帝国騎士編─1 宴会と入浴
ふらふらと、瑞奈か近づいてくる。
こいつ、大丈夫か?
ま、大丈夫じゃないに決まってるけど。
なんせ、こいつは酔っている。
「自分はもう成人ですから!」
と、豪語して酒をぐびぐびと呑んだ成れの果てがこれだ。
まったく、大人としてどうなんだ?
それに、浴衣もすこしはだけている。
直したらどうなんだよ、全く。
それなりの大きさの果実が顔を覗かせている。
揉みたい。
あー。
っと、だめだだめだ。
意識を保てや、俺。
俺まだ酒飲めないのに...
ま、飲もうと思えば飲めるんだけど、前世の年齢的にまだ早いかなと思ってね?
そうこうしていると、ベロベロに酔った瑞奈が、俺の前にどってりと座ってくる。
「おらぁ!酒飲まんかィィ!!」
お、おお!?
瑞奈さん、ちょっと落ち着いてくれ!
しかし、俺はお酒が飲みたい。
年齢など関係あるか!
よっしゃ、飲むぞ!!
俺は瑞奈に杯を差し出す。
瑞奈は胡座をかいたまま俺の杯にトプトプと酒を注いでいく。
おお、これだよ、これ。
俺はワクワクが止まらない。
酒を注ぎ終わった瑞奈は、俺をじっと見ている。
「呑まにぁいの?」
待てって。
まずは香りからって言うじゃないか。
俺は快い匂いを嗅いで、気持ちよくなる。
そして、そのまま杯を口に運ぶ。
グビッ、グビッ。
ぷはーっ!
旨い。
俺は日本酒が好きだが、この味もなかなかだ。
程よい酸味と、ほんのりとした甘味が、味を引き立てている。
長らく味わっていなかった至福に久々に浸っていると、瑞奈がトイレに行きたいと行ってきた。
「1人で行けばいいじゃねえか。俺はもう少し呑みたいんだよ...!」
「やぁだ!クレァーにー連れてってーもらうー」
クレァーて。
呂律が回ってない。
そろそろ危ないな。
ま、トイレに行きたいんだったら、行かせてやるか。
「...よいしょっ!」
俺は自分の細い体で瑞奈を背負う。
...重い。
太ったのか?
「ふぁ!トイレにれつごー!しゅしゅぽっぽ!」
電車じゃねえよ、俺は。
全く。
──ッ!?
「わー!おっきいおっきい!」
やめろ!
俺の乳を揉むんじゃねえ!
初めは自分で揉むくらいけど、やはりしばらく経つとある程度の女としての嫌悪は感じてくるようで、揉まれるのはだんだん嫌になってきた。
俺は瑞奈を揺さぶって、胸から手を振り落とす。
「胸を揉むのはやめろ!」
俺はちょっと興奮して怒る。
酒がそろそろ回ってきたか?
いや、そんなに飲んでないから有り得ないはずだ。
ってか、なんでこうなった?
元凶に遡ること、3時間程前───
俺達は、帝国の訓練場に来ていた。
なんかもっと難しい手続きとかが必要だと思ってたんだけど、
「店主から話は聞いている」
と、すんなりと通ることが出来たのだ。
店主さん、すげー。
マジで感謝だわ。
ってことで、俺達は魔物部隊の部隊長に会うことになった。
「私が魔物部隊長のヒロカだ。以後、よろしく頼む。」
「おう。俺はクレアだ。んで、こいつが瑞奈、この燃えてるのがガエンだ。」
俺はササッと自己紹介を済ませる。
こういうのは簡潔な方がいいのだ。
瑞奈には俺の今の名前を教えてあるので、もう「幸二」という名前は封印だろうな。
少し悲しいけど、転生してしまったものは仕方ない。
「うむ。では、訓練場を紹介する。それが終わったら、午後6時にお前らの歓迎会をする。それまでに風呂に入って疲れを癒しておけ。」
「了解しました」
さすが隊長、威厳がバリバリに出ている。
強さ的にもガエンと同じくらいじゃないか?
そう思って、〔情報把握〕を起動する、が...
「人に鑑定されるのはあまり気持ちの悪いものでは無い。懲りたら、もう人にするのはやめておけ」
と、ヒロカ隊長に言われてしまった。
確かに、そうかもしれない。
ってか、気付くもんなのか。
以後、気をつけようと心に誓ったのだった。
そして、俺たちは案内されて訓練場を1周した。
結構広かったな。
感じとしては、各種武器の種類によって場所が別れている感じだった。
俺は基本剣を使うので、おそらく剣技場で練習することになるのだろう。
さて。
楽しみな時間だ。
何かって?
決まっている。
おふろ、だ!
今の俺は女である。
ならば、入るのはもちろん女湯である。
やったね、クレアちゃん!
嬉しいよ。
というわけで、ガエンと別れる。
ガエンは紳士な男だから、ちゃんとそういうのは弁えている。
性欲も全く無いようだし。
いいよな、性欲がなくてよ。
俺は性欲たっぷりで困るぜ。
おっと、気を取り直してお風呂タイムだ。
脱衣所に来たのだが、結構先客が多いな。
これから入る人、入ってきた人共に多い。
俺と瑞奈はロッカーを選んで着物を入れる。
俺は〔装束変化〕があるけど、それでも前に着ていた服に戻るだけなので、普通に脱ぐ。
俺の胸が揺れる。
一瞬瑞奈が嫉妬の目を向けてきた気がするが、気のせいだろう。
俺は気にせず、風呂に入ることにする。
あぁ、気持ちいい!
遅れて瑞奈も入ってきて、一緒に風呂に入る。
前世が男なだけあって、風呂の浸かり方は男な感じだが、あまりみんなは気にならないご様子。
新入りということで周りの女性達がどんどん詰め寄ってくる。
おお、これだよ、これ。
これを待っていたんだよ。
飛んでくる質問になんとなく答えつつ、俺は神秘的な景色を眺める。
おっぱい、いっぱい、夢いっぱい。
素晴らしい。
皆さん自己主張が強いようで、大きな桃と2つの林檎がせめぎ合っている。
俺はこのために生まれてきたのかもしれない。
そう思える風景だった。
おや?
誰か入ってきたようだ。
お!
ヒロカ隊長だ。
素晴らしい体つきをしている。
その引き締まった細い肉体と、小ぶりながらも白く美しいロマン。
──そんな感じで、俺は至福のひとときを過ごしたのだ。