フラグ
ざっくりしたアイディアだけで書いていこうと思います。
週何回か更新できればと思うので、よろしくお願いします。
ライトノベルは毒だ。
騎士峯友哉は不意にそう思い立つと、ベッドから跳ね起き、部屋の本棚に目を向けた。
騎士峯の身の丈ほどもある本棚に、たわむ程詰め込まれている本・本・本。原色を基調にした、ドギツイ背表紙が目に飛び込んだ。
騎士峯が数年かけて集めたライトノベルのコレクションである。
新作・有名作は言わずもがな、古書店を巡り、ネットオークションで競り落とした珍品・プレミア本も多々収まっている。本棚は騎士峯の情熱の塊そのものであった。
ライトノベルさえあれば、他に何もいらない。騎士峯は何の迷いも無くそう考えていた。
しかし、高校を卒業し、19歳の誕生日を迎えた瞬間。不意に騎士峯の中で何かが崩れた。
最初の症状は、話の内容がまるで頭に入らないというものだった。文字を追ってはいるのだが、焦りのような感情が生まれ、ただひたすら義務感でページをめくり続けていた。何とか1冊読み終わると、騎士峯はぐったりと疲労感を覚え、思わず文庫本を部屋の隅へ放り投げた。
何かの間違いだろう。ラノベの当たり外れは激しいしな…。
それから数日後に、そう自分に言い聞かせると、騎士峯は違う一冊に手を出した。シリーズもので、定評のある一冊だった。
しかし、これも面白くない。ただただ文字の羅列にしか思えなかった。天才女子高生で主人公だけにベタ甘なヒロインも、血の繋がっていないブラコン全開の主人公の妹も、主人公の家にホームステイしてきた、カタコトのイギリス人の金髪巨乳美少女も、文字の塊にしか見えない。突然色褪せてしまったのだ。
騎士峯はパタリとラノベ蒐集を止め、ベッドで物思いに耽る事が多くなった。高校卒業後、大学に進むわけでもなく、就職も見送った騎士峯には、時間だけは腐るほどあった。
そして、ある時、雷に打たれたように気がついた。
「そうだ。ラノベのような事は、二度と起きないのか…」