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「マキシ牧師こんなところにいたのですか。朝食は私が作りましたよ。お体が良くないのですから部屋にいてください」

「ああ、この声はレミチャ様ですね」

「レミチャ様?」


 牧師さんじゃないと思っていたおじいさんだけど、レミちゃんが呼んで分かった。

 おじいさんは昨日は留守にしていたここの教会の牧師さんなんだ。


 それよりレミチャ様って……。


「様なんてやめてくださいと言っているでしょう?」

「いえいえ、目が見えないからこそ分かるのですよ、あなた様の聖なる“天力”がね」

「牧師が言うなら私は“天力”側なのでしょうが……。さて種類は何になることでしょう」


 レミちゃんは牧師さんのパンを持っていないほうの手を繋いで歩いて行く。


 “てんりょく”って?


「お姫様、今日はありがとうございました。このパンは後で美味しくいただきますね」

「あ、はい! またお話しを聞かせてください!」

「ソリス、少し待っていてくれ。今日は違うところに案内する」


 レミちゃんはそう言って牧師さんと行ってしまった。


「本当に牧師さんだったんだ……」


 とても優しいおじいさんだった。


 私のことをお姫様だって間違えていたけど、ママに自慢しようかな。

 お姫様って言われたこと。





 少ししてレミちゃんが戻ってきた。今日はフェルリくんは外に出たくないって言うから放っておくみたい。


「今日は町から出ようと思うんだ」

「え? でも町の外には魔物がいるんだって……」

「大丈夫、すぐ近くだし。ここらで魔物は見たことがない」


 レミちゃんはそう言って先を歩いていくからあたしはそれに続く。


 教会から先に進んで行くと何もなかった周りが木に囲まれだして町から出たって分かった。


「大丈夫かな……」

「何かあれば私が守るさ」

「あ……ありがとう」


 なんだかレミちゃんがかっこいい。


 道が続いているけど、レミちゃんは道を通らないで木の間に入っていく。

 魔物が出てくる不安よりも迷子になる不安のおうが大きくなるけど、木の間を進んですぐ湖に着いた。


「わあ……」

「すぐだろう?」

「うん! とても綺麗なところだね」


 周りは木ばかりだけど、湖のすぐ周辺にはお花がいくつか咲いている。


 すぐそこだけど、木の間を通らないと行けないから見つけにくそうなのにレミちゃんはどうやってここを見つけたんだろう。


「フェルリクと散歩していて見つけたんだ。ここの水は美味くてな、よく牧師に持って帰るんだ」


 あたしの聞きたいことは分かっていたみたいで聞く前に答えをくれたレミちゃんは湖じゃなく茂みのほうに歩いて行ってガサガサ何かを探していたかと思えば、茂みの中からミルクの入っている瓶の空き瓶を二本取り出した。


「ソリスも飲んでみるといい」


 空き瓶を一本あたしに手渡してからレミちゃんは湖に瓶を突っ込んで水を入れる。


 茂みに隠されていたのに綺麗な瓶を持って湖に近づいて


「じゃあいただきます」


 それに習って同じように湖に瓶を突っ込んで水を汲んで口をつけて水を飲む。


 水だから味はしないはずなんだけど、なんだか少し甘い気がする。


「あまい……?」

「そうだろう? その甘さがいいんだ。フェルリクは、味なんかしないと言うんだがな。まあ舌が悪いんだろうな。ふふ、頭も悪いし舌も悪いか、いいところがないな」


 レミちゃん悪口だよそれ……。


「では、昨日の続きを聞かせてほしい」

「フェルリくんはいないけどいいの?」

「いないほうが聞きやすいし、いいだろう」


 レミちゃんとフェルリくんは仲悪いのかな……。


 尋ねる前にレミちゃんはその場に膝を立てて座って話をするよう促す。

 レミちゃんの隣に座ってあたしもその場に座って昨日の続きを話すことにした。



 二人が来てくれて安心して泣き止んだあたし。

 お腹が減っていて、料理をすることになったけど何もできなくてそれどころか心配かけるようなことまでしちゃって結局お皿を並べたりテーブルを拭くだけしかできなかったこと。


 そして次の日から二人と出かけるようになったこと。

 海に行って貝殻を集め瓶に詰めて置物を作ったり、花畑で冠をプレゼントしてもらったりもした。



「そういえば貝殻の置物飾ってないなあ」

「そうなのか? それでも良い思い出じゃないか。では一区切りつけて次は私が話そうか」

「あ、あのねさっき牧師さんに言ってた“てんりょく”? のこと教えてほしいの」

「それならちょうどよかった。今日はそのことを話そうと思っていたんだ。“天力”と“獄力”。神が与える“天獄”についてな」


 ごくりき? てんごく……。


 てんごくっていう言葉は昨日も聞いたような気がする。

 フェルリくんが神様がいないって言ったぐらいに。



 

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