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見せつけられる現実⑤

「分かった。見せようじゃないか。実力というものを」


 パリスは、ほくそ笑んだ。




     ***



 一撃だった。皆次々と、馬上から突き落とされていく。パリスの率いる軍は、彼が自分で連れて来た二百騎だった。


 だが、実際使っているのは、その中の五十騎程度である。


 最初に相手になったのは、バルザックだった。彼はパリスの態度が気にくわないので、打ちのめしてやろうと思って出たが、またたに打ち破られた。


 次に相手になったのはデュマだが、彼もバルザックと同じように馬上から落とされてしまった。速さでいったら、バルザックやデュマの指揮する軍の方が上だった。なのに、彼らは負けた。


 見ていたセングンは分かった。パリスの軍の武器は速さでも力でもない。正確性である。


 確実に相手を馬上から突き伏せていくことを武器にしている。あれだけ相手を正確に仕留めるには、並みの集中力では駄目だ。相当な訓練をほどこさないとできない。


 いや、ただ訓練を厳しくするだけでも駄目である。指揮官の素質というものもある。パリスという男。間違いなく、ただ者ではない。セングンの背中を冷たい汗が流れた。


「これで実力は認めてくれるか?」


「もちろんだ、パリス。歓迎するよ」


 セイウンは手を差し出して握手を求めた。しかし、パリスは冷ややかに笑った。


「表面は歓迎しているが、口調は穏やかではないな。やはり、あの時の事をまだ根に持っているか?」


「何を言っているんだよ。さっきも言った通り、俺はもうあの時のことは気にしてないし、お前のような強い奴は大歓迎だよ」


「『強い奴』か……それならば、俺がもっと強い証拠を見せてやるか。セイウン、棒を持て」


「えっ?」


「棒を持て、と言ったんだ。お前の得意分野だろう?」


「そうだけど……でも俺、結構自信あるけど、いいのか?」


「構わないさ」


 考えてみれば、クルアン王国で武術師範の職に就いていた時、セイウンはパリスとは一度もやり合ったことがなかった。ある意味面白かったので、セイウンはほくそ笑んだ。

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