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刻印の魂魄竜  作者: 夜凪_
一章
22/23

外の人間

 普段なら不気味なほど静かなこの廃村。だが、今日ばかりはそうでもなかった。

 片面が崩壊し、今にも崩れ落ちそうな歪んだ廃墟。その中には、本来ここにいる筈のない『人間』が居た。


 ユルは警戒を切らさず、睨むように問う。


「俺から一つ。何故こんな廃村に? 目的はなんだ?」

「あなたが聞いていた通りよ。遭難してしまったの。この廃村に来たのは、野営のため。」


 嘘をついている素振りはない。


「あんた達は、何者だ。」

「私たちは冒険者。大陸中を旅してるの。」

「ボウケン・・・シャ?」

「まあ、予想はしてたけど、やっぱりそうなのね。・・・その様子だと『ギルド』も知らないようだけど。」


 『冒険者』?『ギルド』? 本には載ってなかったが、ちゃんとした村や街にはそういうものがあるのだろうか?


「あと、もう一つ。そこの男をこっちに向かせないのは何でだ?」

「うーん。・・・それは、私の質問に答えたらでいいかしら。」


 答えたくない・・・という感じでもない。何か考えがある様子だったので、ユルは分かったと言って頷いた。

 攻守交替と言わんばかりに、次はルーブが質問を始める。


「とりあえず・・・そうね、名前から聞きましょうか。」

「俺の名前は『ユル』。こっちの聖獣は、影狼の『ロア』。」


 牙をむいて毛を逆立てているロアをよそに、ユルは正直に答える。


「・・・見たところこの村は、廃れてから百年・・・いや、二百年は軽く経っているはずなのだけれど・・・ユルちゃんは産まれた時からこの村に?」

「《《ちゃん》》って・・・。に、二年半ほど前に、この廃村に来た。」


 苦笑いしながらそう答える。ルーブは、少し眉をひそめて聞いてきた。


「そう、ならユルくん、・・・これは無理して答えなくてもいいのだけれど、最後に『人間』に会ったのはいつ?」

「人間にはあったことはな・・・・・いや、あの人を人間って言っていいのか分かんないけど、・・・二年前だ。」


 人との出会いは、今回を除いてはシヲンとしかない。・・・シヲンが人間のジャンルに含まれるのかは別として。


 ――ふと思い出したユルの手が、肩をそっと撫でた。


「・・・へぇ。」


 ちょっとした振る舞いだったが、ルーブはそれを見て「フフッ」っと興味深そうに視線を向けた。

 右肩と顔を行き来するその怪しい視線に、半歩下がって身構える。


「あぁ、いえ。そんな怯えなくても何もしないわよ。」


 苦笑しながらそう言うが、真に受けられるはずもない。

 ユルが身じろきしていると、今まで背を向けていたデルモが、沈黙を割くように疲れた声を掛けてきた。


「お、おいルーブ。俺はいつまでこうしてればいいんだ?」


 デルモの言葉にハッとするルーブ。


「そうね・・・できればずっとそうしていてほしいのだけれど・・・」


 少し考える素振りを見せたルーブは、ふとデルモに聞く。

 ――誰にも見えない角度で、彼女の口元が上がった。


「何か・・・そうね、厚くて長細い布はあるかしら?」

「タオルぐらいならあるが・・・。なんだいきなり。」


 ルーブの目が怪しく光る。


「こっち向きたいんでしょ? これをこうして・・・。」

「ちょ、何する!? せめて説明し」

「つべこべ言わない!」


 ――この世界でも女性は強い・・・と、ユルは察するのだった。



====================



 日没。ユルの目の前には、死ぬ気で肉にがっつく二人がいる。


「モグモグ・・・あの塩の量でモグモグ、こんなに美味しくモグモグ。」

「えぇ、ホントに驚きよ、ゴクリ。味付けもそうだけど、あの亀に食べられるところがあったなんて、パクッ。」


 スイカ割りのような目隠しをしながら、デルモも肉に齧り付いていた。


「へぇ、この亀は外じゃ食べないのか・・・」


 因みに今食べているのは、通称『亀』と呼ばれるアイアンタートルという魔物の肉。

 アイアンタートルはそのまま亀を大きくしたような外見に、名前の通り鉄のような硬さを誇る甲羅が特徴の、強力な魔物だ。

 図体の割に速度のある突進は、その硬さと相まって凄まじい破壊力になる。


 生息域が狭く、討伐されてもみんな硬い甲羅にしか目を向けないため、食用として出されることは少ないらしい。・・・てっきり普通に食べられているものだと思っていた。


「クゥゥ。」(主様、食べた。もっと!)

「はいよ。」


 おかわりを求めるロアの皿に、鉄の串が刺された大きな肉のブロックを置く。


「ワウ! むしゃむしゃ・・・」(やった! 大きい!)


 ロアは一目散にかぶり付く。

 柔らかい肉を幸せそうに(かじ)るその姿を見ていると、こちらまで気が和む。



「・・・そういえば、いいのか?」

「ん? はんのことは?」


 ユルの問いかけに、デルモは口をもごもごと動かしながら振り向いた。


「何のことって、・・・そんな不用心に食って、毒とか心配しないのか?」

「ああ、ゴクッ。そういうことか。」


 デルモは動かしていた手を止めるとルーブの方を向く。

 二人の向く先に居たルーブはこちらの視線に気付いていないのか、楽しそうにロアに餌付けをしている。


「ルーブとは付き合いが長くてな。・・・こういう事態には、基本アイツを信じるようにしてるんだ。」

「彼女ももしかしたら警戒してるのかもしれないぞ?」

「いいや、無いな。」


 ――そう呟いたデルモの方を向くと、彼はニヤッと無邪気な笑みを浮かべた。


「・・・十数年一緒に旅をしてるんだが、・・・全然笑わないんだぜ、アイツ。」


 確かに楽しそうにはしているが、・・・そうだったんだ。


 ・・・と、まるで打合せでもしたかのようなタイミングで、話題の彼女がこちらに歩み寄ってきた。


「ユルちゃん、何話してたの~?」

「なんでもないよ。・・・ってか、『ちゃん』はやめてほしいかな・・・。」


 苦笑いしながら一歩後退ると、三歩寄ってくる。


「な~んでよ~? いいじゃない、可愛いし~!」

「ル、ルーブさん? なんか様子がおかしくないで・・・」

「わたしは、ぜんぜーんふつうよ? ロアといいユルちゃんといい、付き合いわるいな~。」


 ハッとしてルーブの向こうを見ると、そこには目を回して泥酔したロアの姿があった。


(・・・この匂いもそうだし、まさか・・・)


 ――デルモは既に状況を掴んだようで、・・・視界が塞がっているのかと疑うほどの素早い動きで()()()()をスッとかわした。


「・・・まー・・・なんだ、俺たちの出会いを祝して・・・ってな?」

「さてはデルモ、気付い・・・」

「さ~! 飲みましょ! ほら!!」

「俺は未成年だから。いや、酒はちょっ・・・やめ、・・・うぶッ!!?」



 ・・・ユルの最後の記憶は、どことなくデジャヴを感じさせる光景でぷつりと切れた。



投稿頻度が上がる見込みがない・・・上げたい・・・。


・・・-改めまして、夜凪です。

最近いくら文を書き直しても納得いかない、不調気味な私です。

小説にもその自信のなさが表れてそうで不安ですが、・・・どうすれば払拭できるんですかね?

有名な小説家さん方はどんな思いで筆を執ってるのか気になりますね・・・。


日に日に増える書く消す作業。読んで下さる皆さんに伝わるといいなぁ・・・。

ではでは。

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