表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
89/158

第九章 帰還の果てに①

 甲冑の手入れなんて久し振りだった。この甲冑を最後に装着したのは、レストリウス王国を出て行った時である。ロバートの屋敷に来てからも、国に帰還する時も一切装着しなかった。おかげで黒いうるしが少々剥がれていた。


 ロウマは新しいうるしと血を塗っていた。血はシャニスの隔離施設から死んだ患者の血をもらってきた。アルバート家では、甲冑の手入れには黒いうるしと人血を塗ると決めていた。


 なぜそんな事をするのか最初は分からなかったが、やっていくうちに少しずつ理解できた。血には人の生き様が入っている。それを塗ることにより、人間の重みが伝わって来る。


 使っている血は何人分もあるため、一度の手入れで数人の重さが伝わる。人の上に立つ以上、人を知れ。これを提案したアルバート家の開祖はそう考えたのかもしれなかった。


「ロウマ様、シャニス将軍がお越しです」


 アリスの声により、ロウマは作業を中断した。


 客間に赴くとシャニスは椅子に座って待っていたが、ロウマの姿が目に入ると、立ち上がり敬礼した。


「どうした、シャニス?」


「間諜隊のアラリアを通じての報告です。クルアン王国の元帥ラスティ=レルクの側近のパリスが、このレストリウス王国に逃げ込んだという情報が入りました」


「理由は?」


「なんでも政変を起こそうとして失敗したとか……」


 ラスティはクルアン王国で一番の奸臣と聞く男だった。パリスはラスティの子飼いの将軍として有名だったが、そのパリス自らが、政変を起こすとは不可解だった。何が不満だったのだろうか。


「どうせ詳しいことは、まだ分かってないのだろうし、パリスが政変を起こそうとしたというのも、表向きの理由かもしれない」


「ええ。情報が錯綜しているらしく、まだはっきりとは……」


 このレストリウス王国も内部の体制が変わったように、クルアン王国も変わってきたのだ。これもやはり、セイウンが現れたからだろうか。向こうには現在、グレイスとゴルドーの二人を送り込んだ。任務はエレンを奪取することだった。


 あの女がグレイスの娘と聞いた時はロウマも耳を疑った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ