったので上げるのもだるいし音楽もかけられません(死)
「ラベンダーちゃん、ちょっと手貸して…」
「え、何急に…?」
「いいからいいから」
幻夢と怜虹は覇気を放っている。そのピリピリした空気は、その場にいる全ての生物を圧倒している。スクラーヴはおろか、あのベアルでさえもその威圧に退きそうになっているところだった。
「フッ…、体内に残存している僅かなホープを極限まで引き出し、身体を動かすことで持ち堪えたか。されど二人共もうギリギリの状態。死を恐れて火事場の馬鹿力を出しているまでよ、さて、その状態…いつまで持つかな?」
「クソ、こんな奴ら僕達の手に及ばない…!!クウェックシルバーを最高火力にして一気に潰す…!!」
向こうもアイ解放を行い、戦闘体勢に入る。
「瞹、近くにいると危ないぞ。そろそろラベンダー達のところに戻れ」
「え、あ、…うん!!」
瞹は振り返って、向こうの仲間たちのところへ駆け出した。
「……」
スクラーヴは瞹を逃がすまいと掌を前に突き出した。
完全に不意打ちを狙った一撃が放たれる。
誰も見ていないタイミングと完璧な射角、必要最低限の殺傷能力がある弾丸をスクラーヴは撃ち込んだはずだった。
しかし、その射撃は瞹の体とどこにも直撃しないところか、弾丸が逸れたわけでもなくクウェックシルバーはどこかに行ってしまった。
「…!?なんでだ…僕のクウェックシルバーは確実にあのガキの脳天貫いたはず…完全に不意打ちを狙っていたのに…ッ、お前ら!!あいつはなぜ死んでいない!?」
「…言ったろーがよぉ、仲間を守るって…」
「!!」
怜虹の手が橙色に光る。しかもその光は像を作り、スクラーヴや他の悪魔たちからは、「牙の形をしている」ように見えていた。
怜虹は掌を見せるように開く。その手の真ん中からは血が垂れているのが見えた。
「俺、人より小心者な癖に怒りやすくってよ…、怒りが先に出てホープを上手く制御できねえんだ。本当に自分勝手な奴と思っている…だから、俺は自分の天使の能力で…『憎しみ』を『希望』に変えることにした」
怜虹は手を握った。
「そしてこれが俺の能力の一つ、『烽火連天の憎喰』…『犬』だ。餌を寄越せと肉を寄越せと…今日の俺は飢えてるぜ、なぁ?」
「…!!調子に乗りやがってッッ……!!!」
怜虹の口が、久しぶりにニヤッと歪んだ。スクラーヴは激昴し、クウェックシルバーの生成を準備する。
「犬だと、お前も挑発に乗るなスクラーヴよ!!所詮犬畜生如きにお前がやられるはずがない、逆に奴の弱点を暴いて返り討ちにしてやれ!!」
「それがベアル…僕の能力は熱に弱い、あいつの超高温の腕に触れただけで硬質化が解ける…!!」
「チッ、なら奴の腕に当たらぬよう確実に急所を狙え!!…ッッ!!」
「………余所見してる暇ないだろ」
今度は幻夢がベアルに不意打ちを仕掛けるが、流石のベアル、大剣を盾にしてその攻撃を跳ね除けた。重い金属が辺りに高く鳴り響く。
「…余所見だと?冗談はよせ小僧よ。先程お前はこの俺に何も出来ないまま死に損なったのだぞ?今更お前に何が出来る、剣使いの名に恥じた素人如きが」
「…悪いが、俺にだってプライドはある。…剣使いとしてはお前の方が数枚も上手だが…俺も天使として、お前に負けていられないんでな」
「………なんだと?」
ベアルが剣を構え、ノーモーションで振りかぶる。その速さは並の人間はおろか歴戦の居合使いでも見切れないような素早さだった。
しかし、幻夢は一歩引き、重心を落として居合切りで刀を構えるような体制をとった。
「それが日本流の居合切り…と言ったところか。だがこの俺の剣速には追い付けまい!叩き潰れて死ね!!」
幻夢は深呼吸をした。自分の体の中の、そして自分を取り巻いている空気の循環を意識する。
ここという時に限って、幻夢は落ち着いていた。いや、むしろそれが彼の集中状態なのだ。ベアルの大きな大剣が振り落とされるその影の中で、極僅かな一瞬よりも短い時間の中で、空気の温かさ冷たさ、ビリビリ感じる威圧感と、自然と一体化していく自分の意識を研ぎ澄まし、剣を、感覚を、極限まで鋭くしていく。
「『六根清浄の業風』…、『人界道 称名念仏・風纏剣技』」
アイ解放した左眼を思いっきり開く。ベアルは、幻夢の姿を見る間もなく、彼の姿が消えたと錯覚した。
「…なんだと!?」
ベアルは振り向く。しかしそこに彼の姿はない。辺りは瞬く間に無音に包まれて、一気に場が静かになったのを感じた。
「…奴は何処だ!?この俺が奴を見失うはずが…ッッ!?」
辺りを見回すが、そこに幻夢の姿は見えない。ベアルが感じているのは、大荒れの天気に吹く、強い風だけだった。豪風が、左から右へ、右から左へ。前から後ろへ、後ろから前へと強く吹き荒れていくことだけしか感じられなかった。
次の瞬間、ベアルの体がズタズタに切り裂かれる。強靭な素材で作られた彼の軍装をもその一閃一閃が貫き、その切り口から血が溢れる。
そこでベアルが勘づいた。
「…まさか、まさか…!!『この風そのもの』が、あいつなのか…!!奴自身が強く吹き荒れる風になって俺を斬り裂いているのか…!?」
竜巻のような風の音が辺りに響く。その音が鳴る度に、ベアルの体は次々と切り裂かれていった。
「ぐっ…はぁっ…!!」
「ベアル様!!」
遂にベアルが地に膝を着いた。彼の口から血が零れる。しかし幻夢の攻撃の手は止まず、その風切り音は鳴り止む事を知らない。ベアルは即座に立ち上がる。
今度は、ベアルは剣を地に刺し、立ったまま目を閉じた。
「ベアル様、危険です!あの猛攻の中でその様なお自身を危険に晒すことは…!!」
「黙っていろ!!」
ベアルもまた深呼吸をして、目を閉じ風を感じ始めた。
「奴が俺が視認できないくらいの、異常なほどのスピードで移動しているのは確か。それを風と錯覚しているまで…だが、奴の体が空に消え去った訳では無い。奴はまだ実体だ。前から後ろに行った後は必ず後ろから攻撃が来る。残像や異次元速度を作っている訳でない故に、それさえ理解出来れば、そして奴の向かってくる方向を予想出来れば…この大荒れた風を取っ払うことが出来る…」
「……………そこかぁッッッ!!!!!」
ベアルは目を見開き、振り向き様に剣を抜いて振った。
ガキィィィン、と金物がぶつかり合う音が響いた。
ベアルの黒い大剣の先には、光剣を持った幻夢の姿。
「…っっ、ぐはぁっ!!」
幻夢の体に強烈な衝撃が走り、彼は血を吐いた。
「幻夢っっ!!」
「ふん、流石に俺もあの速さは叩き出せない。褒めてやるぞ天使よ。剣技では俺の足元すらにも及ばないものの、その蝿のような小癪なすばしっこさで、この俺の膝を地に着かせるまでの連撃を繰り出すとはな。
しかしどうだ?その弊害というのもお前の脳内にあったか?滅茶苦茶なスピードをいきなり止めようとすると、その逆方向の等しい力が自分の方へと帰ってくる…お前でも知っているだろう、作用反作用の法則と言ったところか。お前があまりにも速すぎるスピードを出し過ぎたせいで、今、お前の体にもそれ相応の衝撃が加わったようだな」
「…そうか、どちらにせよこの速さはもう出せない。そこまで見切られていたとは、流石歴戦の剣士…だが俺はここで死ぬわけにはいかない!お前を倒すまで…俺はこの風を止めないぞ!!」
幻夢の体制はフラフラだったが、すぐに再び剣を持ち直し、構えの姿勢に入った。ベアルもまた剣を構え直す。吹いていた風は、二人の間だけいつの間にか止まっていた。
「やる気だけは充分だな…なら見せてみよ、死を乗り越えたお前ならもう少し俺を楽しませてくれるはずだ。さぁ、もう一度舞ってみよ、その薄汚い天使の翼でな!!!」
読んで頂きありがとうございました
バトルシーンは難しいし表現被っちゃうけど、まぁキャラゲーならぬキャラ小説みたいなとこあるので大目に見てやってください…次回は幻夢vsベアル、怜虹vsスクラーヴ、再熱です!次回も乞うご期待!(しないでね)
☆Babyfaced Rumors
「怜虹の能力、熱変換の能力なんですけど…ここで具体的な数字出しちゃうと怒られそうなので数は言いません。しかしわかりやすく言えば2秒くらい握ってると火傷しちゃう感じですね。それではまた!」