王国訪問編─⑩
「─と、こんな感じでお願いします、"イフリート"さん。宜しいですか?」
そうガエンに喋りかけているのは、ダガーラ王子だ。
それにガエンが返答する。
「あぁ。我としても異論はない。了解した。そのようにしようではないか。」
双方の思惑が合致した瞬間だった。
─そして、この判断は間違っていなかった、とガエンは後で思うことになる。
▶◀
おや。
どうやらガエンくんが帰ってきたようだ。
王子と話をしてきたらしい。
どうやらかなり重要な話だったそうで、俺には言えない内容なんだとか。
アオイさんにはガンガン言ってるけど。
アオイさんは良いのかよ。
ふーん。
お。
王子も帰ってきた。
「お待たせしました!
これから話があるのですが...、皆様宜しいですか...?」
「勿論!」
快諾。
嫌じゃないし、むしろウェルカム。
さてさて、その内容というのは...
「─と、言うわけでどうか、この国の外へ出て頂くことは出来ませんでしょうか...。」
はぁ?
俺はなんとも思わないし、どうせ"転移者"を倒さなきゃいけないんだから異論はないけどさ。
この人達がなんというか...。
「あぁ。そういうことなら仕方なかろう。分かった。」
えっ?
ガエンさんが快諾...だと!?
で、でもアオイさんは...ね?
「そうねぇ。私としても異論はないわねぇ。
そういうことなら出ていきましょう。」
あ、これは俺がOKしないといけない感じか。
こう見えても俺は空気が読めるのだよ。
「2人が異論なしなら俺はOKだ。大人しく外に出よう。」
うん。ホントはもうちょっと居たかったけどね...。
「では早速ですがお引取りを...。」
〔安心してください。ダガーラ王子は追い出したい、という思惑で貴方方を国外追放にする訳ではありません。建前ですよ、建前。〕
ふむふむ。
正直こういう時の助言はいらない気がするが、声にはしない。
「手荒な真似ですが...建前で、連行ということにさせてください。
警護兵、彼等を乱暴にせずに門へ連行していきなさい!」
「「承知致しました!!!」」
お、おう。助言通りだ。
そりゃそうか。
そして、俺らが拘束されて扉を出ようとしたまさにその時だった───
▶◀
彼女はゼェゼェと息を切らしながら、やっとこさの思いでドアの前に着いた。
気持ちを抑えきれない彼女は、思い切りドアをぶち開ける。
ガチャン!
「お兄様!!」
思わず叫んでいた。
「なっ、ハナ...!?」
王子はびっくりしてしまったようだ。
しかしそこは王子、すぐに正気になり、
自室に戻りなさい!と言っている。
「瑞奈...?」
彼女は聞こえた方向に顔を向ける。
そこには、警備兵に腕を拘束され連行されている幸二の姿があった。
「幸二!!
幸二なんでしょう!?
あ、貴方達何をして...!?」
彼女は状況を理解できない。やっとの再会だと言うのに、その相手は拘束されて連行されている。
「ちょっと待ちなさ──」
彼女がそれを言い終わる前に、警備兵は幸二らを連れて部屋を出て行ってしまった。
そこに残ったのは、王子とその執事であるチェルノだけだ。
彼女の怒りは兄に対してあった。
彼等を連行したのは彼以外に居ないからだ。
「お兄様!?
何をなされたのかお分かりになられているのですか!?
本当に信じられない!!!
お兄様の馬鹿──!!!!!」
彼女は叫んでしまっていた。
本人にはそんな気はなかったのだが...。
彼女はその気持ちを抑えるためにさっさと部屋を出て自室に戻ってしまった。
「もう...。
なんで...?
信じらんない...。」
彼女はその可憐な顔をプクりと膨らませつつ、眠りについたのだった。
そして2人残された王子はと言うと─、
「あちゃー。ハナに嫌われちまった...。」
と、ちょっと後悔したのだった。
そして、
「後で説明する必要があるな...」
と、ぼやいた。




