記憶③
「これからどうすればいいんだ……」
ガリウスの声は弱々しかった。セイウンと反乱のどっちを心配しているのか分からないが、セングンは何も返さないことにした。
「どうするも反乱を始めた以上、続けるに決まっているだろう」
デュマだった。セングンはデュマの言った事に対して、舌打ちしそうになったが、どうにか耐えた。
しかし心中で、馬鹿がと罵った。だから単細胞は嫌なのである。頭領のセイウンがあんな状態で、どうやって継続させるというのだ。少しは考えろと言いたかったが、場の空気を乱すわけにはいけないので黙っていた。
「私は今の状態で戦うのには反対だ」
今度はガストーだった。セングンの予想は適中した。彼は反対すると思っていた。
「おい、ガストー。どういう事だ?なんで反対なんだよ?」
デュマがガストーをにらみつけた。下手な返答をしようものなら、斬りかかりかねない勢いだった。
「頭を冷やせ、デュマ。セイウン殿があんな状態である今、どうやって反乱が継続できるというのだ?」
「みんなで力を合わせればなんとかなるし、そのうちあいつも記憶を……」
「簡単にいくと思ったら大間違いだ。よく考えろ。エレンが欠けているだけでも相当な痛手なんだぞ。そこに追い打ちをかけるように頭領のセイウン殿が記憶喪失。どこに戦える要素がそろっているのだ?」
デュマは言葉につまってしまった。言われてみれば、その通りだった。セイウンもエレンも反乱軍の要ともいえる存在だった。
そのうち一人はさらわれ、一人は記憶を失って戦で使い物になるか分からない。
正直先が思いやられる。デュマは深い溜息をつき、ガストーは元来の発汗症のためなのか、いつもより多くの汗が額に浮かんでいた。
「ガストーの言った事に一理あるな」
セングンは溜息をついた。
「ちょっと、待った」
「サイス殿、どうかしましたか?」
「今の話からすると、我々は戦わずに、ずっとここで過ごすのですか?」
「そういう事になりますね」
「それはどのくらいの期間ですか?」
「さあ、そこまでは」
「そんな無責任な。あなたはそれでいいかもしれないが、兵士達の中には戦いたい者もいるのですよ。そいつらの気持も考慮してくれているのですか?」
こっちだってしている。だが、できないのが現状である。反論しようとしたセングンだったが、それより早く口を開いた者がいた。




