記憶②
気味の悪い沈黙がしばらく続いた。ハシュクとロビンズはいつまで続くのだろうかと思い、生唾を飲んだ。
「もしかして僕達が誰かも分からないのか?」
最初に口を動かしたのはハシュクだった。
「そうだ」
「おいおい、刺されて記憶が無くなったのか。まるで三文小説だな」
感心しているハシュクをよそにロビンズは、慌てふためいていた。
「笑っている場合ではありませんよ、先生。僕は急いでセングンさんを呼んで来ますので、先生はセイウンさんを頼みます」
「ああ、行っておいで。こいつの記憶が無くなったところで、僕は困るわけではないから」
間もなくロビンズはセングン達を連れて来た。
「セイウン、起きたのか?」
「お前は?」
「僕の事も忘れてしまったのか?」
「知らない」
「僕はセングン。お前の友達であり、この反乱軍の軍師だ」
「反乱軍?」
セイウンは友達という単語にあまり興味が無さそうだったが、反乱軍というのに顕著に反応した。
自分を無視した事にはむっとしたセングンだったが、これまでのいきさつを全て話してやった。セイウンが馬小屋の近くで刺されて、一緒にいたエレンも何者かに連れ去られたことも話した。
セイウンはエレンについても興味が無さそうな素振りを見せていた。というより、エレンの事も忘れているようだった。
「……とりあえず僕からは以上だ。起きたばかりだし、ましてや記憶が無い以上、今から全部理解しろというのは、たぶん無理だろう」
「まあな」
しばらくして、セングン達はセイウンとロビンズだけを医務室に残して立ち去ることにした。




