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「それじゃあ話してくれ」
花畑の上じゃなく、その隣に座ったフェルリくんが聞いてくるけど牧師さんを思い出したら牧師さんに相談したかったことも思い出して話すのが怖くなって口から言葉が出てこない。
「どうした?」
「あのね、話したいんだけど……なんだか最近思い出が違うような気がしてるから間違えて話してるかもしれないんだ」
二人と過ごしていた思い出が間違っていたらあたしと一緒にいてくれた二人が――レミちゃんとフェルリくんが嫌な気持ちにならないかなって心配だった。
「ふん、間違えていたらオレ様が訂正してやる。ずっと一緒にいたんだ。それぐらい任せておけ」
「……うん、そうだね!」
それなら心配いらないね。
★
あたしは続きを話す。
夏には水をかけて遊んで、秋は本を読んだ。冬は寒くて眠れないあたしの側で寝てくれて、春はみんなでおにぎりを作って食べて、花の冠と指輪をくれたよね。
そして約束したんだよね。大切な約束を。
これで全部話し終わったけど、気になってることがある。
「ねえ、どうして聞きたいと思ったの? ずっと一緒にいたのは二人なんだからあたしが話さなくても知ってることばかりでしょ?」
一緒にいたのにあたしだけが思い出を語るなんておかしいなって思ってたから思い切って聞いてみると
「オレ様たちに付き合わせてオマエが嫌な思いしてないか知りたかった」
フェルリくんはそっぽを向いて答える。
そんなのありえないのに。
「嫌なんか思ったことないよ! 大事な二人との思い出だもん」
「ふうん」
あたしの側にいてたくさんの思い出をくれる二人に嫌だなんて思うわけない。
そんな思いを込めて言ったらフェルリくんがあたしのほうを向いて笑みを見せてくる。
それは嬉しいから出てくる笑顔とかじゃなくて、馬鹿にしたような笑顔に見える。
「もう、笑わないでよ」
「悪い。じゃあ次はオレ様が話してやる」
そんな笑顔を見せてほしくなくて言ってみるとフェルリくんは笑みをなくして真顔で話をしてくれる。
「オレ様が教えるのは七天魔のことだ」
「しちてんま……アンディア界に住んでる人たちだよね」
「ああ、そうだが人ではないな。神の命令により動く魔族と天使だ。そして七天魔はその中でも上位に位置し、アノルジ界に来ることを許されている者たちのことを言う」
アンディア界に住んでいるのは七天魔の人だけじゃなくて、あたしたち人間の住んでるアノルジ界と同じようにたくさんの天使と魔族の人たちがいるんだ。
「さて、オレ様の話すことはそれだけだ」
「え? 七天魔になってる魔族と天使の人のことは教えてくれないの?」
「ああそうか……」
あっさりしすぎていたから深いことも聞きたいと思って聞いてみたら、フェルリくんはまず七人の魔族を教えてくれるらしかった。
よかった聞いてみて。
★
「魔族の中でも特別な天獄を持つ者たちがいて……」
傲慢・強欲・色欲・憤怒・貪食・嫉妬・怠惰。七つのそれらに当てはまるようにルシファー・マモン・アスモデウス・サタン・ベルゼブル・レヴィアタン・ベルフェゴールっていう七人の魔族がいるらしい。
その七人の中でもルシファーという魔族の人は力があるから魔族の中での王という位置にいるらしいんだけど。
「強いの?」
「さあ? 王といってもその上には魔皇がいるからな」
「そっか。じゃあ天使のほうは?」
「あまり詳しくは知らんが……確か魔族の対になる天獄を持っているらしいな。詳しくは分からん。天使七人の名前だけを知っておけばいい」
そう言ってミカエル・ウリエル・サマエル・サリエル・ラファエル・ハニエル・ガブリエルという七人の天使の名前を教えてくれた。
「ちなみにミカエルは残り六人の天使を率いる隊長と言われているらしい」
「じゃあルシファーぐらい偉いんだ」
「まさか、ルシファーのほうが偉いだろう」
「どうして?」
「王と隊長だったら、王のほうが偉い」
確かに王様は命令するだけで何もしなさそうだけど、隊長は自分も動いて仲間を助けるようなイメージがあるから、確かに王様のほうが偉そう。
「オレ様の考える偉そうとは違うことを思ってそうだな」
「うん? 一緒だと思うよ?」
フェルリくんは自分からルシファーのほうが偉そうだって言ったからどっちかというと天使のほうが好きなのかな?
「さて、そろそろ帰るぞ。送っていく」
「うん、ありがとう」
フェルリくんは立ち上がって先に歩いていくから、あたしも立ち上がってスカートをパンパン叩いて土を払ってから後に続いた。




