王国訪問編─⑦
ふぅ。
スッキリする。
やっぱ和服って快適かもしれない。
ん?
俺が何してるかって?
決まってるだろ?
お★と☆い★れ
さ!
やっぱ王様にあってちびったりしたら嫌じゃん?
舐められるのも嫌だし。
ってことでスッキリしてトイレから出ようとしたんだが...
ドスッ!
何かが倒れ込んだ鈍い音。
何だろう?
そう思っていたら...
「幸二!幸二!今すぐ出てこい!一大事だ!」
珍しく焦った"イフリート"の声。
って言ってもまだ出会って二日目なんですけれどもね。
ちょっと待ってほしいんだよ。
だって、今ケツ丸出しだからよぉ...
そんな状況にほんのちょっとイライラしながらも、俺はトイレから出てきたのだが...
そこに寝そべっていたのは、タンス。
どうやらタンスが何かの拍子に倒れてしまったようだ。
さっきの音はその音だろう。
と、思ったのだが...
倒れ込んだタンスの横のベットに寝そべる、美しい女性らしき人。
耳の長さからしてエルフか?
スラリとした細い体に、豊満な2つの丘陵。
そして何よりも綺麗な紺色の髪と、美しい真っ白な肌。
美しい以外にどう形容すればいいだろう?
俺は思わず、綺麗だ─と言いかけたが、そこは誤魔化す。
「きれ──じゃなくて、この人は一体...」
にしてもどこかで見たことがある気が...
「知りたいか。こいつはなぁ...」
おやおや。"イフリート"さんが困ってますね。
「まあいい、この際だ、言うしかあるまい。こいつはな、『アオイ』と言ってな...。」
アオイ...
もしかして、あの夢に出てきたあの...?
どこかで見たような気がしたのはそれだったか...
「へぇ。で、なぜその人がここに?」
「うむ。アオイは、この家の支配人でな。エルフと人間の混血─つまりは半妖精という、とても珍しい種なのだが、どうもおっちょこちょいで...
ちょうど今さっき、我等が帰ってきたという情報を聞いて飛び戻って来たらしいのだが、タンスに引っかかって下敷きになってしまったというわけよ...」
あ...ドンマイです!
俺もよくあったから、気持ちはわかる。
焦ってタンスの角に小指をぶつけた時のあの痛みはもう...
まぁ、規模が全然違うけども。
同じようなもんですって。
そう思ってたら...
「おい!おい!そろそろ起きろ!」
ありゃりゃ。レディをばしばし叩くとかありですかい?
レディには優しくするもんでしょう。
「ん...ふぁあ、よく寝たぁ!」
おはようございます。
「よく寝たぁ、では無いわ!全く、人騒がせな奴め...」
「ごめんなさいねぇ。私おっちょこちょいだからぁ...」
おっと、こういう口調なのか。
珍しいっちゃ珍しいな。
って、何に感心してんだか。
「それは分かっておる。それはそれとして、これから王城に向かうが付いてくるのか?」
えっ、マジで?
めっちゃ頼りなさそう...
「もっちろんよぉ!こう見えてもちゃんとやることはやるんですからねぇ!あなた立ちの護衛は任せてちょうだい!」
うーん、やっぱ心配だなぁ...
「うむ。その意気や良し。では、早速出発するとしよう。」
「ちょっ!ちょっと待ってちょうだい!
私お腹ペコペコなのよぉ...」
そりゃあね。朝飛び起きて来てタンスの下敷きになったんですもんねぇ。
「むぅ...仕方あるまい、ではここで一旦飯を作ってやるとしよう...」
え?"イフリート"がこのご飯作ってたの?
てっきりレンジでチンしてはい出来上がりのやつかと思ってたわ...
「おい幸二、なんだその目は。そんなに我の料理が意外か?」
「い、いえ、滅相もございません!」
こういう時はこの言葉が丁度いいんですよねぇ。
そしてそうこうしている間にもうご飯が出来上がっている。
俺と"イフリート"が食べたのはカレー(和物じゃねぇだろうが)と味噌汁だったが、アオイさんが食べるのは納豆丼のようだ。
うーん、美味しそう。
それが表情に出ていたのか、アオイさんに
「この納豆丼は私のですからねぇ!」
と言われてしまったけど...
まあ、これで準備は万端だ。
さあ、いざ王城に出陣じゃぁ!
いやぁ、一度は言ってみたかったんだよね、この言葉。
まあ脳内再生だけれども。
「グズグズしていないでさっさと向かうぞ!」
おっと、すいませんねぇ。
ここはちゃんとビシッとしなきゃ。
「心配しなくても大丈夫よぉ、そんな意地悪な人なんていませんからねぇ!」
アオイさんの言葉は信用出来る。
〔アオイさんの美貌のせいじゃなくて?〕
ば、馬鹿なことを言うんじゃないよ!
そんなわけないでしょう?
勘違いも程々にしてほしいね。
そんなことをのらりくらりと思っているうちにもう王城だ。
「でけぇ...」
思わず声がこぼれてしまった。
いやぁ、でかい以外にどう形容しろと?
無理でしょ、僕ちん語彙力ないもん。
「ここはまだ本殿じゃないのよぉ!
この先にもっともぉっと大きなお城があるのよぉ!」
まじすか。
これ以上でかいとかアタマダイジョウブデスカ?
さてさて、さっきから会話に入ってこない"イフリート"さんは何をしているかと言うと、門番の人と親しげに会話をしている。
やっぱり20年振りだからねぇ...
そんだけ会ってなきゃねぇ。
そうなるのも仕方ないですよ。
そう思ってたら...
「もぅ!早く入りましょうよぉ!」
と、少し膨れたアオイさん。
可愛い。
...じゃなくて、そうそう、早く入りましょうぜ。
「そうだぜ、早く入らなきゃさぁ。まだ王城の入口なんだろ?」
「おお、すまない。では、お願いしよう。」
「「かしこまりました!」」
門の前に響く、四人の門番の声。
声でかいなぁ。
羨ましい。
ギィィィィ...と開く門。
中まででかい。
これ、東京ドーム何個分だ?
無理だ、全然わからん。
当たり前か。
そうして俺たちは王城のなかについに入ったのだった。
キャラ情報
アオイ:"イフリート"の住んでいる家の支配人。何かほかの仕事もあるようだが...