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記憶⑤

 どれくらい待っただろうか。すでに日は西に傾いている。


「遅いな。まだかよ」


 デュマがぼやいた。


「確かに遅い。こうしている間にも、さらわれたエレン嬢はどうなっている事やら……俺は心配でたまらないぜ」


「レジスト、お前はセイウン殿が心配ではないのか?セイウン殿は記憶を失ったのだぞ」


「大丈夫だよ、ガストー。あいつは頭でも打てば、また記憶が戻るよ。記憶喪失なんてそんなものだろう」


「そんな単純に戻るわけないだろう。記憶喪失だぞ。下手すれば、一生戻らないかもしれない。そう考えただけでもかわいそうだ」


「俺はさらわれたエレン嬢の方がかわいそうだ」


 どうやら、こいつとは馬が合わないらしい。ガストーは諦めることにした。ガストーが諦めたのと同時にドアが開いて、セングンとパリスが現れた。


「結論が出たぞ」


 セングンが言った。


「それでどうなった、軍師さん?」


 デュマが茶化しながら尋ねたが、セングンは敢えて無視した。


「セイウンはこれから、旅に出させる。同行者はパリス。彼に全て一任させる」


「ああ、そういう事か。なるほどね……はあ!」


 デュマが叫んだのと同時に、場が騒然となった。全員、驚きを隠せないでいた。


「なんのつもりだ、セングン?」


「僕ではなくパリスの提案だ、バルザック」


 一同の視線が、パリスに注がれた。まいったね、とパリスは頭をかいていたが一息つくと口を開いた。


「今のセイウンの状態では、ここにいても、足手まといになるのは目に見えている。ならば、さっさと追い出すのが得策だ。しかし、ただ追い出したところで意味は無い。外で精神と肉体を一から鍛え直す。これが賢明な処置だ」


「記憶を戻す方法は無いのか?」


 ガリウスが尋ねた。


「ならば医者のハシュクに尋ねてみよう。ハシュク、記憶喪失の人間の記憶を元に戻す薬もしくは治療法はあるのか?」


「あるわけないだろう。そんな薬があったらこっちが、お目にかかりたい。僕はエレンの胸を大きくする薬を作るだけでも苦戦しているのに。まったくあの薬ときたら本当に……」


 エレンの胸を大きくする薬の話になった途端、パリスは顔をセングン達に顔を向けた。

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