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何ら変わらない、この世界


 窓辺から、雀の鳴き声が聞こえた。

 それにより将臣は覚醒、ゆっくりと瞼を持ち上げる。

 手のひらに感じる荒いシーツの感触。眠りから覚醒した将臣の瞳に、木目の天井が映る。いつもと同じ光景。いつもと同じ朝。

 しかし、一つ違う事がある。

 すぐ近くに感じる温もり、将臣が天井から視線を下ろせば、まるで腕の中にすっぽりと収まる様にして、将臣に抱きつく誰か。頭まで被さったシーツ、寝ぼけ頭でそれを剥がせば、中から可愛らしい顔が出てくる。

 あぁ、そういえば、一緒に寝たのだった。

 回らない思考で、そう思い出す。少女を起こさない様に、ベッドから降りて、背伸びを一つ。パキパキと肩が鳴り、朝の肌寒い空気が将臣の肌を撫でる。背後から呻き声、少女が寒そうに丸まる。それを見て、将臣はシーツを少女に被せ、暖を取らせる。再度寝息が聞こえ、安堵。

 さて、今日も一日頑張りますか。

 軽く深呼吸をし、今日の予定を頭に浮かべる。そして、寝間着から普段着に服装を変えようと演唱体勢に入った瞬間。


 将臣は、異変に気付いた。


 それは、あまりにも自然で気付かなかった事。しかし、確実に将臣の人生を変えたもの。将臣は、ふとその事に気付き、愕然とした。

「………はっ?」

 思わず、と言った風に口から疑問が飛び出る。そして、あれ、ともう一度首を捻る。

 演唱する為に突き出した腕を引っ込め、手のひらをじっと眺める。その体は、見慣れた将臣の肉体。

 そして、周囲に視線を走らせる。木目の天井、不透明な硝子、使い古された椅子、魔術式ランプ、大きなクローゼット、全て見慣れたモノ。

 おかしい。

 将臣の額に冷や汗が伝った。段々と心臓が早鐘を打ち、将臣の鈍っていた思考がクロック数を取り戻す。止まっていた時間が、動き出す。

 待て、待て待て待て。

 私は今、どこに居る?

 ごく単純な問い、それに対する回答もまた簡潔。

 そう、ここは夢の世界。将臣がこれまで見てきた夢、その続きの世界。

 普通なら何も、別に問題などない。既に見慣れた夢、最初こそ戸惑ったものの、今では何ら慣れきったものだろう。

 だが、だが、そこではない。問題は、もっと深刻なモノ。


 私は、昨日、現実に帰ったか?


 将臣は全身の力が抜けるのを感じ、床に膝を着いた。

 悪寒が全身を駆け巡る。

 確かに私は昨日、あの少女と寝床に入った事を覚えている。疲れきり、朝一番で風呂に入る事を決めていた。

 決めていた、がしかし。

 将臣には、現実世界で一日過ごした記憶が無かった。

 ど忘れしたか? いや、しかし人間が過ごした時間を丸々全て忘却するなのど、有り得るのだろうか。それも、たった昨日の事である。

 昨日食べた夕飯は? と聞かれれば、分からないと答えても不自然はない。それはごく限定的な事だから。しかし、昨日は何をしていたのかと問われ、欠片も思い出せないのは、異常。

 将臣の肩が、大きく跳ねる。本当に、思い出せないのだ。

 それはそうだろう、何せ将臣は『連続して夢を見ている』のだから。

「………嘘だろ、おい」

 呆然と放たれた言葉。それに答える存在は無い。朝の清々しい空気が、突然重苦しい有毒なものに変わったように、将臣は自身の呼吸が荒くなっているのに気付く。

 決して寝汗ではない、嫌な汗が全身を滴り落ちる。

 だが、将臣は正気を失わない。

 辛うじて正気を保っているのは、ひとえにまだ現実に帰れないと決まったワケでは無いから。

 そう、今回は偶然そうなっただけかもしれない。明日、もしかしたら今にでも、もう一度寝てしまえば現実に帰れるかもしれない。無数の『もしかしたら』が将臣を支えていた。

 兎に角、今決めつけるのは早計だと、単にいつもと違うから自分は動揺しているだけで、それほど騒ぐ事でも無いと、自分に必死に言い聞かせる。

 今この状況で、最も悪いのは正気を失い狂乱に陥る事。思考を止める事は即ち、本当の意味で将臣は戻る事が出来なくなるかもしれないのだ。

「んっ……」

 少女が、ベッドの上で身動ぎをした。そして、その瞼がゆっくりと持ち上がっていく。

 まずい。

 将臣は咄嗟に立ち上がり、額の汗を強引に拭った。そして不安げな顔を消し去って、穏やかな笑みを浮かべる。

 この子の前でくらい、不安な顔を見せてはいけない。

 将臣はごく自然な動作で少女の目の前に屈み、ゆっくりと語りかけた。内心は混乱の尾を引きずっているが、それをおくびにも表情には出さない。

「起きたか、調子はどうだ?」

 少女は最初、目の前の人は誰だろうと訝しげな顔をし、次いで周囲を見渡し、その表情を段々と変えていった。

 その表情は、困惑。

 少女の最後の記憶は、自分に暴力を振るう男に関して。それ以降、彼女は意識を手放していた。

 つまり、気が付けば見知らぬ部屋で、見知らぬ男の前に居る自分。不安になるに決まっている。

「起きたなら、服を来て下に降りると良い、私は先に行っている、この部屋を出て右だ、待っているよ」

 それだけ言って、将臣は素早く着替えを済ませるべく、演唱を行う。


 インベントリ^防具^魔術師セット


 将臣の姿が一瞬で様変わりする。その光景に、少女は驚いた様に息を呑んだ。将臣は間接的に、少女に魔術師である事をアピールする。つまりは、魔力欠乏症に関する不安を取り除く為。

 昨日の戦闘でローブと服はボロボロになってしまったので、魔術師セットに設定しておいた服装は、前回と違う予備のモノ。だが基本、似た様な格好なので、実質何かが変わっているワケでは無い。

 将臣はそのまま、ごく軽やかな足取りで自室を後にした。扉を閉める前に、少女に向かって一度微笑む。そして少女の姿が、扉の向こうへと消える。

 

 そこまでが限界だった。


 将臣は裾を翻して、駆けだした。

 そして共用のトイレに駆け込み、施錠。荒くなる呼吸を必死に沈めた。落ち着け、落ち着けと。自身に何度も言い聞かせる。

 どれだけ安心する材料を得ようと、どれだけ自分に言い聞かせようと、不安はすべて取り除かれない。自分はこんなにもイレギュラーに弱い存在だったかと、思わず自分の精神に悪態を吐いた。

「兎に角、これは偶然かもしれない、まだ分からない、今日の夜寝るまでは確定では無い、つまり機会はあるんだ、焦るな」

 思わず口に出して確認する程に、将臣は焦燥していた。将臣が意識を飛ばせば、今にでも確認する事は出来る。

 もし、もう一度意識を飛ばして現実に戻る事が出来なければ『必然』

 帰還出来れば『偶然』

 確かめたい気持ちも勿論存在するが、それ以上に確かめる事が怖かった。

 自分の胸に手を当てて、静かに深呼吸。自分の体内に残留する熱を吐き出して、気持ちを切り替えた。

 大丈夫、いつもの様に振る舞え、ここは夢の世界、何も恐ろしい事は無い。

 早鐘を打っていた心臓を落ち着かせ、トイレを出て一階へと向かった。

 階段を下りながら「おはよう」と挨拶をすると、いつも朝早い店主が「おう」と返事を返す。一階には店主以外の姿は見えない、少女はまだ降りてきていないらしい。

「頼まれていた粥、作っておいたぞ」

 そう言って運ばれてくる朝食に、ゼリー状の粥。これがそうなのだろう、テーブルに並べられたそれをまじまじと見つめてしまう。

 粥と言うよりは、十秒飯の様な印象を受けた。半透明なのがまた、それに拍車を掛けている。

「何だ、これがそんなに珍しいか?」

 不思議そうに店主が問うもので、そうだなと肯定。一般的な家庭でも、母親なんかは作ってくれるぞと言われ、言葉に詰まる。

「私の母は、料理が出来なかった」

 そう言うと、店主はとても微妙な顔をした。言い訳としては、まぁ悪く無いだろう。

 静かにパンを手に取り、頂きます、口に運ぶ。後は少女が降りてくるまでのんびり食事をとれば良い。

 例え、内心が荒れ狂っていたとしても。


 少女の事を待ちながら、のんびり朝食を食べていると、誰かが階段を降りて来る音が聞こえた。

 来たのか、そう思い音のする方へ視線を向けると、そこに居たのは少女では無くファルメだった。

 彼女はいつも昼近くまでは起きない。珍しい事もあるものだと、少し驚きながらも「おはよう、今日は早いな」と挨拶を送った。

「えぇ、まぁ……ゼオの拾ってきたペットがいつ泥棒猫に化けるか分かったものじゃ無いからね」

 そう言って眠たそうな目を擦りながら将臣の対面席に座るファルメ。久々の早起きだからか、服もよれているし寝癖もある。

 それでも愛嬌があると思ってしまうのは、彼女の容貌が優れているせいか。彼女の言葉が良く理解出来なかった将臣は「そうか」とだけ返事を返した。

「おじさん、朝食三人前」

 ファルメが店主に手を挙げながら注文、相変わらずの量だ。

「お、なんだ、ついに遠慮ってモノを覚えたか?」

 店主が少し嬉しそうにそう返すと、「馬鹿、後で追加注文するに決まってるでしょう」と返すファルメ。店主が項垂れ、溜息を一つ。

 どうやら、三人前でも少ない方らしい。

「良く胃に入るものだ」

 将臣が感心しながらそう言うと、ファルメは少し焦った様に「沢山食べる女は嫌い?」と聞いてきた。

 別に、そういう訳では無い将臣は首を横に振る。それに安堵した様子を見せるファルメに、どうせ私が言ったって食うのだろうなんて思った。

「おいおいゼオ、そこは嘘でも頷くところだろ、こいつ一人の食費がどれだけ掛かってると思ってやがる」

「悪いな店主、私は自分に嘘は吐けない人間なんだ」

 澄まし顔で店主を見ると、恨めしそうな顔をされる。何故そんな目で私を見るのか。私がファルメに言ったところで、こいつは食うのを止めないだろうよ。

 顔を逸らし、パンを噛んで知らぬフリをした。

「おじさん、ご飯、はやく~」

「あいよ待ってろ、すぐ作るっての、たくよぉ」

 厨房へと引っ込む店主。お腹減ったとだらしなくテーブルに突っ伏すファルメ。その瞳が、物欲しそうに将臣の朝食へと注がれる。

 尚、今日の朝食はコーンスープに三枚切りのパン、サラダに唐揚げの様な肉、それと焼き魚だ。ファルメの目線は将臣が口を付けたパンに注がれている。

 将臣はスープに唐揚げを平らげており、パンも残りこれ一枚。将臣は半分食べかけのパンをファルメに突き出すと、「食いかけだが、食べるか?」と聞いた。

 途端、ファルメが驚いた様に目を見開き「良いのッ!?」と元気良く聞いてくる。将臣が頷くと、恐る恐るパンを手に取り、まるで宝石の様に目を輝かせる。

 そんなに腹が減っているのか。

 燃費が悪い体は大変だと思いながら、残ったスープを胃に流し込む。

 ファルメは将臣の食べ口をゆっくりと口に含むと、感動していた。それを将臣は「随分ゆっくりと食べるな」と眺める。

 そうこうしている内に、階段を降りてくる足音が聞こえてくる。とても小さな足音は体重が軽い証拠、将臣は確信を持って振り向いた。

「来たな」

 将臣が視線を向けた先には、どこか愛らしい小動物を彷彿させる少女が居た。将臣が昨日の内に用意していた、サイズの小さい服を見に纏っている。

 将臣には女性の着る衣服というものが良く分からなかったので、外見は度外視し機能性を重視した。

 俗に言う貫頭衣という奴で、良く街の娘等が来ている極々平凡な衣服。それの上に少し集めの上着を着込んだ姿。

 お世辞にも可愛い服とは言えないが、防寒の観点からは申し分ない。

 尚、下着は流石にフェルテッサが用意してくれていた。そこまで考えが回っていなかった私は彼女に素直に感謝した。「サイズは大丈夫か? 苦しかったり、大きかったりは」

 将臣の言葉に、少女は首が取れるんじゃないかと思う程強く否定する。

 「なら良かった」そう微笑むと、少し頬を赤くする。年相応の可愛らしさに、将臣の心は暖かくなった。

 そうだ、子どもって言うのは、こういうものだろう。決して大の男に殴られたらり、迫害される様なものじゃない。

「さぁ、腹も減っているだろう、朝食にしよう」

 将臣がそう言って自分の隣の席を叩くと、少女はお腹を摩った後、恐る恐ると言った風に将臣の方へと近付いて行く。

 いきなり自分のパーソナルスペースに踏み込まれる事は躊躇っていたが、空腹には勝てなかったのだろう。しかし、その足はテーブルまで後数歩という所で止まった。

 どうしたんだ、将臣はそう問う前に少女がある一点を見つめている事に気付く。

 そして、その表情に浮かぶのは若干の恐怖。将臣が視線を辿ると、少女を射殺す様な視線で見ているファルメが居た。

「ファルメ」

 将臣が少しだけ強く名前を呼べば、それに若干の怒りが混じっているのに気付いたのだろう。

 ファルメは「ふん」と鼻を鳴らしながらも、視線を少女から逸らした。

 一体どうしたんだ、コイツ。

 口には出さないが、将臣はそう思ってしまう。少女が静かに椅子へ腰掛けた後、店主が先程調理してくれた粥を手前に置く。

 「固形物を口にしていなかったかもしれないと思って、食べやすい粥を用意した」と説明も加えて。

「もし大丈夫そうなら、追加で普通の朝食も頼もう、遠慮せずに食べてくれ」

 そう言って木製のスプーンを渡す。少女は、素直にそれを受け取りながらも、中々手を付けなかった。どこか戸惑うような、訝しむような、そんな様子だった。

 それでも、将臣が何も言わずに朝食を食べ始めると、じっと自分の持つスプーンと粥を見て、粥にスプーンを入れる。

 そしてゆっくりと口の中に含み、咀嚼。将臣は横目でそれを眺めながら、確かに見た。少女の口元が小さく「美味しい」と動いたのを。

 僅かに微笑みながら、将臣は朝食を平らげる。そんな将臣を見て、ファルメは眉を顰めた。

 やはり、久々の食事だったのだろう。少女の食べる速度は極端に遅い。

 それでも、将臣は急かすような真似はせずに、少女が急いで口に含む度「慌てなくて良い」と窘めた。そして、自分は追加注文した紅茶を啜る。

 ファルメも何故か席を立たずに、ずっと先程からデザートのケーキをつついている。将臣と同じく、席を立つ様子もないファルメに、将臣は疑問を抱いた。

「ファルメ、今日は特に予定は無いのか」 

 将臣が疑問に思った事を問えば「言ったでしょう、泥棒猫に化けないか見張るって」と言う返事が返ってくる。

 その言葉は確かに先程も聞いたが、一体どういう意味だ。

 ファルメの鋭い目つきは、そんな事を問える様な雰囲気でも無く、将臣は「………そうか」と同じ返事を返す他無かった。

 結局、二十分程掛けてお椀一杯を平らげた少女は、それだけで満腹の様子だった。これで腹が一杯とは、余程食料を与えられていなかったらしい。

 将臣は少女の見えない場所であの男に対する怒りを表情に表していたが、少女の前では微塵もその様子を見せない。

「腹は膨れたか?」

 将臣が穏やかな笑みでそう聞けば、少女は一もなく頷く。そうして何度か口を開閉し、たどたどしい口調で将臣に感謝を伝えた。

「あ、りがと」

 それは、何と言うべきか。面食らった様子の将臣は、途端、花開いた様に笑う。それは、会心の笑みと言える、心からの微笑み。

「あぁ、どういたしまして」

 将臣は単純に嬉しかった。初めて口を聞いてくれた、子供らしいその様子に心が暖まった、少女に漸く幸福を与える事が出来た。理由は数あれど、それらが齎した結果が将臣の笑みである事は事実。

 少女は将臣の心からの微笑みに一瞬驚き、次に頬を赤く染めた。ピキッと、何かに亀裂が入った音が響いた。

「今更だが、君の名前を教えて欲しい」

 将臣は少女に名前を問う。

「私はゼオ、ゼオ・ハプスブルグ」

 将臣の名乗った名前は、この世界に於いては店主とある一人の女性を除いて知られていない。

 それは、その最初の女性が将臣がこの世界に来て、一番長く、そして最初に過ごした女性であったから。

 この世界に来たばかりで、その女性に名前を問われた時、咄嗟に出た家名がドイツ系貴族の家名と言う、何とも間抜けな事だった為、将臣はこの名をひた隠し続けて来た。

 それが、目の前の少女にはすんなりと明かす事が出来た。それは何故だろうと、自分でも不思議に思う。

 しかしそれも、恐らく子どもが持つ純真さ故だろうと、勝手に自己解決。

 少女に向かって手を差し出すと、少し戦々恐々としながらも、その手を握り返し、少女は名を口にした。

「ヒ、ヒオ、名前は、ヒオって、言います」

 良い名前だ。そう言いながら握手を交わす。少女の頬は赤く染まり、将臣は穏やかな微笑みを浮かべていたに違いない。 将臣は、自分は果たして、こんなにも子どもが好きだったろうかと疑問に思った。目の前の少女を見ていると、何となく癒されると言うか、和むというか。この世界には無い、一種の安らぎに近い感情を抱いていた。

「ちょ、ちょっと!」

 その穏やかな雰囲気を破ったのは、やはりと言うか、ファルメ。

 彼女はテーブルに半ば乗り出すような格好でゼオに迫ると、鼻先がくっつくのでは無いかと言う距離まで顔を近付けた。 

 勢い余って倒してしまったグラスがテーブルを転がり、中の水が床に滴る。

「っ、一体何だファルメ」

 身を突然乗り出してきた事にも驚いたが、視線を少し下げると彼女の胸の谷間が見えてしまい、慌てて視線を彼女の瞳に合わせる。

 彼女の目は三角になっていた。つまりは、そう、怒っていた。

「ゼオ、一体どういうことっ!? 私、ゼオに家名があるなんて、聞いてないッ!」 

 その言葉に、それはそうだろう、言っていないものな。と返せば、彼女は更に激怒した。

「何で言ってくれなかったのッ!?」

 その言葉に、将臣は困り果てる。

「何故も何も、言う必要も無かっただろう」

 因みに、宿に泊まる時はフルネームで書かなければならなかったので、店主は知っている。

 その事を伝えれば、ファルメは鬼の様な形相で店主を睨んだ。

 店主は将臣の言葉に、カウンターを拭いていた途中ぎょっとし、次いでファルメに向けられた視線に大急ぎで厨房へと引っ込んだ。

「家名があるって事は、将臣は貴族って事でしょう!? 重要な事じゃないっ」

 そう、この世界に於いて家名とは即ち、貴族の証明と言える。

 ヒオの様に、名前だけ持つ者が平民で、将臣の様に名前の後ろに家名が付く者が貴族。そして、家名の後ろに国名が入ると王族となる。

 将臣はこの世界に来た当初、現実の世界基準で考えた為、咄嗟に出た名前は苗字とセットになっていたのだ。

 結果、貴族だと誤解される事となる。

「しかし、貴族と言っても既に没落した家だ、何の力も持たない名に意味はない」

 そして、これが将臣の考えた言い訳。

 もし何か探られる様な事があっても、とても遠い国の、極小規模な家で、尚且つ既に没落している事にすればバレる事はあるまい。

 事実、この名を一番最初に聞かせた女性も、それで納得していた。

 しかしファルメは、その言い訳に納得しなかった。

「例え没落したとしても、貴族は貴族じゃないッ! あぁ、もう、何で教えてくれなかったのッ!? ゼオ、この事は後誰が知っているの?」

 ファルメが放つ妙な威圧感に圧されながらも、将臣は答える。

「店主、今話したヒオとファルメ、あともう一人知り合いだけだ」

「その知り合いっていうのは!?」

「もう一年近く前に知り合った友人だ、ファルメと面識は無い」

 その言葉を聞き、ファルメは大きく息を吐き出す。何だ、一体何を心配していたのだ。

 そして安心したと思いきや、次は何やら思案顔でブツブツと呟き始める。吐息の様な声だったので聞こえなかったが、その様子は傍から見ると気味が悪い。

 将臣は、ほったらかしていたヒオの手を取ると、テーブルから立ち上がった。

 ヒオも突然手を取られ、テーブルから引っ張り出されたので、少々驚いた様に蹈鞴を踏んだが、将臣がそれを支える。

 本当なら店主に粥の礼をしたかったが、厨房に引っ込んでしまったな。

 粥の礼を断念し、将臣はヒオに自室へ戻る旨を伝えた。ヒオは頷き、そのまま二人は自室へと戻る。

 その背後で、ファルメは只管ひたすらに何かを呟き続けていた。


 自室に戻ると、将臣は一番最初に風呂に入る事にした。元々、朝一番に風呂に入る予定だったが、あの異変によってそれどころでは無かった。

 将臣は、あの異変について割り切って考える事にした。

 あまりネガティブな方向に思考が行っても、良い事など一つもない。であるならば、考えるのは夜だけにしよう。そう決めて、将臣は風呂の準備をする。

 この宿の部屋は少し豪華に出来ており、部屋は計三室存在する。

 一つは小さな個室トイレ、次に寝室兼多目的部屋、そしてもう一つが倉庫の様な小部屋である。

 実際、何に使うかと店主に問うた事があるが、大体の人は倉庫に使うらしい。

 元々、この部屋は長期滞在の宿泊者に貸し出される部屋で、ちょっとした優遇部屋と言う事になる。

 普通、モンスターから剥ぎ取った素材や収集した素材は袋などに詰めて持ち帰る。

 そして、それらを全て倉庫などに収納しておき、ある程度貯まったら売却するのだ。

 恐らく、ここに泊まっていた先人達もそういう用途でこの小部屋を使用したのだろう。勿論、全員が全員探索者では無いと思うが。

 しかし、将臣は魔術師であり【泥箱】と言う、大容量を収納可能な移動倉庫を所有している。つまりは、小部屋を使う必要が無かった。

 結果、部屋が丸々一室余ってしまったのだ。

 そこで将臣は考えた。

 部屋を余らせるのは癪だし、この世界には風呂という概念が存在しない。いや、正確に言えば浸透していないと言うべきか。

 貴族は毎日入るだろうが、魔術師でも無い人間がこの世界で風呂を沸かすとなると、かなりの重労働となる。

 科学の代わりに魔術が発達しているこの世界では、風呂を自動で沸かしてくれるシステムなど存在しないのだ。

 あるとすれば、天然温泉を利用した銭湯のみである。

 そして、その銭湯も決して安い料金では無い。

 結果、平民の殆どは風呂と言えば三日に一度、酷い奴だと一週間に一度しか入らない様な奴も居る。

 女性は比較的気を使う様だが、それでも二日に一度程度が普通だろう。男性はずぼらな人間が多く、非常に不衛生極まりない。

 将臣はそんな環境に耐えられなかった。その為、最初の頃は銭湯に毎日通っていたが、一週間もすると、段々と銭湯に通う事も嫌になっていた。

 それは、あまりにも湯が汚いせいだ。

 いや、ある程度は綺麗なのだろう。だが、一週間も風呂に入らない男共が入った風呂などには、正直入りたく無い。

 そこで、将臣は考えた。風呂が無いなら、自分用の物を作ってしまえば良いと。

 前までの宿は一室しかない、ボロい宿ではあったが、幸い将臣は一人部屋だったので、何とか揃えた風呂一式で必要な時に風呂に入り、清潔を保つ事が出来た。

 この宿でも同じ事が行える。

 しかも、一々風呂用の器具を出し入れする手間が省け、将臣はこの小部屋の存在をありがたく思っていた。

「私は風呂に入る、ヒオは………」

 適当に寛いでおいてくれ、そう言い掛けて口を閉じてしまう。それは、ヒオも風呂に入れた方が良いのでは無いかと思ったからだ。 

 ヒオの姿を見ると、お世辞にも清潔な姿とは言えない。

 一応水浴び程度はさせていたのだろうが、くすんだ髪に汚れた肌。傷が無くなった分、それなりに見れるようにはなったが、将臣の基準とする清潔度から言ったらアウトだ。

 少し狭いが、まぁ入れない事もない。一緒に洗ってしまおう。

 そう決めて、将臣はヒオに伝える。

「よし、一緒に風呂に入ろう」

 その言葉を聞いた瞬間、ヒオの顔からさっと血の気が引いて、しかしどこか恥ずかしそうに頬を染めて、百面相の様に表情が変わっていった。

「ぇ、あの、うぁ」

 パクパクと開かれる口からは、何を伝えたいのか、意味の無い呻き声しか出てこない。

 どうしたのかと疑問に思いながらも、将臣は小部屋へと入って淡々と風呂の準備をして行く。

 鍛冶屋に特注で製造してもらったバスタブ、凡そ部屋の半分の大きさ。その中に魔術【静水】で水を生み出して【発火】で加熱する。

 丁度良い温度になったら小部屋全体に魔術で薄い膜を展開する。これは【魔術障壁Ⅰ】よりも遥かに脆い膜であり、剣で斬りつければ簡単に裂かれてしまう。

 しかし、防水目的で展開しているので、特に強度は求めていない。これで、床下に浸水する様な心配も無くなった。

 入浴準備万端。

 用意していた石鹸や風呂椅子、タオル等も確認。

「よし、ヒオ入ろう」

 そう言って小部屋を出ると、ヒオは顔を真っ赤にしながら自分の衣服を掴み、俯いていた。

「あ、あの」

 ヒオが決意した様に口を開く。その声は随分と上擦ったもので、上げた顔は熱でもあるのかと思うくらい、真っ赤になっていた。

「わ、わた、し、そのっ、はじ、初めてで」

 それはどういう意味だろうか。まさか水浴びが初めてと言う訳でもあるまい。

 その言葉の意味を良く理解できなかった将臣は、疑問符を頭に浮かべる。

 そしてバスタブを見て、唐突に理解する。

 あぁ、浴槽に身を沈めた事が無いのか、と。そう自分で納得した。

 ある程度人口のある都市には銭湯が存在するが、地方の農村には銭湯が無いと言う場所も珍しくない。

 つまりは、水浴びやお湯に浸した布で拭いただけ、なんて事も有り得る。

 ヒオもきっと、そういう場所で育ったのだと。

 例えそれが間違いだったとしても、双方は相手の言葉を自分の中で噛み砕いて理解する。そして、その誤解を解かぬまま、将臣は笑顔で答えた。

「心配するな、慣れると(浴槽も)気持ちの良いものだ」

 その言葉を聞いて、ヒオは更に顔を真っ赤にする。何故そんなに赤くなるのかと将臣は首を傾げるが、双方の誤解は平行線。

 そのまま将臣はぱっぱと、ヒオは緩慢な動作で衣服を脱いで浴槽へと向かった。


 何事も無く風呂を済ました後、将臣はさっぱりとした体に満足し、ヒオはしきりに首を傾げていた。小言で「何故、何もしてこないの」としきりに呟いている。どうしたのだろうか。

 いや、しかし。将臣は少しだけヒオと風呂に入った事を後悔していた。と言うのも、将臣の愚息がヒオに反応してしまった為だ。

 将臣自身、まだ年端も行かない少女を性欲対象に見る性癖は持っていない。しかし、良く考えれば将臣の周囲にそういう関係になる様な女性は居なかったし、裸を見るような機会も無かった。

 そして何より、将臣は青年という年齢でありながらも、あまり性に関心を抱いていなかった。ここ一年、自分で慰めた記憶も無い。

 そんなある意味溜まった、若しくは耐性の無い状態で少女とは言え女性の裸を見れば、それなりに反応してしまうのも仕方ない事かもしれない。

 しかし、相手は年端も行かない少女。そういう行為に及ぶ事を将臣の良心が許さなかった。

 着替えを済ませた将臣は、湧き上がる色欲を逸らすべく、ヒオに話しかけた。

「昨日の事なんだが」

 そう口火を切った将臣は、ヒオをベッドの腰掛けさせ、自分は椅子に座って昨日の事を伝えた。自分がヒオを買い取った事、自分が魔術師である事、それ故に魔力欠乏症を心配する必要は無い事、ヒオに隷属の魔術などは施さず、もしゼオと共に居る事が苦痛であるならば、すぐにでも解放する事。

 それを全て話し終えた時、ヒオは静かに涙を零した。

 泣く時に、声を押し殺すのは癖か。奴隷商の元に居た時に、泣き喚く奴隷には鞭打ちが行われていたのかもしれない。そう将臣に思わせる程度には、彼女は音一つ立てずに涙を流した。

「すみません、すみませんっ」

 彼女は泣きながら将臣に謝罪を繰り返す。それが泣いてしまった事に対する謝罪なのか、それとも他の何かに対する謝罪なのか、将臣には分からない。そして、将臣は女性が泣いた時にどう対処すれば良いという知識は、持ち合わせていなかった。

 結果、泣き出したヒオに対し動揺する事こそ無いものの、一体どうすれば良いのかと困り果ててしまう。少し逡巡して、将臣はヒオの頭に手を乗せる。そして優しく頭を撫でた。

 子どもに対して行なう事など、これくらいしか思い付かなかった。

 しかし、将臣の選択は間違っていたらしい。

 頭を撫でられたヒオは、一瞬泣き止んだと思えば、大粒の涙を零しながら更に激しく表情を崩した。鳴き声こそ上げないものの、殺しきれない嗚咽が漏れている。

 今度こそ、将臣は硬直した。最早、どうする事も出来ないと。ただ兎に角泣き止んでくれと、右往左往しながら頭を撫で続ける事しか出来なかった。

 どれ程泣いただろうか、ヒオはいつの間にか頭を撫でていた将臣の腹に縋り付く様に抱きつき、嗚咽を零していた。流石に離れろと言える訳も無く、ただ突っ立ったまま将臣は頭を撫でる事しか出来ない。 

 静寂な空間に、ヒオの嗚咽だけが響く。非常に気まずい。

 だが、将臣とていつまでもこうしている訳にはいかない。

 将臣は指に装着した指輪を撫でて、ヒオに顔に言葉を投げかけた。

「ヒオ、私はこれから迷宮に潜ってこようと思うのだが」

 ヒオは俯いていた顔を上げ、将臣を見た。瞳は赤く充血し、頬には涙の後。その表情は、少し驚いた表情だ。そして、次に浮かぶのは親に置いていかれるとばかりに、再度泣き喚く寸前の子どものそれ。将臣は「うっ」と少したじろいだ。

 しかし、将臣もこればかりは譲れない。流石に、迷宮は死と隣り合わせの場所だ。気軽に連れて回せる様な場所でもない。

「わ、私も、連れて行って下さいっ!」

 ヒオの言葉は、彼女の表情を見れば容易に想像の付くものだった。故に、将臣は首を横に振って答える。

「流石に、迷宮の中でヒオを絶対に守れると言える程、私も自分の技量に自信は無い、最低限自分の身を守れない事には」

 それに、将臣は今朝方異変を知ってしまった。この世界が夢だと腹の底から信じられない限り、もしヒオを失えば将臣は自責の念に駆られるだろう。

「け、剣、私、剣が使えますっ!」

 ヒオは叫ぶ様にそう言った。将臣は、それを半信半疑て聞く。ヒオの声は、最早哀願に近かったかもしれない。置いていかれまいと必死なその様子が、将臣の心を深く抉る。

「本当に、剣が使えるのか?」

 その言葉から、剣が扱えれば連れて行って貰えると思ったのか。ヒオは「使えますっ!」と食い気味に声を上げた。

 将臣は、じっとヒオの体つきを見る。確かに、彼女は本当に剣が使えたのかもしれない。しかし、今のヒオの体は枯れ木の様で、とても剣を振り回せる様な体には見えない。例え、本当に剣が扱えたとしても、今の体では剣を振る事すらままならないだろう。

 それでも、無理だと断言するには、ヒオの哀願は将臣の良心を穿ち過ぎていた。将臣は何も言わずに、インベントリを開いた。その中から、剣を一つ選択し、手元に出現させる。

 将臣の手に突然出現した剣にヒオは驚く。

 この剣は、この世界に来たばかりの時。戦闘の立ち回りも、魔術も扱えなかった将臣が、剣士の真似事をしていた時に使っていた剣だ。結局、二週間と経たずに使われなくなったモノだが、半永久保存のインベントリに仕舞われていたそれは、未だに一年前の輝きを失ってはいない。捨てるかどうか迷っていた一品だが、結局思い出代わりに捨てられずに居た。

 将臣は剣を逆手に持ち直し、柄をヒオの方へと突き出す。受け取って、振るってみせろと。

 刃渡り凡そ六十センチ、重さは約三キロ前後。持てなくはないが、力の無い者が使えば体ごと持っていかれるだろう。

 ヒオが柄を手に取り、剣が将臣の手から放れた。そして次の瞬間には、刃が地面に落ちる。鋒を床板に着けた剣は、ヒオが両手で持つ事によって何とか持ち上がった。

 しかし、小刻みに震える腕。中程まで持ち上がったそれは、既に鋒が震えている。明らかに筋力不足。

 振るう為に一歩踏み出した足は、覚束無い。そして、上段から振り下ろされた剣は、途中握力が足りない事が原因で、ヒオの手から滑り落ちた。音を立てて床に転がる剣。それを見て、将臣は首を横に振る。

「やはり、此処で待っていた方が良い」

 その言葉を聞いて、「そんな」と絶望の表情を浮かべるヒオ。彼女は自分の震える手を、信じられない様な物を見る目で見ていた。

「前までは、奴隷になる前までは、ちゃんと、ちゃんと振れていた筈なのにっ」

 どうやら、剣自体は本当に扱えていたらしい。しかし、如何せん肉体が貧弱になり過ぎていた。

 将臣は床に落ちた剣を拾い上げると、インベントリの中に収納。そして、未だ信じられないとばかりに顔を歪ませるヒオを優しく撫でた。

「大丈夫、これは私の日課の様なものでね、そんなに遅くはならないし、必ず帰ってくる」

 そう言って静かに小指を立てた。ヒオは、赤く充血した瞳でその小指を見つめる。そして「これは……?」と疑問を口にした。

「私の居た国で行われていた、古い習わしだ、まぁ約束を厳守する為の誓いの様なものだと思ってくれ」

 小指を絡めて、誓いの言葉を言い合うんだ。そう言うと、ヒオはゆっくりと、強く将臣の小指に自分の小指を絡めた。

そして、将臣の復唱してくれと言う言葉に頷く。

「指きりげんまん、嘘ついたら針千本飲~ます、指きった」

 ぴっと、小指が解け、互いの顔を見合う。子ども騙しだと思われるだろうか。それとも、胡散臭いと思われるだろうか。だが、これは将臣の自己満足。自分がヒオと結んだ約束。将臣は、常日頃、他人との約束は破らないように生きてきた。

「じゃあ、行ってくるよ」

 そう言って将臣は踵を返す。将臣の服を掴んでいたヒオの手は、静かに離れた。そして、将臣の姿が扉の向こう側へと消える。最後までその背に視線を感じながら、将臣は後ろ手で扉を閉めた。

 そして、将臣はその表情をガラリと変える。

 それは、生気を無くした顔とでも言うのか。酷く青白い、血の気の失せた顔だった。

 冗談じゃない、あんな華奢な小さな子を、迷宮になんて連れ出せる筈がない。

 将臣が最も危惧しているのは、自分の目の前で知人が死ぬ事だ。

 赤の他人ならばまだ良い。人の死と言う事態に、将臣自身それ程耐性がある訳では無いが、自分の知り合いが死ぬよりは百倍良い。

 故に、自分からリスクを被る様な真似はしたく無かった。それでも、ヒオに剣を持たせたのは将臣の甘さ。機会を与え、迷宮へ行く選択肢を与えてしまったのは、将臣の覚悟の足りなさだ。

 将臣は足早に下へと続く階段を下る。階段を下りた先には、人影一つ無かった。恐らく店主は厨房で調理中なのだろう、そしてファルメは自室に戻っている、そんなところだ。

 将臣はローブのフードを被り、宿の扉に手を掛ける。

 ヒオを放ってまで迷宮に向かう理由、それは簡単。

 本来の将臣であるならば、迷宮の一層二層程度で遅れを取る筈がない。それでも尚、絶対にヒオを守れる自信が無いと言ったのには、明確な理由がある。

 そう。

 

 命のストックが無い、今の自分は……戦えるのか。


 宿から出て見上げた空は、僅かに曇りだしていた。


更新は不定期となります。

ストック次第です。

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