表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/158

流浪の軍⑩


「ハイドン、散歩に付き合ってくれないか?」


「構いませんよ」


 二人は外に出た。外では兵士達が飛び散った人血を洗い流していた。不思議な事に人血は踏むとすべるし、時間がたつと悪臭も放つ。脂肪が混じっているせいだろう。セングンは城壁に付着している血を手でぬぐった。


「臭いな」


 悪血あくちという表現があるが、まさにこれだろう。とにかくこんな血は、さっさと洗い流して欲しかった。


 ふとセングンが目を向けると、兵士達が何かを荷台に積んで運んでいた。荷台には白い布がかけられている。白い布はなぜか、赤黒く汚れていた。嫌な汗がセングンの背中に流れた。


「ハイドン、なんだあれは?」


「死体を運んでいるんです」


「戦死した兵士達の遺体はすでに処分したはずだが?」


「彼らは病棟で死んだのです」


 納得した。死ぬのは戦だけではない。その後に死ぬ者もいるのだ。彼らは戦病死という扱いになる。


「まったく……毎日毎日、治療しても死ぬのか。こっちの身にもなってくれよ」


 いつの間にか背後にハシュクが立っていた。衣服や手が血まみれになっていた。彼はオルバス騎士団との戦から休む間もなく患者の手当てをしていた。


「ハシュク、愚痴をたれるな。医者なら死と向きあうのは当たり前なんだ。それはお前も覚悟しているだろう」


「お利口さんのお説教を聞いても、ありがたみは感じないよ。お説教は病棟の惨状を見てから言ってくれよ。それとも君は病棟を見た事があるのか?」


 セングンは何も返す言葉が無く、ただ茫然と立っているだけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ