2話 物の記憶
次の日の朝、起きてから少しの間ぼーっとしていた。
なんだろう。よく眠れたけど、なんか気持ち悪い。
「おはよう。ご飯できてるわよ」
「うん……」
ママが部屋まで呼びに来てくれたから、服を着替えてキッチンに行く。
テーブルの上には朝ごはんのパンとサラダが置かれていた。
「いただきまーす……」
「なんだか元気がないのね。眠れなかったの?」
「ううん、よく寝たよ。ただね、なんだかぽっかりあたしの中に穴が空いた感じがするの」
ママに言ってみて分かった。
なんだかあたしの中にあった何かが抜かれてしまったみたいな感じがして気分が悪いんだ。その何かは分からないけど。
うーんって悩みながらサラダを食べ終えてパンに手を伸ばす。
「アーベントとノイテは本当にあなたに親切にしてくれたのね」
「え?」
パンを取ってそのまま止まってしまった。
あーべんと、のいて? あれ……なんだろう温かくて、胸がきゅうってなる。
でも
「誰? そんな人知らないよ?」
「え?」
そんな名前の人をあたしは知らない。
首を傾げていたら扉がコンコンってノックされた。
誰かなんてすぐ分かる。レミチャとフェルリクだ。
「遊びに行ってくるね!」
食べようとしていたパンをテーブルに置いて外に出る。
「やあ、おはよう。今日はフェルリクも連れてきたぞ」
「オマエより先にオレ様が教会を出ただろう」
外にはやっぱり二人が来ていた。
相変わらず仲が悪そうに見えるけど、ちゃんと仲良しなんだよね。
「とりあえず行こ!」
今日はどこに行こう。教会裏の花畑かな、近くの湖かな。
二人と町を歩きながらママが知らない子の名前を言っていたことを笑いながら話してみた。
「アーベントとノイテって誰なんだろう」
「町にはいないはずだがな」
「だよね」
二人も笑ってくれた。
ママはどうして急に知らない名前の子を言ったんだろう。二人の名前は絵本にも出てこない。
でも、なんでかな。その名前を聞くとあたしは安心するような気もしたの。
でもそれは多分、気のせい。だって、あたしは知らないんだもん。




