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転生トメル  作者: たしおじゅん
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ー1話ー 1章 1節 転生者になれなかった男(1)

みなさん初めまして。

私はたしおじゅんと申します。私は小説が好きで趣味で描いたものをこちらに載せさせていただくことにしました。

今回初めて異世界転生ものを書いてみました。

書き方には自信がありませんが、物語としては少し変わっているものを書いているつもりです。

今日は3話まで同日配信する予定。それ以降は未定ではございますが、定期的に配信させていただこうと思ってます。

普段はWordで縦書きで書いているので多少文章の配列や、行間等に違和感を覚える方もいらっしゃると思いますがその場合はお手数ですがご教授願えればと思います。


それでは皆様が少しでも物語をお読みいただければと思います。

 薄暗いねっとりとした陰湿な空間に血が焼け付く臭いがする。何度も嗅いでいる臭いだがこればっかりは慣れない。と言ってもこの臭いは俺のではない。

 敵たる魔物の臭いである。俺の炎灼爆破は威力が高いが、加減を知らない。

 敵の姿はおろか血の一滴足りとも残さず焼き尽くす。この炎で数千の敵を焼き尽くしてきた。どの敵も瞬殺で歯ごたえがない。


 しかし、この世界ではこの魔物たちも跋扈して街を襲って人を食らっている。兵士や冒険者がいるが、ゴブリンやコボルトですら訓練を積んだ人間が倒せるレベルである。中級の魔物や大型の魔物は超高レベル冒険者や神話級の武器に選ばれた者しか対応できない。しかし、そんな強い人間になる前に大抵死んでしまう。知能がある魔物は魔族と呼ばれ、人間に匹敵する知能を持ち、優先的に強くなっている人間を狩る。

 因みに俺は狩られる側ではない。狩る側の人間だ。

「ユウタ逃げて!!」

「ん?」

 俺の仲間の声に振り向くと不意をついて攻撃してきたクマ型の魔物グリズリーが俺に30センチほどの爪で切り裂こうと丸太のような腕を下ろす。

しかし、爪は届かない代わりに炎が灯り、爪を高温で溶かしていく。やがて炎はグリズリーの体に襲いかかり焼き尽くす。自動で発動する炎壁が発動したのだ。因みにグリズリーは大型の魔物であるが俺にかかれば触れずともこうなる。

「大丈夫?ユウタ」

「大丈夫なのは知っているけど無茶はしないで!」

「もう僕の出番が出番がなくなるじゃないですか」

3人の仲間が三者三様の反応をしながら駆け寄ってくる。


 綺麗な金髪で大人しそうだが人一倍俺を心配してくれる、アリス。人間のようだが、目の色が赤い魔族だ。魔力で身体能力をあげて戦い、協力な魔法も使うマルチレンジタイプ。そして、利用されたこの世界の魔王の娘だ。だが、俺の前では信頼しきっていてよく抱きついてくる。発育の良さも魔王級だ。

 青髪でボクっ娘だが巨乳の魔法使いのレイル。いかにも魔法使いという大きな帽子をかぶっている。レイルの魔法は強力な範囲攻撃で敵を焼き尽くす。いつも本が好きでちょっと大人しいが知識欲は誰よりもあって、俺がたまに漏らす現世の知識を食い入るように聞いてくるのだ。普段は言葉にはしなくても優しい気遣いをできる優しい子だ。。素直で不器用なだけの女の子。


 赤髪でちょっと男勝りだが、ツンデレなところがあって優しいリゼッタ。ポニーテールの髪型で可愛いことこの上ないが、俺の次に力が強くて神話級の大剣をおもちゃのように振り回す。二人に発育では勝てないが決して貧相ではない。その分夜はいつもの剣呑な雰囲気はなくて奉仕の気持ちの表れなのか従順だ。

 どれも可愛い俺の眷属(おんな)達だ。パーティーを組んでから1年くらいだが、ついに最後の敵、神のところまであと一歩だ。

 今まで戦ってきた魔王とされた人物は()()()神にいいように利用されていたのだ。今は人間軍と魔王軍が別空間で、天使と言われる神の使い魔に対して足止めを行なっているはずだ。この世界の歴史としては奇跡に近い出来事だ。

 

 神に抗うために数百年争っていた種同士が手を結んだ。俺もアリスも互いの仲間を数多く葬ってきたが、互いを知り共存する道を知った。

 長きに渡る禍根は全員の頭からそう簡単には消えないが、操られた魔王が正気に戻った死に際に共存を口にしてくれた。魔王の娘が父たる魔王を抱きしめながら、涙を流すままに人間軍と魔王軍に語りかけた言葉が禍根を薄め、共通の敵を滅ぼすことを誓わせた。状況はわからないが神の軍は精強で、士気が高くとも混成軍では持ちこたえるのがやっとだろう。


 その間に俺たちのパーティーで早く神を殺さなければならない。

 神が作り出す魔物や天使達を殺しながら最短の道を進んで行く。行けども行けども同じような空間だが俺のマップには敵たる神の姿がはっきりと見えている。強い魔物が次々押し寄せているが、俺たちのパーティーなら切り抜けられるはずだ。


 アリス、リゼッタ、レイルもステータスは勿論、武器のプライオリティもありえないほど高くなっている。それは俺と血の契約を結んでいるからだが、血の契約がどんなものかは想像に任せる。武器はそれぞれ神話にまつわる土地を周り、神の洗礼としてボス級の敵を倒して手に入れたのだ。

現れた瞬間に道を塞ごうとする天使達は肉塊になるか存在が消滅する。

大きな力の差をもって魔物を力押しで突き進んでいく。やがて行く手を阻む敵が減り、終わりへと急ぐ。


「見てあの光」

「良しゴールだな」

アリスが見つけた光をさし、俺たちはそこへ駆けて行く。

「みんな行くぞ!」

「「うん!」」

 そこには何色と形容したらいいかわからない歪んだ色の空間があった。安心なことに地面はあり足はついている。もっともフライの魔法で空も飛べるのでなくても問題ない。

すでに気づいているが頭上には(もや)がかった白い格好をした存在がいる。こいつを倒すために俺はここまできた。


「よくここまできたなユウタ」

 ラスボスが言いそうな言葉ベスト5には入るテンプレートな台詞。

「あぁ。お前が神、創造主って言われるやつか。ようやく見つけたぜ」

「ふんっ神に楯突くことの愚かさを知らぬ者め」

「何が神だ!好き勝手に人を操りやがって。お前が好き勝手にしてきたことがどれだけこの世界を生きるものを苦しめてきたか」


 白い存在は靄がかっていて姿を形容しがたいがだんだんと白い衣を纏い、俺たちの神というイメージというものに近づいている。髪の毛も白くウェーブがかって長い。あたまにもなにか巻いていて、俺の世界で言えばギリシャっぽいとでもいうのか。

「お前の頭の中を読んだ。神はこんなものだろう」

我が意を得たり。靄はシルエットだけなのに嘲笑めいた声が感に触る。

「まあそう怒るな。お前達に合わせた姿はどうだ?」

ひとりでに神の会話が進んでいく。こいつ。絶対殺す。

「あんたがパパを!!」

「待てアリス!」


 俺の制止も空しく、その言葉とほぼ同時にアリスの渾身の力を込めたブロウが靄を吹き飛ばす。しかし、というか当然のようにアリスの身体は神をすり抜け、同時に首に靄が絡みつき一瞬にして質量のある巨大な腕に変わる。アリスの体は全身を掴まれ屈強なはずの体は簡単に絞られていく。

「ぐっ!」

「アリス!」

いつのまにか詠唱していたレイルのサンダー魔法がピンポイントに腕を貫くが、焦げた腕はまた靄に代わりアリスの身体が落ちる。


 床といえばいいのかわからないが、地面のような面があるので俺がアリスの身体を受け止めた。窒息死はしていないが、一瞬で気を失ってしまっている。

「アリスは大丈夫だ」

リゼッタ、レイルも俺の言葉に安堵はしたが、これまでと比べ物にならない強敵に顔は固い。アリスは気が早ったが、油断をしていたわけではないのはわかっていた。それでも瞬殺される仲間達の姿に警戒心が急激に高まる。

「こっからは三人でやるぞ」

「「うん」」

 俺の怒気を孕んだ言葉に二人はなぜかいつもの表情が戻る。そこで緊張とくなよ。とも思うが、それはこれまでの俺たち四人の信頼の証だ。


 俺たちは今までどんな敵でも倒してきたことからくる確固たる自信の表れだ。一人ではダメだとしてもみんなでなら。

「殺す!!」

 リゼッタが駆ける。アリスとよく喧嘩をする仲だが、認め合うライバルだ。一瞬でやられたアリスの姿に怒りの一撃を喰らわせるため靄がかった神との距離を一瞬で詰める。

 リゼッタの動きをわかっていた様に靄は簡単に距離をあける。が、それもリゼッタの予測の範疇だ。4人のリゼッタの姿が靄を囲んでいた。リゼッタのスキル分身(アバターズ)だ。

 このスキルの凄いところはすべての分身と武器までもが実体を持っていることだ。リゼッタの必殺技でこれ見て生き伸びた者はいない。


「だからなんだというのだ」

靄は嘲笑する。靄に物理が効かないことはアリスとの戦闘で明らかだ。でも、神の野郎は俺たちを舐めすぎだ。

雷撃の拘束(サンダーバインド)

レイルの魔法が天からリゼッタの剣に雷撃が落ちる。雷撃が分身した剣同士で結びつき四角の結界を作る。

「これで完成!」

 さらに神の頭上にも雷を帯びた玉がありピラミッド型の形に靄が閉じ込められた。霧が囲いから抜けようと足掻くが結界は少しも気体である神の体を逃がさない。

「よくやった」

「なんだ!?」


 神の焦りは閉じ込められたことではなく、俺の剣に溜まっているエネルギーの塊だ。

火・水・風・土・雷・光・闇の7種の魔法エネルギーを剣に溜める。相手が靄なら吹き飛ばすだけだ。集めたエネルギーに俺自身が轢き飛ばされそうだが、限界まで貯めた力を一気に放つ。


「終わりだ。終焉の咆哮(エンドバスター)!!」

「馬鹿な!?仲間ごと轢き飛ばすつもりか!?」

「あんたともろともな訳ないじゃない」

 リゼッタの分身体が消えるが雷の結界はそのまま残ったままだ。

「馬鹿なあああああ」


 神の野郎は断末魔もありきたりだ。あまりの威力で煙でたちこめ、あたりが見えない。

「リゼッタ!レイル!」

 大丈夫だと思うが、二人の無事を確認をする。分身体が消えたのは見えたが余波で二人が飛ばされてしまったかもしれない。それほど今回の攻撃は凄まじかった。今までの敵には2種くらいの魔法エネルギーの斬撃で対処できた。魔王ですら4種だ。それでも、ここで確実に決めたかったので、過剰とわかっていても最大火力でぶっ放した。霧が徐々にではあるが散っていく。


「うん大丈夫!こっちへきて!リゼッタも無事!」

 レイルの声に俺は安堵して向かう。魔力切れで足元がおぼつかないがなんとか進んでいく。

 やがてはれていく煙に二人のシルエットが見えた。見覚えのある姿に油断が生まれる。

「レイル。リゼッタ!!」

「なーんてな」


 シルエットから聴こえてくる声がひどく嫌悪感を感じる声に変わった。その時には俺の足は何かに止められ、腹から滴り落ちる血の音でその何かが身体を貫いていることに気がついた。

「どうも茶番に付き合ってくれてありがとう転生者さん」 

 煙が全部晴れる。俺がレイルとリゼッタだと思ったものの足は靄でお化けのようになっているし、二人の姿は似ているが、目が闇のように黒く深い。本当の二人は生きているかわからないが偽物の後ろに倒れていた。

「いーや本当最後のエンディングに相応しいね。転生者の北見裕太きたみゆうたくん」

「お、お前なんで」


 滴り落ちる血の量に合わせてどんどん力が抜けていく。本当はすぐにでも殴りたいが、にらめつけるのがやっとだ。回復魔法をかけたくても魔力が足りない。

「本当に惜しい。残念―。残念だよー」

 靄がもう一つ増え、アリスの姿を作る。三人の俺の仲間がユウターと俺の名を呼びながら涙を拭くように手で目を覆う。


 しかし、聞くに耐えない声と仕草に似つかわしくないほど口元が歪んでいる。

 あまりの怒りに声も出ない。しかし、絶対に後悔をさせてやる。

 俺の眷属達(おんなたち)の姿で醜い表情をさせていることに殺意が止まない。が、腹から生える靄はビクともしない程に硬質になっていて動かすことができない。こうしている間も目が霞んでいく。


「ここまで楽しませてくれたお礼にいいことを教えてあげるよ。実はね、俺も元々お前と同じ世界の人間なんだよねー。まぁお前みたいなロクでもない奴に夢を見せるためにそこそこ力を上げたり、運を調整してあげたり大変だったよー。私たち三人と楽しくイチャイチャしながらどんな敵でも倒せたのは気持ちよかったよねー?」


 くそ、俺の力はこんなもんじゃ・・・

「あ、君はシステムの一部だから俺の管理対象なんだよね。オートで動かしてあげてるけど能力なんかは全部僕が上げただけ。君はゲームのキャラに過ぎない。僕は作った人間。勝てる訳ないよね?君を少し勝たせてあげてたのはてめえみたいなのを調子に乗らせて伸びた鼻を伸ばしてへし折るのが最高に幸せなんだよ!」

 三人の顔でそんな醜い顔をするな・・・

「あれれー?そんな顔で見てもお前はただのゴミだった過去は消えないんだよ!」

 過去の話をするな。


「お前の前世も知ってるぞ?空気の様に扱われて、苛められるほども目につかない残念な人生。転生しても神になった勝ち組の俺に弄ばれる人生はねーどんな気持ち?」

 やめてくれ。もう。

「おいおい世界の勇者が泣いてるぞ!今はもうただの北見くんに戻っちゃったんだね」

男の下衆な笑い声と仲間の三人の残忍な笑い声が耳にへばりついて離れない。

「さて、楽しかった!さてこの世界は終わらせよっかな。君の魂は次の世界でも使わせてもらおうかな。また違う転生者を呼んで、お前には絶望に追い込む悪役にでもなってもらおうかな?魂が摩耗して消えるまで頑張ってねー。最後に君の愛する眷属にお願いしよっかな!」

 俺の前に倒れたはずのアリス、リゼッタ、レイルの体が糸で操られたように力なく立っている。靄が三人で持てるほどの大鎌に変わり三人の手に握られる。かすかに見えた表情は目に力がなく感情のない人形のようだった。


「ではではさようならー」

 俺の心は折れた。生前の弱くて絶望を抱える北見裕太に戻ってしまった。

「はーい。皆さんの敵ですよ」

 この場にふさわしくない声が耳に響いた。


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