ロウマとナナー⑩
しばらく無言の時が流れた。このままではいけないと思ったナナーは、何か話す事にした。
「ロウマ」
「何かあったのか?」
ロウマが急に尋ねてきた。彼はナナーの異変を察知していたのである。
びっくりしたナナーだが、ロウマが自分を心配してくれているのだと感じ取った。
「実は……」
ナナーは全てを話した。
「そうか。あそこに行ったのか」
「あなたは、あの隔離施設に行った事があるの?」
「ある。随分昔の話だが。あそこは確かに地獄だ。人が最期を遂げるのなら、あんな場所にはいたくないものだな」
「ええ」
確かにロウマの言う通り、あの隔離施設は地獄だった。シャニスとレイラに見せられたあの中は、重病人だらけだった。みんな悲壮な顔をしており、生きる気力というものが、見出せなかった。一刻も早く死んで楽になりたいという様子だった。シャニスやレイラはあんな所にいて、頭がおかしくならないのだろうか。
特にシャニスは数年間もあそこに勤務しているのに、いつもと変わらぬような表情だった。もしかしたら、患者の死に慣れてしまったのかもしれない。
死そのものの世界。それが、あの隔離施設なのだろう。
「医者になることを諦めろって宣告されたの」
「シャニスが言ったのか?」
「レイラさんも。私ではあれに耐えることができないと言われたわ」
「なるほど。それで、お前はどうしたいんだ?」
「諦めたわ」
「どうしてだ?お前の方から医者になると言い出したのだろう」
「そうだけど……」
「そんな状態では分からないぞ。はっきり言ってくれないか」
「耐え切れないのよ」
ナナーの声は震えていた。これでも勇気を出したつもりだが、大きな声になっていなかった。




