見せつけられる現実④
セイウンは真正面にいるパリスを見据えた。
「用件は、俺達の仲間になりたいという事か?」
「仲間か……そんなお菓子のように甘い関係は嫌いだな。どちらかと言うと、契約させろだ」
パリスが不適な笑みを放った。
「貴様のその態度は何だ?」
セイウンの後ろに控えているバルザックが出て来て、パリスの胸ぐらをつかもうとしたが、それより素早く一人の青年が前に出てバルザックの腕をつかんで、ねじ上げた。
「やめろ、ジュナイド」
パリスに注意された途端、ジュナイドという青年はバルザックを解放してやった。腕をさすりながらも、バルザックはまだパリスに悪態をついていた。
「このラスティの犬が……」
「言いたい事がそれだけとは悲しいな。クルアン王国にいるお前の両親はさぞかし嘆くだろう。野蛮な子になってしまった、と」
「何だと!」
「やめろ、バルザック。今は争う時じゃない」
セイウンが間に入った。
セイウンに言われるとやむを得ないのか、バルザックは渋々引き下がった。しかし、目にはまだ、怒りの炎がともっていた。
「それでどうする?契約するのか、しないのか?」
「俺は構わない。喜んで契約するよ。よろしくな、パリス」
一同は唖然とした。バルザックが急いでセイウンに詰め寄った。
「セイウン殿、こんな男を我らの軍に置いて大丈夫なのですか?こいつはあなたを、ひどい目にあわせた男ですよ」
「もう昔の事だから、いいよ。それよりも、戦力になる奴はなるべく置いておきたい。それはお前も一緒だろう」
「俺は嫌ですよ。こいつを側に置くなんて」
「お前よりは役に立つはずだ、バルザック」
不敵な笑みを浮かべながら、パリスが呟いた。
「なんだと?いい加減にしておけよ!だいたい貴様は、軍を動かす事ができるのか?俺はクルアン王国にいた時、貴様が軍を率いていた姿を見た事がないぞ」
「それで?」
結局、それ以上言えないバルザックだった。言う事がそれしかなかった思いつかなかった。一方、言葉に窮しているバルザックに対してパリスは、ますます笑みを強めていった。




