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それぞれの出発⑤

「こんな性格の人なんだ。だから、俺も付いていけるんだ」


「そうですね、バルザック殿」


 首を縦に振ったが、ハイドンの心中は思案の渦中だった。


 平和な世界。


 奴隷を無くす。


 子供の日記帳にでも書かれているようなメルヘンのような世界だ。そんなものが実現できると考えているのか。


 馬鹿な男だ。


 狂っている。


 狂った思想はいずれ、己を滅ぼす事になる。いや、己だけではなく他者も巻き添えにする。


 だが、ハイドンは口に出さなかった。バルザックが横にいるからだった。


「ところでお前はいつ、うちに入ったんだ、ハイドン?」


 セイウンが尋ねた。


「八月です」


「そんなに前か。でも、見かけなかったけど?」


「それはお前が、残党の村に出かけていたからだ。彼はその間、仕事をしてもらっていたんだ」


 セングンが、横から口を挟んだ。


「何の仕事だ?」


 しまった、と焦ったセングンだった。今ここでロウマの暗殺を命じていたと言ったらセイウンは怒るだろう。セイウンは卑怯な手段が好きではないから、いい気はしないはずである。ごまかすにもセングンは、うまい言葉が出て来なかった。


「ロウマ=アルバートの捜索です」


 突然、ハイドンが口を開いた。


 セングンが何かを言いたそうだったが、ハイドンは彼を手で制した。


「ロウマ?」


「はい。彼が行方をくらましたのは、ご存知でしょうか?」


「知っている。残党の村にいる時に情報が入ったよ」


 ロウマがいなくなったことは、セイウンにとって、寝耳に水だった。あの男が、国を放棄して行方をくらますなんて信じられなかった。何かの間違いではと思ったセイウンは、サイスに何回も調査をさせたほどだった。

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