王国訪問編─⑤
「うわぁ...きったね」
「今なんと言った?」
ぎくっ。
俺はすかさず気をそらす。
「気のせいだよ気のせい。それより俺の部屋はど
こだ?」
「うむ。やはり確かに汚い。支配人は一体どうしたのだ?
まあいい、とりあえずは掃除をしてから休むとするか。」
聞こえてたのかよ。
聞こえないふりしやがって。
俺の母ちゃんに似てるな。
俺もそうだったんだけど。
さて、話に戻ろう。
「掃除機はどこだ?」
「掃除機?そんなものがこの世界にあるとでも思うか?」
そう言われればたしかに。
「確かにそうだな...」
「ほれ。旧式のものだが、性能としては申し分なかろう。」
「あるんだ...」
そういう展開なら普通ないでしょ。
「ふっ。我は聡明でな、万が一のこともあるだろうと、家の家具を常に携帯魔法に保存してあったのだよ!」
なんじゃい、それ。
わけわかめ。
「にしても、こうやって会話出来る相手がいて嬉しいよ。」
「む?前の世界ではボッチだったのか?」
「ああ。俺は無口だった。
あの事件が起こってからは...」
「あの事件?」
「コレは昔の話なんだ。当時俺は小学六年生だった。俺にはたった一人の親友が居てな。
そいつは女だったんだが、そんな隔たりは関係なく仲良しだった。
─まあ、そういう気持ちもなくはなかった。
見た目結構可愛かったし。」
「そうか...お前にも青春というものが─」
「んで、だ。そんなやつだったが、ある日この世を去った。
原因は事故死。
車が信号無視して、突然突っ込んできたんだ。
本当は彼女は無事のはずだったんだ。
でも、その瞬間突然車が曲がって彼女に正面衝突、彼女は即死だった。」
「そうか...」
"イフリート"はそれを言うとしばらく黙っていた。
おそらく俺に気でも使ってくれたのだろう。
「そんなことがあってからは、俺はますます無口になった。誰とも関わらず、目立たず、地味に生きてきた。それでも生きなくちゃならないから、仕方なくそこそこできる絵を描いて食いつないでた。」
「そんな過去があったとはつゆ知らず...
しかし、そういう過去を乗り越えたからこその「タマゴ」なのだろう。」
"イフリート"は勝手にひとりで呟いて納得していたが、何を言っているかわからなかったので聞き流すことにする。
「ま、お前が現れてくれたおかげで、俺はいまこうして喋れているわけよ。それに、そんなことがあったから、俺はあまり驚かなくなったしな。」
「─だから我を見た時も微動だにしなかったのか。
納得だ。」
それなら俺たちは黙々と掃除をして、やつとのことで掃除が終わって俺は"イフリート"と休憩をしていた。
「にしても元々は随分綺麗なんだなぁ。掃除前とは大違いだ。」
「あぁ。我はそれなりの地位にいたものでな。
家もそれなりに豪華になっているのだよ。
これからはおそらく幸二もここで暮らすことになるだろう。」
まじかよ。人間外生命体との共同生活的な?
外からみたらボーボーに燃えている人間と普通の男が同居生活してるようにしか見えないな。
「ふーん。
とりあえず今日はもう遅いし、寝るか!」
「そうだな。我も今までの疲れを癒すとしよう。」
「んじゃ、おやすみ。」
俺はフカフカのベッドにダイビングして、電気を消した。
【日本】と繋がりがあるだけあって、電気もついているようだ。
〔実は、主が細かい設定をめんどくさがっただけなんですけどね。〕
なにか声が聞こえた気がしたが、俺はもう眠気に耐えられず、寝てしまった。