表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/24

寒い朝⑤

 それから暫く経って、本田から榎田さんの話を聞いた。


 話の内容は前に俺が頼んでいた、榎田さんの調査結果。


 本田は旨くいかなかったようで申し訳なさそうに


「女子に頼んで調べて貰ったけど、どうも榎田さんと俊介には何の接点もないみたいだし、そういった噂もないようだけど、もう少し調べてみる?」


 と言ってきたので、あの件は俺の勘違いだったからと謝っておくと、本田は「なぁ~んだ、やっぱり勘違いか」とホッとしたように言った。



 しかし、本当のところ榎田さんは俊介の事が好きだ。


 俺が秋月穂香に対して抱く気持ちと全く同じ気持ちを、榎田さんは俊介に抱いている。


 そう思うと何だか切なくて、そっとしておいてあげたかった。


 いや、そっとしておくべきことだと思う。



 恋。


 恋心が芽生えたとき、誰しも”これ程楽しくて明るい希望に満ち溢れた素晴らしいものはない”と、思うのではないだろうか?


 少なくとも、俺の場合はそうだった。


 だけど時が経つほどに、その希望は濃い霧の中に隠れて見えなくなる。


 行先も方角さえも分からないまま、不安だけがまるで雨の日に出来る水たまりのように広がって行く。


 不安な時期が長引けば、水たまりはやがて池になり湖から川、そして海になる。


 浅い海に居るときは、まだ太陽の光に揺られる波が綺麗に見えるが、深く沈んでしまうと。


 深い海に落ちたとき、太陽の光はどのように見えるのだろうか。


 


 もしも、俺がまだ秋月穂香に恋をしていなかったら、おそらく榎田さんの事も気が付いていなかっただろう。


 そして、もし気が付いたとしても、それはただの興味でしかなかっただろう。


 自分が苦い恋を経験しているからこそ、人の痛みも察することができる。


“相手に立場に立って物事を考え、気を使う”


 それは誰もが出来る事ではなく、色々な事を経験しているからこそできること。


 自分だけが、面白おかしく生きていける事なんて出来やしない。



 三月。


 冬が過ぎたとはいえ、今日は一段と寒い朝。


 だけど、もう直ぐ春が来る。


 榎田さんの恋も、僕の恋同様に何の進展もないまま一年生を終える。


 俺は今日も自転車をこいで学校へと向かう。


これで、この番外編は終わります。

読んで下さり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ