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夢なのかな。
泣いているあたしをレミちゃんとフェルリくんが慰めてくれてる。
レミちゃんはご飯を作ってくれるらしくて、あたしも手伝おうとしたけど、テーブルを拭いてお皿を並べてくれればいいって言われて、その通りにして三人でご飯を食べた。
ママと同じ薄い味がした気がするけど何を食べたのかわからない。
でも気にする前に場面が変わってレミちゃんと夕方の湖にいた。
二人で瓶に花びらを入れて、そこに水を注いで置物を作成していた。
☆
完成する前に夜の場面になって、教会裏の花畑でフェルリくんといて、フェルリくんは花を摘んであたしの髪に付けてくれた。
☆
二人はこの頃からあたしにたくさんのことを教えてくれるね。
温かい気持ちになれるはずなのに、なれない。
あれ、どうして?
☆
★
場面が変わる。
夕方の湖も、夜の教会裏の花畑でもない。
ただ誰かが二人立っている。顔は見えない。
「二人は……だれ?」
二人が振り向いて顔が見えそうな時にあたしは目を覚ました。
「ん……」
レミちゃんとフェルリくんはずっと一緒にいる友達。
じゃああの二人は? あたしはどこであの二人に会ったんだろう。
あれ、あの二人があたしと……。
「……出かけよう」
考えていたら頭がぐるぐるしてくる。外に出て違うことを考えよう。
あたしは服を着替えて外に出る。朝ごはんを食べる気は起きなかった。
向かったのは教会。
外はまだ少し暗くて昨日よりも早く出てきたみたい。
花畑には牧師さんもいなくて一人で座って色とりどりの花を眺める。
いつもなら落ち着けるのに頭の中にはレミちゃんとフェルリくんと遊ぶ思い出と……二人の男の子の後ろ姿が思い浮かぶ。
茶色い髪と黒髪の男の子。
レミちゃんの髪は綺麗な赤毛だから間違えることはないし、フェルリくんは青い髪だから黒と間違えるかもしれないけど……。
「はあ……」
「おや、その声は……」
「あ、おはようございます牧師さん」
ため息をつくと牧師さんの声が後ろから聞こえてきた。
じょうろを持っているから水をあげに来たのかな。
「おはようございます。今日も早いのですね」
「ちょっと早くに目が覚めちゃって……。それよりも牧師さん、体は大丈夫なんですか?」
昨日レミちゃんが体の調子が悪いって言ってたような気がするけど、こんな早くから出歩いてていいのかな。
「レミチャ様とフェルリク様は少し心配性な方たちのようです。私は全然大丈夫ですよ」
牧師さんはレミちゃんだけじゃなく、フェルリくんも様って言うんだ。
あ、あたしもお姫様だっけ。じゃあ様付けするのは癖なのかな。
「それよりも今日もお手伝いしてもらってもよろしいですか?」
「お花に水をあげるの手伝ってもいいですか?」
「ええ、お願いします」
何もしないより何かしていたほうがいい。
牧師さんから水の入ったじょうろを受け取って昨日みたいに奥から水をあげていく。
昨日と違うのは牧師さんはあたしに話しかけてこないし、あたしも牧師さんに声をかけなかったことかな。
「終わりました」
「ああ、ありがとうございます。それで、考えごとはまとまりましたか?」
「え?」
まだ何も言ってないのに、どうして分かるんだろう。
「ううん、何もまとまってないです」
「そうですか」
「あたし、最近おかしいんです。あたし自身がおかしいっていうよりはあたしの中にある思い出が」
牧師さんに相談してみることにして話しだしたんだけど、牧師さんはあたしの話を聞く前にちょっと待つよう言ってじょうろを持って歩いて行ってしまう。
でもすぐに戻ってきてくれて、両手にはじょうろじゃなくてティーポットとティーカップが持たれていた。