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第八章 見せつけられる現実①

 馬糞の処理は終わった。疲れる作業である。体中には泥と微かな馬糞が付着しており、水浴びをしても、臭いは容易に落ちそうになかった。グレイスは額の汗をぬぐった。うっかり馬糞が少々、額に付いてしまった。


「くそっ!」


 思わずつまらない洒落しゃれを言ってしまった。


「おっさん、飯だぜ」


 ゴルドーが弁当の包みを持って現れた。


「こんな姿の私に、飯を食えと言うのか?」


「何だよ。糞まみれなのは、仕方ないだろう。仕事なのだから」


「確かに。だが、こんな仕事の後に、飯はさすがに……」


「おっさん、この弁当は誰が作ったか思い出せよ」


「食べる」


 素早い動きだった。グレイスはゴルドーから弁当の包みをひったくると、中身を確認していた。


「ほう。今日はクルミパンとオニオンスープにサラダか。デザートにケーキまでつけているな。さすが私の娘だ。気配りがよくできている」


「汚いな、おっさん!手を洗ってつかめよ!絶対食い物に触れるなよ!俺のも入っているのだから」


「すまん、手遅れだ」


「ふざけんな、クソおやじ!」


「冗談だ」


 グレイスはゴルドーに包みを返すと、手を洗いに出かけた。念のためであるが、ゴルドーは中身が無事かどうかしっかりと点検した。


 どうにか無事だった。


「ったく、あのおっさんは……」


 あきれたが、なんだか微笑ましくもあった。以前のグレイスだったら、冗談を言う事なんてありえなかった。


 常にロウマに忠実なだけの固い人物像だったグレイスがここまで変わったのも、全ては娘が生きていたからだろうか。子供の存在とは不思議だった。ゴルドーとグレイスは反乱軍の本拠地にもぐり込んでいた。提案したのは、グレイスだった。


 反乱軍にいるエレンが本当に自分の娘かどうかこの目で確かめたかったのである。

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