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成り損ないの主人公  作者: 青木優治
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主人公への憧れ、執着

青木優治です。だいぶん投稿が遅れました。かなり短いですがよろしくお願いします。これからもゆっくり書き進めます。

 高校生活2年目の夏頃。

照り付ける太陽と、

うるさく鳴き続ける蝉の声が、

ジワジワと気温と体温を上昇させていく。

1年生での態度のせいにより、

今日までを人が近寄って来ることも無く、

一人で過ごしてきている。

もちろん毎日、これからも、ずっとこのままの状態だと思っている。


 もしも俺の席が窓際だとするなら

頬杖をついてぼんやりと外を眺めているだけで主人公気分に浸れただろうが、

あいにく俺は運があまりよろしくない。

というよりも極端に悪い。


 この間行なわれた席替えのくじ引き。各々がくじを開くと

あの子の隣だった

だとか

コイツの隣かよ

などと友人と結果を見せ合い、一喜一憂している。

そして、友人の居ない俺はただひとりでくじを引き、

ただ一人でそのくじを開く。

こんなの馬鹿馬鹿しい、

くだらない。

などと思うかもしれないが、

実のところ憧れている席があったため、少しは期待をしていた。


 しかし結果は、

惨敗だ。

何に負けたかなんて事ではないが、

その結果は目も当てられぬような物だった。

憧れていた窓際の一番後ろ。

つまり『主人公席』と呼ばれる

孤独に外の景色を眺められる席とは真逆といった、中央の席。

言うのは自分として辛いものだが、

何度も言わせて貰う。

友人の居ない俺にとってこれほど辛い席は無い。


 昼休みになるとクラスメイトたちが次々と席を立ち、

1人の生徒の元へ集まる。

俺が少し席をはずしている間に、

俺の机を陣取って弁当を広げる。

あっという間に俺は居場所を無くし、孤独な一匹狼。

つまりは一人である。

格好良く言ったつもりでも

いまいち格好良くならないのは俺のセンスの問題だろうか。

何人かはこちらに気付くが、

すぐに目を逸らし、

友人と思われる生徒との談笑を始める。

席が無くとも便所飯なんて格好悪い。

そんな考えの俺は格好をつけて、中庭で一人たそがれるようにパンを租借する。


 そして今日もこんな状態で、

『いつも一人で中庭に居る痛い奴』

といった悪い意味で同級生からの視線を独り占めだ。

学業は1年の頃、

まともに授業を受けてはいなかったとはいえ

自宅でのあの努力のおかげで、

あれほどしていた勉強量を人並み程度に戻しても、

中の上ぐらいの成績をキープできていた。

だが、上位からどんどん右肩下がりに落ちていく自分の成績を見て

こんな主人公は存在しているのか?

と何度も歯痒い思いをした。

しかし、こんなところで主人公気分を求めるのも別にどうでもいいことと思えてきた。

そしてこの頃ぐらいから、すでに自分の主人公に対する執着心は薄れていた。


 いつも通りの昼休み。

その日はとある気まぐれでいつもは来ないような、

中庭といってもほとんど人目の付かないような暗い場所に来ていた。

いつもならば、

ポツン、

と、一つ自販機が置いてあるだけなのだが、

今日は違うようだった。

かすかに数人の声が聞こえてくる。

近づくにつれその声ははっきりと聞こえるようになってきた。

「ホラ、持ってんだろ?」

「何の…事ですか…?」

「分かんねーのか?金だよ。金。今ちょっと俺ら、金が無くってねぇ?」

「人助けのつもりでさぁ、財布、出してくれない?」


 オラついた声の3人ほどの男子生徒に、

気弱そうな男子生徒が絡まれている。

今時こんなカツアゲだなんて。

しかしまぁ、うちの学校にこんな奴らがいたとは。

金や茶にそまった髪。

耳には無数のピアス。

イメージから、煙草も吸っていそうに見える。

触らぬ神に祟り無し。

こういう事には関わらない方が良い。

足早に逃げ去ろうとする俺だったが、奴らが言った

『人助け』

という言葉が妙に耳に障った。

奴らみたいなクズの、クソみたいな行為が

『人助け』?

何を言っている。

こんな言葉が気になるだなんて

主人公への執着心は捨てたと思っていたが、自分自身はまだ主人公になりたいようだ。

「黙って言うこと聞いてろ!」

そう言い奴らの内一人が拳を振り上げる。

か弱く、でも確かに

〈助けて〉

という声が聞こえた時。

俺は走る。

奴らと、一人の男子生徒の元へ。

そして、こう、力強く言った。

「やめろ!!」

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