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見せつけられる現実③

「それに……」


「まだあるのか?」


「私に挨拶もしてないで結婚をしたんだ。絶対に許さん」


「消息が分からない親父に、どうやって挨拶をするんだよ。いい加減にしてくれよ」


「とにかく認めない」


「はいはい」


 ゴルドーはあきれ果てた。娘を大事に思うのはいい事だが、いくら何でも異常である。悪い男ではないのだが、頭が固すぎるのが難点だった。


「おっさんも少しは、柔らかくなれよ」


「何か言ったか?」


「いやいや、何にも」


 慌てて口をつぐんだ。


 馬蹄の音が聞こえてきたので、二人は話を中断した。誰か乗馬しているのだろうか。


 だが、グレイスとゴルドーの前に現れたのは、白馬が一頭だけだった。セイウンの愛馬である。確かジェトリクスという名前だったはず。これは不思議な馬であり、普段から厩舎きゅうしゃの外にいて好きな時に帰って来るという習慣があった。


 ジェトリクスは二人を一瞥いちべつすると厩舎に戻った。


「あの馬の前では、あまり話をしない方がいいぞ」


「どうしてだよ、おっさん?」


「なんとなくだ。直感だ」


 グレイスは、にやりと笑った。




     ***



 久し振りに見る顔だった。最後に見たのは、半年以上前だった。あの頃に比べたら、幾分かせたように見える。

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