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「さて、そろそろ帰ろうか」
「うん」
話しているとあっという間に夕方になって、空の色が青から橙色に変わっていた。
レミちゃんはあたしの持っていた瓶を元の茂みに戻して、また先を歩いていく。
「今日も色々教えてくれてありがとう。フェルリくんによろしくね」
「ああ、こちらこそ楽しい思い出話をありがとう。フェルリクにも聞かせておくよ」
教会の前で別れてあたしは家に帰る。
帰るとママが料理を作って待ってくれていた。
「おかえりなさい。今日は早くから遊びに行っていたのね」
「うん。でも早くに教会に行ったからね嬉しいことがあってね」
「ゆっくり話を聞きたいけど、先に手を洗って夕食にしましょう?」
「はーい」
ママに言われてキッチンの洗い場で手を洗ってからママの前の席に座る。
今日のごはんはシチューとリゾットだった。
食べながら今日あったことを話した。
お花畑にいたおじいさんのお手伝いでお花に水をあげたこと。
あげている時にお姫様と呼ばれたこと。
そのおじいさんは牧師さんだったこと。
「でもあたしお姫様じゃないのにね」
「あら、あなたは私にとって大切なお姫様よ。世界で一人だけのね」
ママはご飯を食べないであたしを見ながら笑う。
あたしにとってもママはお姫様なんだよ。
みんなに自慢できるぐらい綺麗なお姫様。
「ふふ。それより牧師さんは誰と間違えたのかな? それともこの町は昔、お姫様のいる王国だったのかな」
「そうかもしれないわね」
「お姫様二人はどこに行ったのかな?」
「王子様を探しに行ったんじゃないかしら?」
「会えたかな?」
「会えているといいわね」
お姫様がいなくなったからこの町は寂しくなったのかな。
だったら早く帰ってきてほしいな。
あ、でも
「もう一人のお姫様はね、王子様じゃなくてお姫様に会いたかったんだって」
「ふふ、お姫様なのにおかしいわね」
「会えたかな?」
「会えてるわよ、きっと」
それこそ早く帰ってきてよ。
本物のお姫様はどんなに綺麗なんだろう。
きっとキラキラしてて、笑うだけでみんなの顔が真っ赤になるんだろうな。
話してる間にごはんを食べ終わった。
その後、部屋に戻ってお姫様の話をしてたからか絵本が読みたくなってママに読んでもらっていたお気に入りの絵本を一人で読んだ。
読んでいるうちに目が重たくなってきたから絵本を本棚に戻して明かりを消してベッドに入る。
夢の中でなら、あたしもお姫様になれるかな。なんて思ったりもした。