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反逆の煉獄魔人  作者: 十六夜・多々良
第Ⅱ章 反逆開始
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第1話 行き倒れ少女

 右も左も分からないようなそんな暗闇の中に僕は一人で立っていた。

 ここに居るとすごく不安で、怖くって、何故か焦ってしまう。 

 急がないと何か大切なものを失ってしまうような、そんな焦燥に駆られる。

 そんな不思議な場所。

 と、そこに一人の女性と研究者の様な格好をした男が二人現れた。

 その一人の女性は酷く憔悴しきった様子で、でも何かを心配するかの様な表情だった。

 二人の研究者の男は女性の両腕を掴み強引に連れていこうとしたが、女性が激しく抵抗しその腕を振りほどいた。

 女性が激しく抵抗したその時に見えたあの横顔は紛れもない姉さんの顔だった。

 気付けば僕は叫んでいた。


「姉さん!まってよ!ねぇ、姉さん!」


 すると僕の叫び声が聞こえたのか姉さんはこちらを向いた。

 しかしすぐに研究者の男に殴られまた両腕を掴まれて連れていかれようとしていた。


「まって!姉さんを連れていかないでよ!!」


 男たちは僕の声など聞こえないようで、僕の声を無視して姉さんを連れていこうとする。

 僕は堪らず姉さんの下に駆け寄ろうとした、が足が動かない。

 いや、足だけじゃない体その物が動かなかった。


「なんで!なんでだよ?!動けよ!」


 そうこうしているうちに姉さんは研究者の男たちに連れていかれてしまった。

 しかし姉さんは連れていかれる直前にこちらを振り向き、


「来ちゃ、駄目……」


 そう掠れる声で言ってきた。

 その言葉を最後に姉さんは研究者の男たちが車に乗せて連れていってしまった。


「まって……、まってよ!ねぇ!ねぇってば!姉さん!姉さん!――」





 西暦 2078年10月25日 

  東京生活共同体(アルヴィリエント)

  東一区 マンションの一室


 東京生活共同体(アルヴィリエント)の東一区にあるマンションの一室で一人の少年が寝ていた。

 その少年は悪夢でも見ているのかすごい量の汗をかき、魘されていた。


「っ!はぁはぁはぁ、夢か……」


 起きて自分の状態を確認するとすごい量の汗をかいていて、シャツが体に張り付いてほどよく筋肉のついた引き締まった体のラインを浮かび上がらせていた。


「これで何度目だろう」


 僕が悪夢を見るようになったのは姉さんがいなくなった一年前のある日からだった。

 それいらい高い確率でこの姉さんが連れていかれる悪夢を見るようになった。


「シャワーでも浴びるか……」


 僕は洗面所まで行って服を脱いで裸になった。

 チラリと鏡を見てみると、目の色がいつもは黒なのに今日はうっすら金色になっていた。


「なんだこれ、まるで異能力者アブノーマライザーじゃないか」


 しばらくすると金色だった目はだんだんと黒に戻っていきいつも通りの真っ黒になった。

 疑問に思いつつもシャワールームに入りシャワーを浴びる。

 昔は温めた水を容器に入れてそこに入る“風呂”なんて豪華な物もあったらしいが、今じゃ水は貴重資源だ。

 ましてやお湯なんて資源の無駄遣いである故に以っての外だ。

 そんな事を考えつつも手早くシャワーを浴びて部屋に戻り仕事着に着替えた。

 昔は少年少女が集まって勉強をする“学校”なるものがあったらしいが勉強などしてもこの世界では役に立たないので学校制度が廃止されて久しい。

 

「よし、行くか」


 準備を終えてマンションの部屋を出て鍵をかけ、仕事に向かう。

 僕の仕事は荷物を運んだりといった建設現場の手伝いだ。

 この世界では貨幣など無用の長物であるために労働などの仕事の対価としては食料が渡される。

 そうこうしているうちに仕事場について早速仕事を始める。

 建材を運び、建材を運び、また建材を運ぶ。

 昼食は蒸かした芋とうっすいスープだけだったがいつも通りの事なので気にせず食べる。

 こんな昼食でも食べないよりかはマシだ。

 昼食を食べたあとはまた建材を運ぶ、運ぶ、運ぶ。

 そうして夕方まで働き対価として貰えるのは芋数個だけだが、こんなものでも貰っておかないと食うに困る。




 


 同日 東一区 繁華街


 ここは東京生活共同体(アルヴィリエント)の中でも夕方になると賑わい始める唯一の繁華街だ。

 仕事場への行きと帰りは必ずここを通らなければならない。

 この世界では貨幣など役に立たないので物々交換が主流だ。

 とは言っても、置いてあるものなど高が知れている。

  固いくせに芋三個と交換のパンとか、パン二個と交換の少し濁った水とかだ。

 濁った水を飲むくらいなら蒸かした芋の方が断然いい。

 と、キョロキョロしながら歩いている――べつにキョドってる訳じゃない、何となくだ――と ふと路地裏に目がいった。

 路地裏というか路地裏で倒れてる少女にだ。

 別段行き倒れなどは珍しくもない、この世界では。

 だが、僕が目を留めたのは彼女の着ている服だ。

 彼女が着ているのはオレンジ色で露出の多い、でも仕立ての良さそうな綺麗な服だった。

 

「おぉーい、だいじょぶかー?」


 僕がそう呼び掛けると彼女はこちらを向いて


「お腹、空いた……」


 そう感情を感じさせない平坦な声で返答しまた倒れてしまった。

 僕が彼女を助けたのは打算からだった。

 こんなにいい服を着ているのならイイトコのお嬢様なんだろう。

 だから助けたら何か貰えるのでは?

 そう考えるのは、この世界では致し方ないことだろう。

 見るからに厄介事の匂いがプンプンする彼女には近づかないという見方もあるが、僕は独り暮らしだから別段気にしない。

この世界では芋が主食ですね。

蒸かしたりして食べます。


サシャみたいだなーwww


あー、安納いも食べたいなーwww

食べたことないですけどあれってすごく甘いんですよねー?ww

食べたいなーwwwwww


いつも読んでいただきありがとうございます。


次の投稿は明日11/24(月)の予定です。


誤字や脱字などありましたら気軽に指摘してください!。www



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