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流浪の軍⑫
「考えておくよ」
『頼むぜ。話はここまでにしよう。誰かいるぜ』
ジェトリクスの顔が向いた方には、エレンがいた。
「セングンが呼んでいるわよ。あんたにお客さんらしいわよ」
「客?また院長か?」
院長とはセイウンとエレンが育った孤児院の院長のゴートだった。しかし、ついこの間来たばかりであり、また来るはずない。
「それは無いと思うけど」
エレンもその意見には否定的だった。
「分かった行くよ」
ジェトリクスに騎乗すると、セイウンはエレンにも手を差し伸べた。彼女も乗せてやるためである。
エレンはすぐにジェトリクスにまたがった。
城に向かう途中、セイウンはジェトリクスに言われた事をずっと考えていた。
どうも頭から離れなくなっていた。
「どうも気になるな」
「どうしたの?」
エレンが尋ねた。
「何でもない」
セイウンは慌てて返した。だが、不安は拭い去れなかった。




