記憶⑦
やはり二人紛れていたのだ。グレイスとゴルドー=ランポス。ロウマの副官を担当している男と歩兵の将軍だった。なぜエレンを連れ去ったのだろうか。調べてみる価値はあるはずだ。
とりあえずエレンの奪還に関して協議した。レジストとデュマはエレン奪還を激しく主張していた。
ジュナイドが消極的だった。兵力も劣っているので、もう少し待ってから奪還するのも悪くないという意見だった。
パリスとサイス、ガリウス、ハシュクは黙っていた。本当はセイウンの判断に委ねるつもりだったが、セイウンは記憶が無い。つまりどうしようもなかった。
「このまま議論を続けても埒が明かない。エレンの奪還は保留にしよう」
とうとう机を叩いてセングンが結論を下した。
「本気なのですか、セングン殿!」
「レジスト、今から王都ダラストに向かっても、勝てる見込みはどこにもない。あるのは敗北だけだ。そんなに行きたければお前だけ行って、死んで来い。他の兵士達を連れて行くことは僕が許さない」
セングンの言ったことが重かったのか、レジストは引き下がった。それでも悔しいのか彼は体を震わせながら、
「だったら……どうすればいいんですか?エレン嬢を見捨てるのですか?」
「見捨てるつもりはない。いつかは奪還する」
「『いつか』とは、いつですか?」
「とにかくいつかだ」
レジストはもう何も言わなかった。さっさと部屋から出て行ってしまった。
その後、散会となった。セングンはどっと疲れがきた。一気に十年も年齢を重ねたかのようだった。
「セングン」
ハシュクだった。珍しく残っていたのである。彼が手に持っていたのは、グレイスの人相書きだった。
「この男がエレンを連れ去ったのか?」
「そうだ。なぜエレンを連れ去ったのか僕には理解できないよ」
「そうだな。セングン、疲れているなら何か元気が出る飲み物でも……」
「生憎だが、お前の施しを受けるわけにはいかないよ。なんの実験台に使われるか分かったものじゃない」
「それは残念。それじゃあ僕は仕事に戻るよ。ロビンズばかりに任せていたら心配だからな」
ハシュクは人相書きをセングンに返すと退出した。渡された人相書きを見たセングンは驚いた。




