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流浪の軍③

 ジュナイドは、自分が無実の罪を着せられたら、きっと正気は保ってられないはずである。


「さてと、これからどこに行こうか。お前には、どこかあてはあるか?」


「西はやめておいた方がいいでしょう。小国が乱立していますし、治安もよくありません」


「南のパルテノス王国は?」


「あそこはクルアン王国と同盟を結んでいますので危険です。すでに通達は行き届いているでしょう」


「そうなると北のレストリウス王国か……」


 ふと、パリスは思い出す事があった。あの男は元気にしているだろうか。


 セイウン=アドゥール。突然、武術師範の職でやって来た男だったが、邪魔なので、すぐに追い出してやった。その後、レストリウス王国で反乱を起こしたと聞いている。どうやら最近、その国の誇る騎士団が敗れたみたいである。


 会ってみたかった。久し振りに顔を会わせて、あの男がどんな反応をするのか見てみたい。


「レストリウス王国へ向かうぞ」


「将軍はレストリウス王国に知り合いでもおられるのですか?」


「まあな。行けば分かる。それからジュナイド、俺はもう将軍ではない。ただのパリスだ。将軍なんて呼ぶ必要はない」


「そうですか。なんだかさびしいですね。随分と慣れ親しんでいた呼称ですので」


「俺からしてみれば、堅苦しいものが無くなって楽になった」


 パリスは、にやりと笑った。




     ***



 朝になった。いつも朝は苦手である。なんだか体がだるく感じる。朝なんて来なければいいのに、と思うがそうもいかないものである。


 ロウマはベッドから起き上がると、普段着に手を伸ばした。どこの貴族の家でも着替えは、使用人に手伝わせているものだが、アルバート家は全て自分でやる鉄則となっている。

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