魔法使い探します
[ 第二 魔法使い探します ]
「はぁ...まったく、魔法使いって言っても信じてくれる人がいない限り無理なんだよ、もー」
積み重なる本の山に埋もれながら、私は一人でため息をつく。
マギック・ショップを経営してから早2年、未だに準魔法使いは3人程度、普通なら2年もあれば
一流の純血魔法使いならば5人はいけるだろう。
まったくもって、使えない純血魔法使いなのだろう、毎日自己嫌悪に陥る。
「てんちょー、お客さんだよぉ多分依頼かなぁー」
語尾をウザったらしく伸ばすのは、私の第一準魔法使い。
初めて私が作り、育てた魔法使いだ。
黒柳気嗣、女みたいな名前だけど、正真正銘の男である。
見た目は、前髪が片目を隠していてよくわからないが、日本では一応イケメンの類に入るのだろう。
黒魔法の専門で、純血と同じくらいの力を持つ、意外とすごい人間。
「あふぅ、もう無理、つか誰?リストには載ってない気が漂ってんだけど」
「多分、北の第5魔女の準魔法使いかなぁ?ホウキがまだ素朴だから、見習いだと思うんだけどぉ」
「はぁ、またアイツが差し出した娘ねぇ....」
北の第5魔女とは、アリス・キャメロットである。
魔女一家の名門であり、傲慢・馬鹿・阿呆・糞野郎の四拍子の天下の美少女である。
それでも実力は確かで、1年もあれば3人は育てることができるだろう。
それぞれ、東西南北には、第10までの魔女がいる。
数字ごとに階級があり、1~5までは、一流てゆうか天才、6~8がまぁ強い魔法使い
そして9・10は別世界、もう本当に強い。
私は一応東の魔女第4の階級を持っているけども、それは家が家だから。
本当はそれほど実力がない...あぁもう自己嫌悪乙。
「はいはい、今行くから、見習いちゃんをリビングに案内してー」
「りょうかいぃー」
私は「うっとこしょ」と言いながら本の山から体を引きずり出す。
これでノンストップ徹夜2日目である。死にそうだ、いや死ぬ。
死にそうになりながら私は書斎から身を気力で引きずり出し、見習いちゃんの元までいく。
「あ、あの、初めまして、私アリス様の第4準魔法使いのマリア・ロードと申します」
深々と私にお辞儀をし、顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。
あぁ、可愛い、癒しだ。
「えっと、取り敢えずそこ座って、帽子脱いで」
私は指を何回か横に動かし、帽子とホウキを横の方へ置いておく。
「わぁ、本当に魔法使いだ、すんごぉぉい!」
興奮したように、目をキラキラさせて私の方を見た。
これですごかったらあんたの師匠さんはもっとすごいわよ。と心の中でぼやく。
「初めまして、私は東の第4魔女。よろしくね」
「っ!よ、よろしくお願いしますッ。えっとなんてお呼びしたら?」
顔を営業スマイルで片手を差し出し、握手をする。
うん、まぁまぁの魔力、流石アリスのお弟子さんね魔力がそこらへんのものと違う。
「私は東って呼んでね、一応これが通り名だから」
「あッ東さんですね!」
「うん、よろしく。...で、ご用件は何?マリアが私の本をわざわざ借りに来たようには見えないんだけども、どうせ怪奇現象とか、魔法探しとかなんだろうけど」
お弟子さんが来た時点で大抵の事はわかった。
基本的にマリアは私の本や地図、弟子を借りに来るときは自分から来るか、手紙を寄越す。
今回は弟子がわざわざ来たわけだから、マリアが何らかによって忙しいんだと私は見る。
「そ、そうなんです。マリア様が北の第1魔女と一緒に魔法探ししたきりもう1ヶ月帰ってこないんですしかも、手紙も、連絡もよこさないんですッ!こんなこと一回もなかったのに」
お弟子さんが涙目、てゆうか号泣しながら私の目を凝視する。
「マリアが北魔女と一緒に行ったのなら普通は1週間もかからず魔法を見つけ出しているはず。
帰ってこないなら箒が壊れたか、新しい男を見つけたか、連絡が来ないのなら、魔力がなんらかにより衰えているか。最悪の場合、古代の呪術師と出会ってしまったか...」
「そんなッ!マリア様の魔力が衰えるなんてっありえません!第一、北の魔女もいるんでょう?」
「北の魔女は青魔法よ、サポートしかできない上に連絡や、防御、治癒だってできないの」
「そ、そんなぁ」
お弟子さんがそのままボスンとソファーに座り込み、嗚咽を漏らす。
「はぁ、わかったわこっちで何とかしてみるから、ちょっとばかし待ってて」
私は指をクイッと自分の方ヘ曲げる。
そうすると、奥の方から6冊の古書がやってくる。
「キユ、4.79段の320冊目、左下に押して」
「りょうかいでぇーすッ」
気嗣がホウキに乗り、高いところの段まで上る。
さっき言った場所のとこまで行くと、ちょっとだけ左下に押す。
そうすると、周りの本が落ち、中から大量の地図が出てくる。
「その紺色で、紐が白と黒の出して、うんでもって本片付けて」
「人使い荒いんだからぁー、仕方がないなぁ」
「ほい」と言いながら私の方まで、地図を投げる。
まったく、古代の地図なんだから大切に扱って欲しいものだ、自分が言えないけど。
「それは?」
さっきまで泣いていたお弟子さんが興味津々に聞いてきた。
さっきまで本当にないてたんだよね?
「これは特定の人だけ使える地図なの、探したいものを使う人の何かを捧げることによって、
探したいものを見つけられる。基本的には普通に地図として使うものなのだけれど、
私の一族はこれを魔法使い探しに使ってたの、魔法使いが減ったから、これでなるべく同族を探そうとしてたんだけど、いつしかこれの魔力が大きくなっちゃてね、人の命まで食い始めるから、私が引き継いで、今のところ静かなもんよ」
「え!ってことはこれでアリス様を見つけられるんですか?」
「まぁ、私の捧げ物が気に入ればの話だけど、」
私はポケットバックからナイフを取り出し、束ねていた髪の毛を切る。
あー数年間伸ばしていた、オレンジの髪の毛....気に入ってたんだけどもなぁ
それを地図を束ねていた紐で結び、地図の上に置く。
「よかった、気に入ったみたいね」
数秒経つと髪の毛がチリチリと燃えて、地図に溶け込む。
すると、地図の中に小さい赤い点が浮かび上がってくる。
「こりゃぁ、瀕死状態だね、魔物にでもあったのかな。しかたがないなー、助けに行くかぁ」
「僕もいこっかぁー?」
「よろしく、ついでに海と海も呼んでおいてね」
「りょうかいでぇーす」
私は奥からマントと帽子を取り出し、着る。
「さぁ、行くよお弟子さん」