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「あの……」
牧師さんは何も言わないでティーポットから湯気の出る飲み物をカップに注いであたしにくれる。
とりあえずそれを貰って口に入れると、温かいお茶の味がして持っているカップからは落ち着く香りがした。
「おいしい……」
「ハーブティーですよお姫様。一度お家にお帰りなさい。そこでまずはゆっくり睡眠をとって、よく眠れたらお話を聞かせてください」
「はい」
牧師さんは優しくそう言ってくれた。朝早くに来てることが眠れてないからって思われたのかもしれない。
「ごちそうさまでした」
「ええ、またお会いしましょうね」
「はい!」
牧師さんにカップを返してから一度家に帰ってママが作ってくれた朝ごはんを食べた。
ママがしっかり眠れてるのかって心配してくれていたけど、眠れてることは眠れてるから大丈夫と答えてから部屋に戻ってベッドに寝ころぶ。
ハーブティーの温かくて優しい味がまだ口の中にある気がすると、なんだか落ち着いてきていつのまにか目を閉じて寝てしまっていた。
夢は見ないままママの声がして起きた。
「寝ていたの? フェルリク君が来ているわ」
「う……ん?」
フェルリくんが来ているらしいけど、窓の外は夕方でもうじき夜になりそうだった。
「今頃お誘いに来たのには何か訳があるのかもしれないわ。フェルリク君がお家まで送ってくれるらしいから行って来たらどうかしら?」
「うん、じゃあ行ってくるね」
目を擦りながら部屋を出て外に出ると、フェルリくんが待ってくれていた。
「遅くに悪い。時間があればオレ様と出かけないか? 教会裏の花畑まででいいんだが」
「うん、大丈夫だよ。今日はレミちゃんがいないんだね」
「本を読むんだそうだ。読んだところで理解できないくせにな」
「あ、はは……」
やっぱり仲悪いのかな。あたしといる時はそんなことないと思っていたんだけど。
「今日は昨日の続きを話せばいいのかな?」
「ああ、昨日話していたことはレミチャから聞いている」
教会に向かいながら確認して、教会に着いて思い出す。
牧師さんともお話しようって言ってたんだ。
「ねえ牧師さんは何をしてるの?」
「部屋で寝ているだろう。体の調子が良くないのでな。朝に水やりをする時と薬を貰いに行くとき以外はほとんどベッドに横になっている」
「そうなんだ」
じゃあ今日は話せないな。
残念がっている間にもフェルリくんは歩いて教会裏の花畑に向かっていたから、あわてて後を追いかけた。