流浪の軍⑥
「『ぶらさげている』ってどういうことかしら?好きでぶらさげているわけではないのよ。勝手に大きくなったのよ」
「そうよ。放っていたらこうなったの。それから、私は頭は悪くないわよ。少なくとも、あなたよりは」
ナナーもアリスに呼応するかのように、シャリーに言い返した。ここ最近、毎日のように見る光景だった。
だが、今日はいつものように、流されるわけにはいかない。しっかりと男としての威厳を見せねばならない。
「三人ともいい加減に……」
「ロウマは当然、大きい胸が好きよね?」
ナナーが尋ねてきた。
「ロウマ様は当然、大きい胸が好みですよ」
アリスも輪をかけるように入って来た。
「師匠、胸なんて女の武器ではないですよ。女の武器は知、礼、美、心。これに限りますよ!」
「じゃあ、あなたは一つも当てはまってないから、やっぱり駄目だわ」
ナナーが、ぽつりと言った。
「どうしてよ!私は全部当てはまっているわよ!」
「証拠が無いわ」
「その通りです」
二人がシャリーの反論を一撃で粉砕した。
威厳を見せつけようとしたロウマだったが、やっぱり駄目そうだったので、すごすごと引き下がるしかなかった。
「あっ、思い出した。師匠、これはロバートからの手紙です」
どうやらシャリーは今思い出したようである。突き出すように、ロウマに手紙を渡した。嫌な予感がしたが、封を開き中身を読んでがっくりと肩を落とした。
『以下省略。追伸:男の子がいいな』
さっきと、ほぼ同じ内容だった。
「というわけで、これから私といっぱい楽しいことをしましょう、師匠」
「…………」
「師匠?」
「貴様らは絶対に仲間だろう!そのけんかは芝居だ!」
もはや限界だった。さっきまで冷静さを保っていたが、それもロバートの手紙で、はかなく砕かれた。




