見せつけられる現実⑦
驕っているはずがない。反論したいが声が出なかった。まるで喉をつぶされたようである。一気に七回目の突きを叩き込まれた。地面に転がったセイウンは立とうとしたが立てなかった。それどころか、いつの間にか心中で叫んでいた。
誰か助けてくれ、と。
「地方の雑魚軍団を蹴散らして自信が付いたとそこにいる連中から聞いているが、俺からしてみればそれは否だ。俺からしてみればそれはただの驕りであり、自信でも強さでもない」
セイウンの背中に突如、圧迫感が感じられた。パリスが足で踏みつけたのである。何度も足蹴にされた。立とうとしたが、足はその都度、背中を襲って来る。あの時と一緒だった。
クルアン王国の練兵場で貴族の子弟どもにやられた時と。
あの時は、必死で攻撃や罵倒に耐え抜いた。なのに、今はそれに耐えれるほどの自信がなかった。早く誰でもいいから助けてくれと考えてしまう。これは自分が驕ったからなのか。驕ったが故のあさましき結果なのだろうか。
周囲を見渡した。セングンは何もせずに、ただ見ていた。彼は自分の驕りに気付いていたのだ。サイス達はパリスの気迫に押されてしまい、手出しができないでいた。
セイウンは、ようやく、自分の驕りを悟った。自分はたった一度、レストリウス王国を破った程度で、いい気になっていた。これからも破らなければならない連中はいるんだ。それなのに、たった一度の勝利で驕ってしまった。
こんな事では、あの男を倒すことはできない。自分がもっとも戦ってみたい相手を。
「足をどけろ」
「聞こえないぞ。もっと大きな声を出せ」
「どけろと言ったんだ!」
パリスは、背中からゆっくりと足を話した。
立ち上がったセイウンは、口から血痰を吐き捨てると棒を構えた。
向き合ったパリスも、ゆっくりと棒を構えなおした。
二人は対峙した。静かだった。邪魔な人の声や鳥のさえずりも聞こえない。
聞こえるのは風のみ。自分の特殊能力と同じ風だけだった。それさけ聞こえていれば十分である。
両者は突きを入れた。
片方が倒れた。
パリスだった。棒も取り落とし、後方まで吹っ飛んだ。




