プロローグという名の自分語り
はじめまして。初めての投稿ですので、至らない点も多々あると思いますが、是非読んでみてください。
柊春樹17歳。高校2年生。俺は、物心付いたときから漫画に夢中になっていた。
小学生くらいの幼かったあの頃は掃除に洗濯にと、
せっせと親の手伝いをして小遣いを貯めていた。
そして一冊分の金額が貯まると、すぐに近所の書店に走って行った。
少し遠くへと足を伸ばせば古本屋があった。
古本屋なら、もっとたくさんの漫画が買える。
しかし、俺には幼いながらも『好きな作品は定価で買う』といった変なプライドがあった。
そのプライドのせいで、漫画をすべて定価で買っていたため、
漫画に夢中になるといいながらも、当時俺が持っていた漫画の冊数はわずかなものだった。
今持っている数と比べればまさしく雀の涙と言ったものだろう。
今俺が持つ漫画を少しでも分けてやりたいくらいだ。
そして小学校3年生くらいの時からだった。
ただ単に『好き』として見ていた漫画のキャラクターに憧れ始め、
『こうなりたい』と思い始めたのは。
とある探偵物の漫画に熱を注いでいた当時の俺は親に頼み込み、
空手、合気道、柔道、剣道…といった武道を習わせてもらった。
運良く俺の家庭では
「男ならこうあるべきだ。漫画ばかり読んでいては不健康だ」
などと言い、たくさんの習い事を一度に。
しかもジャンル的に見れば同じものを習うことを許可してくれた。
大好きな漫画のことを侮辱されたと子供心なりに怒りを覚えたが、ここで堪えなくては折角許可してくれた習い事の件を無かったことにされると思った。
拳を握り
唇を噛締め
沸々と沸き挙げてくる激しい怒りにぐっと堪えていた。
その後話も一段落つき、冷静に考えてみると
たくさんの習い事を一度に習わせる金があるならもう少し手伝いの報酬を上げてくれても良かったのではないか?
などと疑問に思ったりもした。
中学校へ進級するにあたって小遣い制度なる物が出来た。
進級したといってもまだ中学生。
月々1000円という、多いとも少ないともいえないような微妙な金額であり、
一般的な漫画なら2冊、大判サイズの物だと1冊程度しか買えなかった。
感性豊かになる中学生時代。
昔とは好みが変わり、感じ方、捉え方も変わった。
そしてもちろん、その分たくさんの漫画を欲した。
そんな訳で月々1000円の小遣いではまったくもって足りず、
小学校時代と同じように家の手伝いで資金を集めていた。
年齢が上がり出来ることも増えたため、
その分お駄賃が少しだけ増えたということに小さな喜びを感じていた。
部活は少年誌で連載していた漫画の主人公に憧れてバスケットボール部に入った。
やはり練習は厳しいものだったが、その厳しさに対して
『今、自分は主人公なんだ』
という優越感を感じられ、3年にはエースにまで上り詰めた。
この辺りになるともう忙しく、
習い事を続ける余裕が無かったために、
小学生の頃から習っていた武道はもうほとんど辞めてしまった。
むしろここまで続けられていた自分に拍手を送りたいくらいだ。
漫画のキャラクターを目指して全力で取り組んでいたことと、
もともと運動神経が良かったのもあり、
小学生の頃に習い始めた武道は極めつつもあったため
辞める事に対しては特に何も思わなかったが、
親が少しうるさかったのと、
自分もうこの舞台の主人公ではないんだということが少しの寂しさを感じさせた。
そして俺は、バスケットボール部員に惜しまれながらもバスケットボール部を引退した。
「たまには顔を見せに来てください!」
「今までありがとうございました!」
など、後輩たちが涙を流しながら俺に別れの挨拶を言ってくる。
そんな状況に俺は感動した。というよりも、興奮した。
今、この時、この瞬間、この1分1秒の間。俺は後輩達にとっての英雄になれている。
ヒーローになれている。そして今の俺は誰がなんと言おうとも主人公。
この話の、この国の、この世界の。
主人公になれている。
そう思えた。
そして感じた。
俺は主人公になりたいんだと。
適当に真っ当な事を書いて提出していた進路表。
今日、進路が決定した。
そして、少し遅めの中二病とかいう奴がやってきた。
中学卒業後、近場の高校に通った。
その時もまだ、中二病という奴は残っていて不良の癖に頭が良いキャラを演じていた。
遅刻、
居眠り、
サボりを繰り替えし、髪を茶色に染めるだけで
あっという間に『不良』というレッテルを貼られた。
親は何度も俺に説教をした。
しかし俺は今の状況に喜びを感じ、頭の中ではもうお祭り状態だ。
説教なんて耳に入ってはいない。
なぜならもうすぐ、テストだからだ。
このテストで結果を残し、俺は完成する。
『不良なのに頭が良い』
このキャラを演じるのに授業をサボっていたせいで学習はなかなか進まなかった。
しかし主人公に対する執着心と努力で学力を補っていた。
学力テストの当日に教室に入った。
ざわつく教室をものともせず着席した。
そして始まる学力テスト。
1問、2問…授業無しでも努力次第でまぁまぁ解けるということを学んだ日だった。
数日経ち、そろそろかなと学校に顔を出すと、掲示板の前で人がざわついていた。
どうやら学力テストの結果が出ているようだ。
なるべく自然に掲示板に張り出されている順位を確認した。
『…3番 柊春樹』
「3番…か。」
小さく呟いた。
してやったという気持ちの中、1番ではない。
これでは、主人公ではない。
これでは駄目だ。
という感情が大きくなっていく。
掲示板前でざわついていた生徒たちがいっせいにこちらを向いた。
だが、そんなの知らない。
興味ない。
自分では満足のいかない結果だったが、
親は静かになってくれたから嬉しいものだった。
それからさらに自室での努力を続け、
順位を上げた。
今思うならまじめに授業を受けていたほうが早かったなとつくづく思う。
中3から発祥していた中二病も、
高校2年になると落ち着き、
少し筒真面目に学校に通うようになった。
しかし、1年での態度のせいで、教師からのイメージは最悪。
友達と呼べる存在は、1人もいなかった。
でもまぁ仕方が無い。
そうやって反省の色を少し見せていたがやはりまだ自分は主人公になりたかった。
そのためならもう止まらなかった。
止まれなかった。
この辺りで長ったらしい自分語りも終わりだ。
高校2年の夏。
今俺は、最高にワクワクしている。
周りに広がる混沌とした闇世界の中央に俺と、もう一人。
空には大きなドラゴンを連れた美少女。
これは、俺が小学生の頃から憧れていたシチュエーションにそっくりだった。
無意識に舌なめずりをし、唾を飲み込む。
そして、その美少女が、ゆっくりと口を開き
「貴方は、私達の世界の、主人公です。私と共に、来て、くださりませんか?」
来た。
来た来た来た来た来た!!!!
待っていた。
待ち望んでいた。
この台詞、この場所、そして俺!!
俺はゆっくりと、大きく口を開いた。
のんびりと書き進めていくので、次の更新は遅めになると思います。