日の出⑤
「あー本当!あそこだけ周りの夜空の色より少し紺色!」
榎田さんが俊介の指差す方向を同じように指差して楽しそうに言う。
こういうところを客観的にみると、恋人同士のように見えなくもなくて、俊介と居るときはいつもより明るい榎田さんが意地らしく思えて切ない。
「早く登ろうぜ!」
本田が言って、駆け上がっていったので俺たちも一緒に階段を駆け上った。
「おぉ~い!慌てなくてもまだ時間はあるから。チョッと待ってくれ~」
後ろで三木の情けない声が追いかけてきた。
T神社境内に上がると、俺たち棋道部のほかにも沢山の人がいた。
先輩達に挨拶を済ませてから絶景ポイントを探す。
いいポイントを見つけたと思ったら、山の斜面から伸びてきている木が地平線を隠していて丁度日の出の位置が見えないと三木が言うので他所に移動する。
人も多くナカナカ良いポジションが見つからなくて焦る。
そうこうしている間にいよいよ東の空がハッキリとした紺色から下のほうは微かに紫色がかってきた。
「ここは、どう?」
後ろから声がして振り向くと、神社のお社の少し後ろの斜面に腰掛けている俊介が手を振って呼んでいた。
行って見ると意外に眺望が開けていてベストポジションだったので、そこで見る事にする。
暫くすると空の紺色は薄くなり、太陽が出てくる空の低いところの紫は橙色に変わってきた。