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反逆の煉獄魔人  作者: 十六夜・多々良
第Ⅱ章 反逆開始
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第3話 開け、煉獄の扉

メリークリスマス!


どうも、ボッチな作者です

ほんとにボッチでした


家族もいませんでした(。´Д⊂)シクシク


べ、別に気にしてませんけどね!

「漸く来たか、紫龍 優人。ようこそ我々レジスタンス集団《プロドティス》の本拠地へ」


 周囲さ様々な電子機器に囲まれた暗がりの中、鷹揚に手を広げた曜が僕に語りかける。

 曜は不思議な雰囲気をまとっていて、自然と引き込まれそうになるカリスマ性とでも言えるようなものがあった。

 曜は艶やかな黒髪黒目で、逃すまいとでも言うかのようにしっかりとその目線を俺に固定していた。

 

「俺は、黒須 曜。プロドティスのリーダーをやっている」


 レジスタンス集団、プロドティス。

 それは国際異能力者管理協会に楯突く異能力者の集団。

 世間一般でエリートと呼ばれる国際異能力者管理協会ーー俗に協会とも呼ばれるーーに牙を剥く悪の組織と言われている。

 そんな組織のリーダーが今、自分の目の前に立っている。

 その衝撃と恐怖は推して知るべきであろう。


「あ、悪の組織が僕に何の用ですか……? 」


 こんなことを言えば殺されるのではないか、そんなことは考えなかった。

 否、考えられなかった。

 何かを言わなければならない、そんな重圧に晒され自分でも知らず知らずの内に言葉を発してしまっていた。


「はははっ、悪の組織か。まぁ世間で正義とされている協会と事あるごとに事を構えている俺たちは悪の組織なのかな」


 しかし男は自分を殺すどころか楽しそうに笑っていた。

 よくよく見れば目は笑っていないのだが、そんなことを会って数分の優人が知るはずもなく、その事に気づいたのは側に立っていた愛ただ一人だけだった。

 愛は目が笑っていない曜を見ても顔色一つ変えることなくーーいつもの事なのかもしれないがーーその側に立っていた。


「君に用と言うのは他でもない、勧誘だよ」

「勧、誘……ですか? 」

「そ、勧誘」


 勧誘。

 自分を何に勧誘すると言うのか、一瞬何を言われているのか分からなかったが、次の瞬間にその言葉の意味を理解した。

 

 ーー僕を勧誘? プロドティスに? 何で?

「何でですか? 」


 いくら考えても無能力者の自分を勧誘する理由に思い当たらなかったので思ったことを素直に聞くことにした。


「君は、自分が無能力者だと思っているんだね」

「思っているも何も、そうでしょう」


 自分には異能力はないはずだ、目の前の曜は何をいっているのだろうか。


「まぁ、まだ発現はしていないみたいだし、仕方ないか」


 曜は独り言のように呟くと、一人で納得したのか頷くと急に話題を変えてきた。


「ま、いっか。ところで優人君、『魔獣』って名前を聞いたことはある? 」


 魔獣。

 いくら思い出そうとしてもその言葉に思い当たる節はなかった。


「いや、ありませんが? 」


 そう聞くと曜はまた納得したように頷いた。


「やっぱりか、協会は隠しているようだな。魔獣と言うのはーー」


 曜が話を続けようとした瞬間、ブザーが鳴り響いた。

 すると、俄に周囲が騒がしくなり出した。


「リーダー! 上位種が現れました! E―6地点です! 」

「噂をすればなんとやら、か。よし、《アイゼン》と《バオファ》を向かわせろ」


 曜は部下と想われる女に指示を出すと、今度は側に立っていた愛に指示を出した。


「愛、|《神機頭脳》《パーソナルコンピューター》を頼む、優人君に見せてやってくれ」


 愛はコクリと頷くとパソコンのキーボードに置くように中空に手を置いた。

 すると彼女の手元に向こう側が透けて見える半透明のキーボードが現れ、それに呼応するかのように彼女の周りに四つの半透明なモニターのような物が現れた。

 その四つのモニターの一つには生活共同体の外であるとおもわれる場所に鷹の翼と上半身、ライオンの下半身を持った異形の怪物が写し出された。


「優人君、よく見ておくといいよ。これが魔獣だ」


 そして、もう一つのモニターには二人の女性が写っていた。

 一人は黒の髪を腰まで伸ばした淑やかそうな雰囲気の女性で、もう一人は金髪縦ロールの勝ち気そうな少女だった。

 その他の二つのモニターは真っ黒くなっていてなにも写っていなかった。


「魔獣《グリフォン》だ」


 黒髪の女性と金髪縦ロールの少女がグリフォンの下へ辿り着くと、二人は攻撃を開始した。

 まず金髪縦ロールがグリフォンに突撃し、その後ろに黒髪女性が付いていく。

 金髪縦ロールがグリフォンに向かって何かを投げたかと思うと、それはグリフォンの目の前で爆発した。

 グリフォンはその爆発をモロに受けてたたらを踏んで数歩後ずさると、ここぞとばかりに黒髪女性が地面から何らかの黒い粉を取り出すと、それを剣のような形にしてグリフォンの首へと振るった。

 するとグリフォンの首はさしたる抵抗もなく、サックリと切り落とされた。

 

「さて、君も見ていたよね」


 曜が僕の方を向いて話しかける。

 その言葉に僕がコクリと頷いたのを確認すると彼は話を続けた。


「さっきのが魔獣だ。協会がその存在を隠してはいるが故にその存在は一般に認知されていない。だが、確実に存在する。我々は魔獣から取れる素材を資源として、武器や食料としている。魔獣は異能力か魔獣素材の武器じゃないと倒すことができないのだ」


 要約すると、魔獣は協会が隠してるけど存在する。

 けど、どこから来るかは分からない。

 魔獣の肉体は食料や武器の素材となる。

 魔獣は異能力か魔獣素材の武器じゃないと倒すことができない。

 魔獣には、通常種、上位種、竜種の三種類がいる。

 と言うことらしい。


「それともう一つ、協会のやつらは能力者を捕らえて人体実験をしている。それを聞いた上で、君の返答を聞こうか、勧誘のね」


 協会が異能力者を拐って、人体実験をしている。

 等と言う話は到底信じられるものではなかったが、魔獣という存在を目の当たりにした以上その話にも一定の信用はできる。

 

「考えさせて、下さい」


 はっきり言って、自分に異能力があると言われても実感なんてわかない。

 それに、世間で悪とされているプロドティスだ。

 考えさせて、と言えただけでもましだろう。

 それから俺は自分の部屋に帰ってきた。

 いつものように枕元に小太刀が置いてあるのを確認して眠りにつく。

 この世界では自分の身は、自分で守るというのが常識だ。

 銃刀法違反なんてもの存在しないし、どこで誰が死んでも誰も気にしない。

 だからこの世界では、普通に他人を殺して食料を奪い取ったりなどということが普通にまかり通っている。

 だから自分でナイフ等といった護身用の武器を持っているのは不思議なことではない、ましてや寝るときに枕元に置いておくのは当然の事だ。



   †  †  †


 誰もが寝ているであろう真夜中、一人の男が自身の標的がいるマンションの一室を睨んでいた。

 男は、協会に所属する異能力者で協会からある能力者の捕縛、それが無理なら殺害を命じられている。

 男は二本の鉄製の棒をマンションの鍵に差し込み、カチャカチャとピッキングを慣行する。

 この時代においては鍵などは有ってないようなものだ。

 簡単に開けることができる。

 カチリ、と小さな音をたてて鍵が開いたのを確認すると、少し扉を開き、その隙間からスルリと体を滑り込ませ扉を閉める。

 気配を探り、どこに人がいるのかかくにんしてそこに向かう。

 気配を探って向かった先にいたのは、シーツにくるまって眠る一人の少年だった。

 間違いない、命令書に書かれていた似顔絵と特徴も一致する。

 速やかに命令を遂行しようとして懐から取り出したナイフを突き立てようと振り上げると、少年は布団から飛び起きて、枕元の小太刀を掴んで男から距離を取った。

 その事に少し驚きながらも、男は少年へ向かって距離を詰めていく。


   †  †  †


 僕は今、目の前の状況についていけていない。

 寝ていたら突然人が入ってきたので薄目を開けて様子を探っていたら、俺のところまで来た男がナイフを取り出して突き立てようと振り上げていたのだ。

 その事に驚いた僕は布団から飛び起きて枕元の小太刀を掴み取って男から距離を取った。

 すると男はナイフを片手に自分との距離を詰めてくる。

 慌てて小太刀を鞘から取り出して振るわれたナイフを受け止める。

 思った以上に目の前の男の力が強い。

 押し込まれそうになったところを小太刀を反らして後ろに受け流し、よろけた男の腰を蹴り飛ばす。

 床にぶつかりそうになった男は片手を床につき、飛び込み前転の要領で床を転がり即座に体制を建て直す。

 こちらに向き直った男は再度距離を詰めてくる。

 と思った次の瞬間、目の前から男の姿が消えて後ろに気配を感じる。

 脳で判断するよりも先に反射的に前に転がり男の攻撃を避ける。


 ーーこいつ、異能力者か!


 今さっきの一幕で男の正体に気づく。

 |《瞬間移動》《テレポート》、それが目の前の男の能力なのだろう。

 習熟した瞬間移動能力者は遠く離れたところに移動することも可能になる。

 わざわざ、鍵を開けて部屋に入ってきた事から考えるにこの男にそこまでの能力はないのだろう。

 そう判断する。

 そんなことを悠長に考えていると、不意に目の前の男が消えた。

 また移動したのだろう。

 どこから来るのか、と身構えていると右から男が現れてナイフを振るった。

 しかし男はナイフが俺に届く前に再びその姿を消し、今度は真上から襲いかかってきた。

 だが、またしても姿を消して目の前から現れた。

 次々に右、左、後ろ、真上、前、とどこからでも縦横無尽に現れる男に僕はついには、小太刀を弾き飛ばされてしまった。

 慌てて飛ばされた小太刀を拾おうとするもすでに遅く、首もとにナイフが突きつけられた。

 僕にナイフを突きつけた男は、冷たく言い放つ。


「協会からの命だ、一緒に来てもらおう。紫龍 優人」


 協会、その言葉の意味することは国際異能力者管理協会。

 つい先程、プロドティスのリーダー黒須 曜から話を聞いたばかりだった。

 曰く魔獣の存在を隠し、利益を独占している。

 曰く異能力者を拐い、人体実験をしている。

 魔獣の話は信用する。

 自分でもその存在を確認した。

 だがもう一方の、人体実験の話には首を傾げざるを得ない。

 それでも、今自分が措かれている状況を鑑みるにそれもあながち嘘ではないのではないか、そう思えてきた。

 とにもかくにも、黙って着いていくわけにはいかない。

 しかし男はそんな優人の様子に痺れを切らしたのか、地雷を踏み抜いた。


「お前の姉も(・・・・・)待っているぞ」


 一年前に突如として行方不明となった姉、その姉の存在が協会に与する目の前の男の口から聞かされた。

 何故、と考えるまでもなく体が動いていた。

 男の右足の甲を自分の足で思い切り踏みつけて、拘束が緩んだところを男の右腕と襟首を掴み、背負い投げる。

 受け身もとれず床に叩きつけられた男は肺の中の空気を一気に押し出され、空気を求めて喘いだ。


「ぐっ、かっはっ」


 苦しんでいる男の右腕を捻り上げて背面に固定しながら僕は男に問いかけた。


「何故、姉さんの事を知っている」


 自分でもビックリするほど低い、冷たい声が出た。

 しかし男は僕の問いかけに答えることはなく、冷静に返してきた。


「お前は、忘れているな。私はテレポーターだぞ? 」


 そう言うと男は僕の拘束から瞬間移動で抜け出して、目の前に立っていた。

 

 ーーくそっ! 姉さんの話が出て我を忘れていた……!


 恨むべきは数分前の自分だ。

 だが、今いくら後悔しても遅い。

 僕はナイフ片手に襲ってくる男の攻撃を必死に避けていた。

 小太刀は弾かれてしまっていて手元にない。

 頼りになるのは自分の身一つだ。

 左から振るわれたナイフを上体を反らして避け、右からの突くような一撃を男の手を右手で握り、左手で男の肘をそっと押して曲げて、右手を男の心臓目掛けて一気に押し込む。

 が、男は瞬間移動で僕の真後ろに移動するとナイフを首筋目掛けて横に振るってきた。

 回避が間に合わない。


 ーーでも、死にたく、ないっ!


 僕の心からの叫びに呼応するかのように、僕の右手から真っ黒い炎が現れた。

 男はその炎を見ると瞬時に後退した。

 それを見た僕はここぞとばかりに踏み込み、右手を振るう。

 ゴウッという音をたてて黒炎は男に迫る。

 男は更に後退し、窓からベランダへと出て更にそこから飛び降りた。

 僕も男を追ってベランダから飛び降りる。

 すると男は一瞬驚いた顔をした。

 僕は先に飛び降りた男に追い付くためにベランダの底面を蹴って更に加速する。


 ーー追い、ついたっ!


 僕は先に飛び降りていた男に追い付くとその右足を掴んだ。

 次の瞬間、男とその右足を掴んでいた僕は一緒に瞬間移動に巻き込まれマンションの外の地面に出た。

 僕はどこに出たのかを確認するよりも早く飛び起きて――男の足を掴んでいたためか、男も僕も寝転がった体勢だった――男に飛びかかる。

 瞬時に男を組敷くと黒炎が燃え盛っている右手をうつ伏せの男の頭を鷲掴みにした。

 すると黒炎が一瞬にして男の体を飲み込んだ。


「ギ、ギャァァァァーー」


 男は黒炎に燃やされながら断末魔の声をあげることもできず灰の一片たりとも残さず燃やし尽くされた。

 後に残ったのは初めて人を殺した少年とその右手で燃え盛る黒き炎だけだった。

 不思議と炎の熱さは感じなかった。

いつも読んでいただき、ありがとうございます


誤字や脱字などありましたら気軽に指摘してください


あ、あとキャラ紹介とかしようかなーと考えてます



参考までに


バオファ→中国語で爆発の意味

アイゼン→ドイツ語で鉄の意味


    

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