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超有名アイドルの連鎖 ―AN OVERLY FAMOUS IDOL’S CHAIN―

※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、この作品におけるフィクション扱いでお願いします。


※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。


※小説家になろうへ移植する際に一部セリフを変更している個所があります。


※かなりのメタネタが含まれておりますので、閲覧の際はご注意ください。

西暦2014年7月3日午後7時、西新井にあるアンテナショップで見知らぬ男性2人と瀬川春香せがわ・はるかが何かの話をしていた。

「ご注文はお決まりですか?」

ウエイトレスの女性が現れ、瀬川に注文を聞く。

「コーヒーと、中華春雨サンド、チョコ焼き、ショートサイズピザをお願い」

夕飯を食べていないのかは不明だが、量が量だけに男性2人は驚いていた。


「それはそうと、ここ最近の超有名アイドルについてどう思う?」

メニューが届くまでの間は瀬川の方も暇なので、彼ら2人に何かを聞こうと思っていた。

「最近では、ラクシュミが始球式で出演するというプロ野球のチケットが10分も立たないうちに即日完売と言うのがあったな。球団自体は人気もいまひとつなのに、どんな魔法を使ったのか?」

「その辺りになると、超有名アイドル商法と言うよりは抱き合わせ商法に近い。抱き合わせに関しては数十年前には廃止されたはずなのに…まだ続いていたのか」

「ここまでの違法スレスレという商法を展開している超有名アイドルが日本製造業をけん引するという記事を見ると、超有名アイドルに便乗しなければ自分達は生き残れない的な印象を受ける」

「それだけ、日本産業を活性化させるアイディアが枯渇してしまっている証拠と見て間違いないだろう。あるいは、超有名アイドルが金で買収して意図的に超有名アイドル以外をバッシングし、超有名アイドルは神と言う記事を量産させているとか」

「問題となっているのはそれだけではない。超有名アイドルを神にしようと言う話は他の世界線でも言及されているらしいと言う事だ」

「アカシックレコードによれば、超有名アイドル商法のコピペで一兆円売れたと言う事が話題になり、日本の産業界全てが超有名アイドルに侵略された世界もあったらしい。現実の日本でも、いずれおきそうな予感がするだけに対岸の火事とは言えない―」

「さすがに玩具の指輪を『超有名アイドルの○○が愛用した物』といって高額で売りつける詐欺まがいの事もあったが、アレと同じような物なのか? 超有名アイドル商法のコピペは…」

そんな話を瀬川が聞いている間に、コーヒーとチョコ焼き、中華春雨サンドが届いた。ピザの方は焼いている途中なので、もう少し時間がかかるようだ。

「どちらにしても、超有名アイドルが日本をどんな風に思っているか気になる所ね。下手をすれば、世界進出の為の踏み台とか言い出す可能性は少ないと思うけど―」

コーヒーに手を付けながら、瀬川が2人の会話に参加する。どうやら、彼女自身も超有名アイドル商法には思う所があるようだ。


「超有名アイドルは自分達が利益を出せれば、その後に事件が起ころうと全力でスルーという信じられないような行動を取るからな。仮にも会社の対応がそれでいいのか?」

「彼らは結局、どの国のどの企業よりも利益を優先させ、銀河一の大企業にもなって全ての世界を牛耳ろうと考えているのだろう。キサラギが超有名アイドルと戦い続ける宿命にあるのは、それが由来しているのかもしれない」

「しかし、キサラギは超有名アイドルを根絶して、音楽ゲームの楽曲などを新たなメインにするというやり方では同じ事の繰り返しになる…と考えているらしい」

「キサラギが望むのは、超有名アイドル商法の根絶であって、アイドルその物を根絶する訳ではない。しかし、最近のネットを見ていると超有名アイドル全てを根絶させると勘違いしているユーザーの出現が、炎上等に拍車をかけているように思える」

「ネットでは超有名アイドルよりもアニメやゲーム等のアイドルが盛り上がりつつある。つまり、それが意味する物とは超有名アイドルの拝金主義の崩壊と見るべきか―」

「そんな超有名アイドルが最終的に掲げる目的は、アニメやゲームのアイドルに対抗する為に不老不死を持ちだそうとしている事だ」

2人の会話を聞いていく内に、もしかして…という言葉を瀬川は聞いた。3次元アイドルで不老不死という発想はどう考えてもおかしい。

「その考え自体は、幻で終わったと言う話を聞いた事があるわ。実現させる事が程遠いような不老不死を、どうやって―」

瀬川の問いに、鷲のワッペンを背広の肩に付けた男性の一人は答える。

「確かに、不老不死と言う物を実践しようとすると色々な法律の壁が存在して不可能だ。しかし、彼らが疑似的な不老不死を実践しようと考えているのは事実らしい」

そして、彼は意外な単語を口にした。


「今、ネット上で流行しているARアイドル。その技術を利用して永久保存化計画をしているという噂だ」


その一方で、ニュースサイトではあるニュースがネット上を駆け巡っていた。

【グループ50等の超有名アイドルが同盟を結ぶ】

記事によると、ラクシュミやグループ50、ラミア等のアイドルグループが同盟を結んでアイドル復権の為に協力体制を結ぶと言う物だった。しかし、ネット上では裏事情があるのでは…と言う話になっていた。


#####


シーン5:北千住駅近辺・アカシックレコードサーガフィールド


西暦2014年7月4日午前10時10分、北千住駅の近くにあるアカシックレコードサーガフィールドでは―。

「遂に向こうから動き出したと言う事か―」

蛇腹剣を構え、戦闘態勢に入っていたのはリニア=ゼロである。そして、その相方は意外な事にアークエンジェルである。

「いずれ、こうなるだろうとは思っていた。しかし、向こうの動きが早いのには別の事情があるのかもしれない」

アークエンジェルは今回の超有名アイドルによる大規模な行動には裏があるのでは…と考えていた。


同刻、西新井のアカシックフィールドサーガフィールドでも同じ現象が起きていた。

「超有名アイドルとキサラギの争いを再現しているとでもいうのか?」

背広の肩に鷲のワッペンをした男性が、その光景を見て驚いていた。昨日の雑談が現実となっていたのである。この時のマッチングは…。

《ラクシュミF ラミアB VS プレイヤーA プレイヤーB》

超有名アイドル以外のプレイヤーが初心者ランクで、一方で超有名アイドルの方は中級者ランクである。運営が禁止している初心者狩りにも当てはまるのだが、観客の方が止めるような気配は一切ない。

「誰も、この超有名アイドルの暴走を止められないのか?」

彼は思った。超有名アイドルを止められるだけの力があれば…と。その為にはアカシックバーストを使用可能なARウェポンを手に入れる必要があった。

「止める方法はアカシックレコードサーガで勝つ事には限らない。手段は探せば他にもある」

彼の前に現れたのは、ジークフリートだった。ここ最近では試合に参戦していなかったのは、ARミュージックの方に集中していたかららしい。


同日午前10時30分、梅島にあるエインフェリアのビルでは…。

「予想通りの展開だ。超有名アイドルが人々の話題となっている。これで、近い内にアイドル復活も現実味を帯びてくる」

会議室とは別の放送機材等が置いてある一室でコアラの着ぐるみをした人物が、各地で行われているアカシックレコードサーガの中継を見ていた。

「日本には超有名アイドル以外は必要ないのだ! やがては地球全土のコンテンツを超有名アイドルオンリーにし、全世界だけではなく現実世界をも超有名アイドル天下にする。これによって、無限の印税を手に入れる―」

コアラの着ぐるみの影響で表情を知ることはできないが、今の状況は彼にとっては始まりの一歩だと思っているのだろう。

「やがて、戦争を続ける国々は超有名アイドル進出に大量の資金を使い、戦争を続けられなくなる。これによって、超有名アイドルが全ての国から戦争をなくした英雄として永遠に語り継がれる事になる。そう、日本の生み出した超有名アイドルこそ、アカシックレコードに永遠に刻まれる事になる神話となるのだ」

次の瞬間には部屋の入口が開き、誰かが入って来たようにも思えた。しかし、コアラの着ぐるみは気付いていない。

「我々が実行する事は、戦争やテロではない! 超有名アイドルによる市場介入だ! これによって、超有名アイドルは巨万の富を得て、日本は経済大国1位になる事も出来る」

「なるほど。政治家と裏で交渉をしていると思ったら、こういう事だったのか―」

「誰だ!!」

別人の一言を聞き、ようやくコアラの着ぐるみは侵入者が存在した事に気付いた。


「あなたのやり方では超有名アイドルとキサラギの争いを広げるだけだ。超有名アイドルが神である事をマインドコントロールするとは…何処までもアイドルの存在する意味を間違えている!」

侵入者の正体、それはセラフィムだったのである。虎の覆面にとっては客人扱いだったが、拝金主義を薦める一派にとっては邪魔な存在でもあった。

「お前もアイドル復権を別ジャンルが普及する為に利用しようと考えている。それと何処に違いがあると言うのだ?」

コアラの着ぐるみが指をパチンと鳴らすと、入口には大勢の着ぐるみを着た構成員が現れ、入口をふさいだ。

「違いがあるとすれば、他ジャンルを排除して超有名アイドルを唯一神に仕立て、超有名アイドル以外を絶対悪と考えているのが、お前達の掲げる拝金主義型の超有名アイドルだ。アイドルに悪意を持たせ―」

セラフィムの喋っている途中だが、構成員が予告なしに襲い掛かって来たのである。しかも、手には拳銃を持っている。

「超有名アイドル以外のコンテンツは全てなくなればいい! 超有名アイドルがなくなったら、我々には生きる希望が失われると同じだ!」

シマウマの覆面をした人物が拳銃の引き金を引いたが、銃弾が発射される事もなければ銃声が鳴り響く事もなかった。

「どんなものであろうと、始まりがあれば終わりもある。終わりがない物語は苦痛だ―。超有名アイドルとキサラギの争いも、そう言った意味では終わりがない物語と同じものと思っている。だからこそ、超有名アイドル商法に潜む違法性を告発し、彼らに思い知らせる事が重要なのだ!」

そして、セラフィムは訴える。超有名アイドル商法は終わりのない物語と同じであり、これが永遠に繰り返されるのは苦痛である…と。更には、超有名アイドル商法を推奨する日本産業界にも苦言を呈した。

「もう一度言う。日本侵略という方法では、何時まで経ってもキサラギに勝てるはずはない。キサラギの影響を受ける事のない、全く別の手段でアイドルを復権する方が先だ―」

セラフィムは、以前に似たような場で言った台詞をもう一度言った。世界征服や金の力による侵略等ではアイドルの復権は何時まで経っても不可能である…と彼は再び警告する。

「我々はアイドルで儲けなければいけないのだ! 日本を救う為にも必要不可欠なのだ。超有名アイドルが税収不足を解消し、増税を市民に強いる事もなくなる―」

「消費税増税反対の勢力を取り込む為にも、その他の反対勢力を取り込む為にも超有名アイドルは欠かせない」

「超有名アイドルなしでは日本は経済等で大きく後れを取る事になる!」

「超有名アイドル以外のコンテンツでは、消費税増税で一気に衰退する事になる。しかし、政治家と芸能事務所が手を組んで海外へ売り込もうと積極的な超有名アイドル商法ならば―」

「日本は超有名アイドルなしでは生きてはいけないのだ! 彼女達の存在が多くの奇跡を生み出し、日本に平和を示してくれる」

周囲の声を聞いたセラフィムは、突然笑い出した。その様子を見た構成員は驚く者もいれば、どうして超有名アイドルを推し進める事が犯罪なのかと考える者もいた。


「お前達の言う超有名アイドルの存在理由は『金の為』にしか過ぎない。それは、本当の意味でアイドルを愛しているとは言えないだろう―」

セラフィムが指を鳴らすと、周辺のモニターには大量とも言える警察車両と逮捕される超有名アイドルの姿があった。

「どういう事だ? 我々の計画が見破られていたと言うのか」

コアラの着ぐるみは思わず声を上げた。当初の作戦では、超有名アイドルがアカシックレコードサーガを制圧すると言う物だったのだが…。

「残念だが、お前のような古いやり方にこだわる人物には、エインフェリアを任せられないと言う指示だ。もうすぐ、この事務所にも警察が来る頃だろう」

その一言を残して、セラフィムの姿は消えた。どうやら、彼はホログラフィーのような物を使用していたらしい。


###


同日午前11時、北千住にあるARランナーズ専用の駐車場には警察のパトカーや車両等が列を作るかのように縦列駐車されていた。本来であればアカシックレコードサーガ用の駐車場があれば、そちらに止めるべきなのだが…万社と言う状況で止める事が出来なかった。

「警察?」

「まさか、アカシックレコードサーガの違法な賭博バトルでも摘発されたのか?」

「賭博バトルは不可能だろう。運営も振り込め詐欺や出会い系、賭博などに悪用される事は既に把握済みだ。それとは別の目的でパトカーが止まっていると考えた方がいい」

ギャラリーの方もパトカーを見て驚いている様子だった。


同刻、パトカーの止まっていない西新井のアカシックレコードサーガフィールドでは…。

「そう言う事か。全てはシナリオ通りだった」

既に40人近い超有名アイドルを撃破していたジークフリートがつぶやく。全ては、ある人物によって仕組まれていた事だったのだ。

【緊急速報:ラクシュミ、ラミア、グループ50等のアイドルグループが超有名アイドル規制法案を含めた複数に違反したとして一斉逮捕】

ジークフリートは、ARブレスでニュースサイトの速報記事を見ていた。どうやら、未成年を含めて大量の超有名アイドルが複数の法律に違反しているとして逮捕されたとの事だが…?

「どこまでがシナリオ通りなのかは分からない。こちらが分かる事は、非常に限られている」

ニュースサイトの速報を確かめた後、ジークフリートは早々と切り上げて別の場所へと向かった。


同日午前12時、アカシックレコードサーガに関しては触れられてはいなかったが、大規模にわたる超有名アイドル以外を追放しようと言う運動を行おうと考えていた人物が大量に逮捕されたと言うニュースが報道されていた。

【まさか、別の大物が釣りあげられる事になるとは…】

【超有名アイドルには大量の政治家が資金援助をしていると言う噂を週刊誌が報道していたが、それが本当だったとは】

【どうやら、海外と手を結んで超有名アイドル以外のコンテンツを全て黒歴史にしようという気配もする】

【逮捕された人物には、政治家や芸能事務所関係者もいるらしい】

【それに関係していた組織にも家宅捜索が入っている。エインフェリアもニュースにはなっていないが、対象となっている話だ】

【噂によると、諸外国と手を組んで超有名アイドル以外のコンテンツを地球上から黒歴史にしようという話もある。複数の政治家が超有名アイドルの芸能事務所から資金提供を受けていたと言う話を考えると、つじつまが合う】

【超有名アイドルは単純に金儲けの為に存在していると言っても過言ではない。そして、彼らからは感動を得る事は難しい】

【金儲けだけを目的に作られたアイドルと、感動を与える為に色々と時間をかけたアイドルとではケタが違う。同じ値段でCDが売られていたら、後者を取るだろう】

【しかし、超有名アイドル規制法案が出来る前は超有名アイドルのシングルが1000円に対し、超有名アイドル以外が2000円と言う世界もあったらしい】

【何処の世界でも超有名アイドルが優遇され、全ての世界に置いて神となる時代が来るのか?】

ネット上のタイムラインでも、このニュースを受けて超有名アイドルが神になる世界に対して反対意見が浮上していた。


【この流れ、キサラギが本当に望んでいる物なのか?】

【確かに。超有名アイドルを叩けば日本経済が変わるのか…。それでは、炎上ブログやアフィ系まとめサイトとやっている事に変わりがない】

【キサラギがアカシックレコードに残したメッセージ、それを解読出来れば超有名アイドルとキサラギの争いを止める事も可能になるか?】

【以前の争いではキサラギ側が勝利をおさめたが、向こうにとっても敗北に近いという結果だった。超有名アイドルを衰退させただけでは駄目なのか】

【キサラギにとっては、超有名アイドルが拝金主義から方向転換をする事…それが勝利と言う事になるらしい】

【その可能性を秘めている物がアカシックレコードなのか?】

【しかし、アカシックレコードを悪用しようと考えている勢力がいないとは断言できない。その為に、彼らはアカシックレコードを封印した】

【封印された間にも密かにアカシックレコードは起動していた。さまざまな世界線の情報を収集し続け、その情報を―】

一方でキサラギの目的は超有名アイドルを黒歴史にする事ではなく、もっと別の場所にあると考えている人物もいた。


更に違うタイムラインでは、こんな話もあった。

【超有名アイドルの行っている事が自分達には対岸の火事と思っていると、予想外の所で痛い目を見る事になる】

【疑心暗鬼の叩きあいの末、炎上ブログやアフィ系サイトがもうかると言う仕組みなのかもしれない】

【超有名アイドルとキサラギの争いでも、炎上ブログやアフィ系サイト等が1兆円もうかったという話、超有名アイドルのステマで月に1億円もうかると言う迷惑メール詐欺もあった】

【進化したインターネットが生み出した物が、超有名アイドルとキサラギの争いであり、それに便乗して儲けようと考えている悪意なのかもしれない】

【どんな世界であれ、自分が正義でそれ以外が悪と決め付け―】

【結局、自分が金をもうけ、目立ちたいが為に正義と悪を勝手に作り出し、そこから広がったのが一連の争いだった】

【競う事自体は決して悪い事ではない。しかし、悪意に満ちた相手の叩きあいを行うような状況で行われるのはフェアと言えるのかどうか疑問が残る】

【このような叩きあいで自分の正義を示すようなやり方は、今に始まった事ではない。情報戦は、かなりの昔から展開されていた】

【情報戦が高度化していくにつれて、超有名アイドルの連鎖とも言うべき現象が続いていくのだろうか?】


###


同日午後1時、竹ノ塚に移動したリニア=ゼロがフィールドで無名プレイヤーと戦っていた。北千住の方は警察が調査中との事で一時的に使用不可能になっている為、北千住から移動を余儀なくされたプレイヤーも何人かいる。

「上位ランカーやヘビープレイヤー等の知らない所で、アカシックレコードサーガに異変が起きているような気がする」

彼女は運営や上位ランカー、ヘビープレイヤー等が置き去りにされた場所で行われている超有名アイドル絡みの事件に関して、何か別の勢力が絡んでいるのではないかと思った。

「別の勢力が何かは分からない。一つだけ確かなのはアーカイヴが関係している事だけ―」

試合の終わったリニアはシャワーを浴びる為にアンテナショップのスペシャルルームへと入った。そして、彼女はARスーツを脱ぎ、裸でシャワーを浴びる。

「超有名アイドル絡みは今に始まった事じゃない。規制法案の一件があった時に言われていた」

適度な温度のシャワーを浴びて汗を流すリニア。そして、備え付けのボディーソープを泡立てる。

「この世界もARゲームの一部なのか、それとも誰かが考えた架空戦記の一つなのか―」

身体を洗った後には、こちらも備え付けのシャンプーで頭を洗う。ちなみに、このシャワー施設はARゲームプレイヤーであれば無料で使用する事が出来る。


同日午後1時30分、秋葉原にはアーカイヴの姿があった。彼のトレードマークにもなった黒マントとARウェポンのヴァーミリオンは健在である事をアピールしているようでもあった。

「結局、超有名アイドルとキサラギの争いを回避する事は出来なかった」

試合を終えたアーカイヴはつぶやく。回避可能だった争いを、結局は回避できなかった事を悔しがっていた。そして、彼の前に姿を見せたのは何と西雲七海にしぐも・ななみだった。

「自分も、この争いを回避できなかった事は悔しい! しかし、今は起こってしまった事を悔やんでいる時間はないはず!」

西雲はアーカイヴに出来る事をするべき…と応援をする。そして、2人は衝撃的なマッチングを目の当たりにする。


《アーカイヴ 西雲七海VSマーメイドA 隅田川浴衣少女隊B》


このマッチングには何かの意図を感じるような気配を感じていた。相手は、現在大量に逮捕者が出ている超有名アイドルグループとは違う別のネットアイドルグループである。

「私達がラクシュミやグループ50に変わる、日本を導くアイドルグループになる!」

人魚を思わせるようなARスーツを着たマーメイドのメンバーがARスピアをアーカイヴの方へと向ける。しかし、アーカイヴが表情を変えるような気配はない。

「覚悟はいいか? この代償は高くつくぞ!」

そして、アーカイヴはヴァーミリオンを構え、更には即座にアカシックバーストを発動させる。

【開始10秒経過しない状態でアカシックバーストが使用出来るのか?】

【処刑用BGMの用意だ!】

【しかし、西雲もエクシアのアカシックバーストを使えるはずだが、使用する気配がない。時間差で使うのか、それとも…?】

【アカシックバーストって時間制限があるのか?】

【1試合の時間は3分間。アカシックバーストは30秒しか発動できないと言う話がある。もしかすると…】

【考えて欲しい。西雲とアーカイヴは同じアカシックバーストを使えるARウェポンを持っているが、連携プレーを得意としているかどうかは疑問に残る】

【マッチング自体が初心者狩りや談合プレイを防止する為に、外部からの調整依頼を断っている位のシロモノ―】

タイムラインでは西雲がエクシアを使いこなせるのか、マッチングが操作されていないか等が話題になっていた。


試合の方は特に急展開と言う訳ではなく、アーカイヴが早期にアカシックバーストを発動後にマーメイドを撃破した。しかし、マーメイドのコストは1500と言う事ですぐに復帰してくる。

「エクシアを持つ事の意味―」

西雲は改めて考えてた。エクシアの適格者になった事、アカシックレコードに書かれているメッセージ、超有名アイドルとキサラギの争い…。

「エクシア! 私に力を―アカシックバースト!」

これが、自分の意思で初めてアカシックバーストを発動した瞬間でもあった。今までのアカシックバーストはアーカイヴ等のように自発的ではなく、超有名アイドルとのマッチング時に強制発動していた。しかし、この時に限っては西雲の意思がこもったアカシックバーストを発動させたのである。

【処刑用BGMの―】

【まさか、自発的にアカシックバーストを発動できるようになるとは驚いた】

【西雲の場合は超有名アイドルから身を守るかのような発動方法だった。しかし、今回に限っては違うような気配がする】

【これも超有名アイドルとキサラギの争いがもたらした物なのか?】

タイムラインでは色々な動くが見られる中、西雲が自発的にエクシアを使用した事は衝撃的な出来事らしい。


「超有名アイドルに悪意を持って戦っても、同じ事を繰り返し、やがてはコンテンツ界だけではなくあらゆる産業を衰退させる恐れがある」

超高速に移動する西雲が、エクシアを手にマーメイドを連続コンボで即ノックアウトにする。しかし、コスト1500も影響してすぐに復活してしまう。隅田川浴衣少女隊の方はアーカイヴの方が相手をしている。

「私達が出来る事、それはこの世界を食い物にしようとしている歪みを見つけ、それを正す事!」

3度復活したマーメイドをエクシアの超高速とも言えるブレードの斬撃とビームガンの速射で再び即ノックアウトに。これで4500のTPを削った事になる。しかし、残り時間は1分30秒…。

「炎上ブログ、アフィリエイト系まとめサイト、悪意あるファン、それらとも違う勢力…それは!」

エクシアの斬撃が、4度マーメイドに襲い掛かる。そして、削られたTPは6000となり、試合の方は西雲とアーカイヴタッグが勝利を収めた。

「世界を食い物にしようと考えている存在、それは第4勢力!」

西雲は宣言する。自分達が世界の歪みと考えている物、それはアカシックレコード等を通じて流れてくる第4勢力である。

【第4勢力って何だ?】

【もしかすると、この文章を読んでいる人物かもしれない】

【このタイムラインなら、自分達も読める。我々も第4者の仲間入りなのか?】

【そうじゃない。世界線にも《架空と現実の狭間で》という文章があっただろう。おそらくは…】

【まさか、《現実の世界》でこのタイムラインを見ている人物の事か?】

【そこまで言及しているのかは分からないが、この世界が何者かの介入によって本来の世界とは違う可能性を持ってしまった事も―】

(中略)

【アカシックレコードでも、第4の壁やメタ発言に代表される発言やニュースは存在している。もしかすると、超有名アイドルとキサラギの争いの正体は―】

タイムライン上では第4の勢力に関する議論が10分近くは続いていた。この発言だけで5000近いコメントが寄せられたのである。


###


同日午後3時、予想外の人物が葛西で試合を行っていたのである。


《セイレーン 隅田川浴衣少女隊D VS セラフィム スカイ=ゼロ》


「エインフェリアは壊滅寸前だが…お前の行動を黙認する程、こちらも人間が出来ていない。片づけさせてもらう!」

中世ヨーロッパを思わせる甲冑デザインのARスーツを装備しているのは、セイレーンと言う男性プレイヤーである。彼はエインフェリアのやり方には反対していたのだが、それ以上に納得できないのはセラフィムの存在だった。

「私もあなたのやり方には賛同しかねます。『拝金主義者が改悪した』超有名アイドル規制法案を変える為だけに、超有名アイドルが他のコンテンツを消滅させる事になると言う偽情報をばらまき、更には矛先を超有名アイドルとタイアップした企業やアニメ等にも被害を拡大させ、最終的にはネット上のつぶやき等も超有名アイドルバッシングに向ける為に仕向けた―」

隅田川浴衣少女隊のメンバーである別の女性もセラフィムのやり方には反対の意思を示していた。

「しかし、拝金主義者たちは逮捕され、エインフェリアの壊滅も時間の問題―」

セラフィムはARスーツではなく、ロボットとも言えるようなARフレームと言うマシンを使用している。そして、彼の両目は青色だが、ARバイザー等を使用しない代わりに目の色が変化しているような気配である。

「奴らのやり方は他の世界にも歪みを持ちこむ。何度も悲劇を繰り返し、その悲しみで世界を破滅させる訳にはいかなかった!」

黒マントに異形の覆面、黒のARスーツを着たスカイ=ゼロと言う人物。体系的には男性を思わせるのだが、声もセラフィムと同じ…これにはセイレーンも違和感を持つ。

「倒せば、全てが分かる!」

そして、試合の方が始まった。


【まさか、あの対決になるとは予想外だった】

【あのスカイ=ゼロと言う人物よりも、セラフィムの方が気になる】

【超有名アイドルバッシングとか言っていたな。一体、どういう事なんだ?】

【そう言えば、アカシックレコードサーガが正式稼働する前に超有名アイドル絡みで愉快犯やなりすましユーザーが続出した事件があったな】

【あれはアカシックレコードサーガもARゲームも関係ないからスルーしていたが…?】

【元をただせば、超有名アイドル絡みもアカシックレコードを経由した物だった。もしかすると、ARゲームの元原作もアカシックレコードにあるのかもしれない】

タイムラインでは、試合の実況を差し置いてセラフィムの発言や先行稼働時に起こっていた事件に関しての発言がメインになっていた。


「所詮、エインフェリアのやっている事は夢物語にすぎない。そして、世界を導くのは1組のアイドルではない。そんな事は分かっているはずなんだ―」

セラフィムは何かに苦悩しているような状態だった。そして、葛西を後にして秋葉原へと答えを求めて急行した。


「セラフィムも苦しんでいるようだね。でも、超有名アイドルでは富裕層やアイドルファンしか救えない。日本を救うには、根本的な所から正す必要がある」

スカイ=ゼロの正体は、元エインフェリア構成員のロストノートだった。身長163センチ、若干の細身、黒のショートヘア、左手には黒のリストバンドをしている。メガネは、今回に限ってはかけていない。

「アイドルと言う偶像崇拝自体、日本には必要ではないと言う事を思い知らせてあげるよ」

そして、彼も電車で秋葉原へと向かった。

【これは大変な事になった―】

【果たして、どんな結末が待っているのか?】

【第4勢力のタイムラインを見た。あの発言は本当なのか気になる】

【セラフィムは第4勢力に該当するのか分からないが、彼が超有名アイドル商法に致命的な欠陥がある事を見抜いていた】

【超有名アイドル商法は税収的な部分では良いのかもしれないが、それ以外の部分では不満や欠点が多すぎる】

【儲かれば良いという芸能事務所の主張は無理があるだろう】

【時代に応じてアイドルも変化していったが、超有名アイドルに代表される存在は海外からも批判が相次いでいると言う情報もある】

タイムラインは第4勢力等に関しての話題がメインだったが、それとは別に…。


【繰り返される連鎖、それを断ち切れる存在は現れるのか?】

この一文に対する反響のコメントは1万を超えていた。繰り返される超有名アイドルの連鎖…。


###


同日午後4時、秋葉原に現れたARフレームに周囲のギャラリーも驚いていた。ARフレームに関しては、ビル街などのステージでは動ける範囲等を考慮して使用制限もされている。 

「来たか―」

アーカイヴはセラフィムを待っていたかのような表情をしていた。もちろん、セラフィムはアーカイヴの情報を知っていても顔は知らない。それ位にアーカイヴの正体を知っている人物は非常に少ないのである。

「アーカイヴ! エインフェリア壊滅に関しては協力してくれてありがとう…と言いたい所だが、アカシックレコードの鍵を渡してもらおうか」

セラフィムが要求したのは、アカシックレコードを開く鍵となっているヴァーミリオンだった。しかし、アーカイヴは渡すのを拒否する。

「悪いが、適格者以外の人物にはARウェポンを渡す訳にはいかない!」

そして、2強が遂に激突する事になったのである。

【この対決は予想外だった】

【お互いに超有名アイドルに対しては反旗を翻していた同士だよな?】

【しかし、お互いにやり方が違っていた。つまり、そう言う事だろう】

【セラフィムのやり方は、拝金主義者を捕まえる為の物だが、一歩間違えれば超有名アイドル以外のコンテンツが消滅する危機があった】

【一方のアーカイヴはユーザーが『超有名アイドルを根絶している』とつぶやいたのが影響しているのかもしれない】

【最近は音楽チャートと関係ない所でもランキングが超有名アイドルで独占されると言う現象があると聞いている。もしかすると、アーカイヴが超有名アイドルに対して―】

この対決は、意外な形で幕切れしようとはタイムラインを見ているユーザーも気付いていなかったのである。


《アーカイヴ VS セラフィム》


異例とも言える1対1バトルだが、これはセラフィム側が秋葉原では使用が制限されるARフレームと言う事もある。これに対して…。

【2対1でも、セラフィム側が有利だろう。葛西の2対2は相手側の武装等の影響があって実現した物。普段はARフレームに立ち向かおうという物好きはいないだろう】

【ARフレーム同士の対決ならば問題はない。今回の問題はアーカイヴにあるだろう】

【ARフレームのコストは5000固定。それに対してアーカイヴのコストは5000だったか?】

【アカシックバーストが復活している以上、5000固定になっている】

ネット上では、こういった感じで展開されている。

「始まったようだな」

「序盤で展開が動くとは考えにくい。アカシックバーストを発動させるかどうかで変化しそうだ」

「さっきの試合でもアカシックバーストは使っていない。それが意味する物は分かるか?」

周囲のギャラリーは、ここ数試合ではアーカイヴがアカシックバーストを使っていない事に対し、何かあるのでは…と考えていた。

「それは考え過ぎだろう。西雲とタッグで挑んだ時は使用していなかったか?」

「確かに、あの時は使用した。しかし、何らかの問題を抱えているとしたら…」

この試合は超有名アイドルが相手と言う訳ではない。しかし、アカシックバーストなしで勝てるような相手かと言うと、一筋縄ではいかないのが現状である。


「使わなければ…勝てないか! アカシックバースト!」

アーカイヴのマントが変化し、超高速の動きでセラフィムを翻弄する。しかし、セラフィムが超高速で動くアーカイヴに対して無策かと言うと…。

「残念だが、こちらもアカシックバーストに関しては研究済みだ!」

ARフレームから降りたセラフィムは、持っていたロングソードのプロテクトを外す。どうやら、疑似的なアカシックバーストを発動できるらしい。

「私は負ける訳にはいかない! 超有名アイドルを駆逐する為にも!」

そして、セラフィムが振りかざしたロングソードがアーカイヴの黒マントにかすった。そして、その反動で深く被っていたフードが…。

「その顔は! まさか―」

セラフィムはアーカイヴの素顔を見て衝撃を受けた。この顔にはアカシックレコードで見覚えがある。間違いがなければ、アーカイヴの正体は自分も知っている人物と言う事になる。


試合は終了し、気が付いてみるとアーカイヴがセラフィムに勝利していた。ギャラリーも今回の出来事には衝撃のあまりに言葉が出ない状態になっていた。

「虎の覆面からエインフェリアと言う組織を乗っ取るつもりだったのが、予定を変更する事になるとは―」

負傷したセラフィムがアーカイヴに対して捨て台詞のように言う。

「虎の覆面だと?」

アーカイヴも虎の覆面に関しては聞いた事があった。しかし、彼は超有名アイドルの生みの親とも言われている人物と辞書にはあるが、彼も本来は―。

「アイドルに必要なのは金ではない。もっと別な物が必要になってくる」

金とは違う何か…アーカイヴはセラフィムの話を聞いても思い当たる物がすぐには出てこない。そんな中…。

【虎の覆面が架空の人物だったのか?】

【じゃあ、エインフェリアを作った人物の正体とは誰なのか?】

【それを含めて、超有名アイドルの事件を影で操っていたのは誰だったんだ?】

【まさか、芸能事務所側の暴走と言うのは本当の話だったのか―】

【虎の覆面と言う名前自体、アカシックレコードにも記載があった。つまり、そう言う事だったのか】

(中略)

【全ての元凶が分からなくなってきた。一体、誰がこれだけの事件を起こしたのか?】

タイムラインも虎の覆面が架空の人物だと知って混乱しているように思える。それだけ、セラフィムの放った一言の影響力は計り知れないと言う事だろう。

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