榎田歩実⑥
「あっ!」
床に落ちてしまったソフトクリームを見て俺は、モップを借りてくると言ってレジ前にいる店員のところへ走りながら、横目で二人を見ていた。
呆然と立ち尽くす俊介に、榎田さんは持っていたソフトクリームをテーブルに置くとスカートのポケットからハンカチを取り出していた。
「大丈夫だから」と遠慮している俊介にはお構いなしに、榎田さんは学生服の胸に付いたソフトクリームを拭いていて、他人事ながらその光景は羨ましく思えた。
「ごめんなさい!」
「いや僕が急に振り向いたのがイケないんだ、悪いのは僕だから気にしなくていいから」
言いながら俊介もズボンの後ろポケットから、くしゃくしゃに丸められたハンカチを取り出した。
モップを借りてきた俺は
「ごめんごめん!俺が急に気が変わって列を抜けたのがいけなかったんだ」
と言いながら床を拭く。
そして拭きながら
「ごめん!床拭くのに邪魔だから二人ともそこどいてくれる?それから服を拭くんだったら店を出て右に曲がったところのトイレの前にベンチがあるから、そこでして」
計画的な犯罪なのに、よくもずうずうしく言ったものだと我ながら思ったが、俊介と榎田さんの二人は素直に俺の言う事を聞いて店を出て行った。




