流浪の軍⑦
「私をどうするつもりだ?食う気か、それとも何かの実験台にするつもりか?」
「落ち着いて、ロウマ。怖い事なんてしないから」
「ロウマ様、私はただロウマ様が喜ぶだけで十分なのです」
「……すまなかった。お前達の純粋な心を疑ってしまった」
「そうですよ師匠、何も怖がることはありません。怖いものは全部、私が退治しますから。まあ、食べてみたいという考えは無きにしもあらずですけど」
「やっぱり食われるのか!」
その後、散々ロウマをなだめるのに苦労したが、どうにかナナーとシャリーはアルバート家の屋敷に住むことになった。ロウマの頭の中では、ラトクリフとベサリウスが溜息をついていた。
『しっかりしろよ、兄弟』
『まったくだ。ここに帰って来てから、以前に輪をかけたように変人になったな』
ロウマが狂っている中、ノーチラスは腹を抱えて笑っていた。同時に、安心もしていた。
「兄ちゃん、モテモテだね。でもよかったよ。以前に比べると明るくなったし」
***
勝った事は勝ったが、安心はできなかった。破ったのはあくまで、地方軍である。これからはもっと、大きな部隊がやって来る可能性が高い。そのためには、もっと力が必要だった。
セングンは机上にある報告書をながめながら、今後の構想をねっていた。ロウマが帰還したという報告が入った。
二日前のことである。帰還したのはもっと前らしいが、どうやら秘密にされていたようだった。こちらに漏れたということは、漏えいしても問題ないと判断した敵がばらまいた情報だろう。
オルバス騎士団の新しい団長には、ライナ=ハルバートンという女が就くことになった。ハルバートン家はロウマが北方で世話になっていた家である。ならば尋ねる人物は一人しかいない。




