王国訪問編─④
にしてもでっかい壁だ。
ベルリンの壁の比じゃない。
真下に来るとより分かる。
もんの目の前に来た俺たち。
門番らしき人に話しかけられる。
と言うよりは、驚かれてる感じかな。
だって、
「あ、あなたはもしや...
"イフリート"様ではございませんか...?」
「ん、そうだ。我は"イフリート"だ。長旅になってしまったものの、ついに帰ってくることが出来たのだよ!」
「そうでしたか!
ということはお連れのそこの人間はもしや!?」
「うむ。その通りだ。」
「おおお!!
誠におめでたく─」
「待て待て、長くなるのであろう?」
「こ、これは失礼しました。
既にパスは通してありますので、どうぞお入りください!」
「助かる。これで主の笑顔もまた見られるようになるというものよ。」
「あ...そ...それは...」
「ん?
なにかやましいことでもあるというのか?」
「い、いえ!滅相もございません!」
「そうか。では入るとしよう。」
俺はすぐに悟った。
この門番、なにか隠してやがる。
それも、かなり重大でこの"イフリート"の主と関係することを...
だが、ここは平和に行きたい。
黙っておくとしよう。
俺は別にこいつ怪しいなーと思っても、すぐに殺して後で魂を呼び出して尋問したりはしない。
ってかそこまでできるほど力も持ってないし。
こいつにやってもらえばいいのかもしれないが、そんなことは出来ればしたくない。
この国とはこれからいい関係で関わっていかないといけないだろうし、こいつはこの国の王様の下僕なんだし。
─と、そんな感じで俺たちはあっさりと王城を目指して王国の中に入ったのだった。
─彼女は、"転生者"である。
異世界で死んだ後、この世界で「前世の記憶」を持ったまま生まれてきた。
そして、彼女はいま18になる。
人間の年齢は10年で一歳と数えられる。
それも前世の日数と比べればほぼ同じことなのだ。
だが、彼女は人間として生まれたものの、あくまでも生まれた世界は"こちら側"なのだ。
当然世界の影響を受け、年齢をとる早さが早くなっている。
彼女には、親友とも呼ぶべき男がいた。
だが、それももういない。
彼女は心のどこかで彼に会えると信じ、そしてまた彼に好意を抱いているのだが...
彼女がそれを知るよしはない。
故に、彼女は研究に熱心である。
それは、彼女の死因だ。
彼女は事故によって死んでいる。
しかし、その死に方がとても不自然なのだ。
彼女は毎日、一国の王女でありつつも研究を続けている。
──彼女が解明できるものではないとも知らずに──
門を潜ってから思い出したが、そう言えばみんな何故か日本語を喋っているという不自然な状況について聞くことを忘れていた。
何故だろう。
ここはいっちょ頼れるであろう"イフリート"さんに聞きましょう!
「なぁ、"イフリート"?
なんでみんな日本語を喋っているんだ?」
「言ってなかったか?
まあいい、説明しよう。
この世界は織田信長が最初に治めたと言っただろう?」
俺は軽く頷く。
「その後、この世界には日本と同じような建築物が増えた。
そう、日本家屋、というやつだ。
そして、この世界には不思議なこともあってな。
千年に一度、【日本】と、この国をつなぐゲートが開かれるのだ。」
「ゲート?俺はそんなの通ってないけど?」
〔そりゃそうですよ。だって主が今でっち上げたんだもの。〕
ふぁっ。
いまどこかから声が聞こえたような。
誰だ?
〔おっと。突然でしたね。
私めは《天の声》でごさいます。主の言葉を代弁するのが主な仕事ですが、たまには愚痴も聞いてほしいですねぇ。〕
はぁ?
なんだよ突然。
しかも変なことブツブツ言ってるし。
主?
天の声?
聞きたいことはいっぱいあるが、どうやら周りの方々には聞こえていないらしい。
〔ええ。
そりゃ当たり前でしょう。
言い忘れていましたが、私の声は貴方様─選ばれし者─にのみ聞こえるように主が設定しています。
全く面倒なもんですね...〕
あ、そうなの。
でもこいつには聞こえてるみたいだよ?
「幸二...?
この脳内に直接聞こえてくる気持ちの悪い声は一体...」
〔なっ...そんなはずは...!?
か、確認してまいります!
あ、主様ァ!〕
なんか忙しいやつだな。
ま、これからの生活に影響は出ないだろ。
気にするまでもないさ。
「安心しろよ"イフリート"。
《天の声》だそうだ。
多分助言とかくれるんだろう。」
「そうであるか。
ならばいいとしよう。」
「そうだぜ。まったく、今のやり取りで俺は疲れちまった。
近くに休めるところはあるのか?」
「あぁ、それなら我の家に来るが良い。
恐らく支配人が綺麗にしていてくれているはずだ。」
そんなわけで、俺は"イフリート"の家におじゃますることにする。
仕方ありませんわね...
分かりました。
私が書きましょう!