1話 交換条件
大切な二人の友だちと別れて、大人しくて言うことを聞く魔物が引いてる車に乗せてもらって町に戻る間ママに二人と過ごした日々のことをたくさん話した。
話していたら町に着いて家の前まで来てからママが言った。
これからは自由に外に行ってもいいって。あたしが大きくなって心配いらないからって。
「本当にいいの?」
「ええ。本当よ」
嬉しくてママに飛びつこうとした瞬間だった。
「君もこの町の子なのか?」
後ろから声をかけられた。
「え?」
振り向いたらそこには赤い髪をした女の子と青い髪の男の子がいた。二人ともあたしと同い年ぐらいの子みたいだ。
「そうだけど……あの……」
「私はレミチャ。こっちはフェルり」
「名前ぐらい自分で言う。オレ様はフェルリク」
自分のことをオレ様って……。不思議な子なのかな。
「あたしはソリス。よろしくね、えと、レミチャちゃん?」
「ふふ、それだと呼びにくいだろう? 呼び捨てで大丈夫だ」
そう言われたけど呼び捨てにするのはなんだか申し訳ない。
二人のことは呼び捨てにできてたのにな。
「じゃあレミちゃんとフェルリくんって呼んでもいい?」
「それで君が呼びやすいのなら私は大丈夫だ」
「オレ様もそれで構わない。それより時間があるなら遊ばないか?」
まだお昼だから遊ぶ時間はあるけど、いいのか分からなくてママを見たらママは頷いて、いってらっしゃいって言ってくれた。
本当に外に出てもよくなったんだ。
二人はママが許可してくれたのを聞くと行こうって言って歩いて行く。
「あの、遊びながらでもいいんだけど町のことを教えてくれない? あたしあんまりこの町のこと知らなくて」
「ああ、構わない。だが、オマエはこの町の子だろ? なのにどうして町のことを知らない」
「え、と……色々あって。それより二人もここの町の子なんでしょ?」
「いや、私たちは最近この町に来たばかりなんだ」
小さな町を歩いて周りに家が少ないなって思っていたら小さな教会に着いて、教会の前で二人は止まる。
どうして教会なんだろう?
「ここに住ませてもらっている。さっきは君の家を知ったから私たちの家を教えるよ」
「あ、そうなんだ。ねえ中には……」
「今は牧師が留守にしているから入れない」
扉を開こうと思って手を置いたらフェルリくんに止められた。
「ソリス、こっちに」
レミちゃんに呼ばれて手を引かれて教会の裏に回り込んでびっくりした。
「お花畑だ!」
「すごいだろう? 牧師が毎日水をあげているんだ」
「わあ! でもね、あたしもっとすごいお花畑を知ってるよ!」
教会裏にあるお花畑は花の色が揃えられていてとても綺麗だけど、二人と行った森の奥にあるお花畑に比べたら小さかった。
この大きさだったら二人で一杯になって三人で寝転んだりはできなさそう。
「……ソリスはこの町のことが知りたいのだろう?」
「うん」
お花畑の上じゃなく隣に座ると、レミチャが聞いてきたから頷いて答える。
「実を言うと、町について教えることはあまりないんだ」
「え?」
「教会に来るまでに家を見かけたか?」
「ちょっとだけ」
多くは見てない。本当に二、三軒建っていただけだった。
「その少ししかなかった家にも人は住んでいないんだ」
「え?」
「この町にはオレ様とレミチャ、教会の牧師の三人。そしてオマエとオマエの母の二人しか住んでない」
確かに人には会わなかったけど、五人しか町にいないなんて……ちょっと信じられない。
「まあ信じられなくてもソリスはこの町にいるんだから信じることになるさ」
「そっか」
そうだ、あたしの帰る家はもう二人のいる家じゃないんだ。