見せつけられる現実②
ロウマはエレンを知っていた。どこなのか知らないが、会ったことがあるらしい。案の定、ロウマは確かめてどうするつもりか尋ねた。グレイスはすぐに答えた。本物でなかったらすぐに帰還するが、本物だったら連れて来ると。
ロウマはそれで承諾した。ただし、グレイス一人では危険ということで、誰かもう一人選ぼうとしていたところに、ゴルドーも志願した。今まで犬猿の仲だった二人が協力して仕事をやる事に驚いているロウマだったが、首を縦に振ってくれた。
二人はすぐに出発して、反乱軍がオルバス騎士団との戦に備えている混乱の最中入り込むことに成功した。
「改めて尋ねるがおっさん、反乱軍にいるエレンという女は、本当にあんたの娘なのか?」
「間違いないだろう。妻と顔がよく似ていた」
「そうか……けれど、信じられないな。どうやったら、こんなおっさんに、あんなべっぴんの娘ができるんだよ」
べっぴんとは随分とおっさんくさい言い方だったので、グレイスは思わず苦笑してしまった。ゴルドーはグレイスの苦笑に気付くことなく、クルミパンをほおばっていた。
「うらやましいか?」
「全然。俺、別に父親じゃないから」
「じゃあ、言うな」
しかめっ面のまま、グレイスは食事を再会した。食事が終わると、二人は今後のことについて策を練った。エレンを連れ去るにしても、隙が無かった。
エレンはほとんど、セイウンといるし、夜は外に出る気配が無かった。そのため、連れ去るのは昼間しかできない。
「おっさん、仲がよいな、あの二人」
「誰の事だ?」
「分かって言っているだろう。エレンと頭領のセイウンだよ」
「ふん。私は認めん。あんな男」
グレイスは鼻息を荒くしながら、クルミパンを頬張り、スープで流し込んでいた。
ゴルドーはその光景に溜息をつくしかなかった。
「あのなあ、認めないと言っても、二人はもう結婚しているんだぞ」
「役所に書類は提出していないから、法的には無効だ」
こいつはブランカか、とゴルドーは思った。




