流浪の軍⑤
「ノーチラス、冗談だよな?」
「どうして俺が兄ちゃんに冗談を言わないといけないんだよ?俺はいつだって本気だよ」
どうやら事実のようである。ロウマは後ろを振り返って三人を見つめた。アリスは四年前から使用人として働いているため、ここに居候しているのは当たり前だが、問題はナナーとシャリーだった。まさか二人とも、家出同然で来たのではという想像がロウマの頭をかすめた。
「ナナー、シャリー。お前達の家族はこの事を知っているのか?」
するとナナーは懐から何かを取り出した。取り出す瞬間に、胸の谷間が見えたがロウマはあくまで平静を装った。
手紙だった。宛名は自分になっており、差出人はナナーの父のクロスからだった。どうやらナナーはしっかりと、親の承諾を得ているようである。
「もらって来たのか?」
「いくらなんでも、勝手にやって来たりしないわ」
「すまなかった。では、拝見しよう」
ロウマは手紙の封を破ると中身に目を通した。
『以下省略。追伸:できれば、孫は早めに』
驚くほど簡潔な文章だった。とても分かりやすく、書くのが面倒くさいという感じがただよっていた。とりあえず書いておけばいいか、という手紙とはこういうものを指すのだろう。しかも、孫の要求までしてくるとは、ずうずうしい。
「分かりやすい手紙をありがとう」
「じゃあ、ここに住んでもいいのね?」
「好きにしろ」
「嬉しい」
ナナーはロウマに抱きついた。二つの胸がロウマの顔に見事に命中していた。いきなり顔に胸を押し付けられたので、ロウマは声も発することもできずに、黙っていた。むしろ黙っていた方がいいかもしれなかった。
「ちょっと、師匠に色仕掛けはやめなさいよ!」
「シャリ―、私にを言っているのかしら?」
「当然でしょうそんな余計なものをぶらさげて、師匠を誘惑しようなんて、頭の悪い奴の証拠よ。これだから胸の大きな女は困るのよ。無論、そっちの使用人も一緒だけどね」
言われたアリスは眉間にしわを寄せた。




