ロウマとナナー⑥
何があったのか知らないが、ロウマに対しての感情は変わったみたいである。だからといって、シャニスは自分の言ったことを曲げるつもりはなかった。
「知りたいのなら、一緒に来い。来れば分かる」
二人は幕舎を出ると野営地を抜けた。シャニスはどこかに連れて行くつもりのようである。ナナーは黙って彼の後に付いて来た。しばらくすると、目的の場所に到着した。見たところ野営地のように見えないこともないが、どうも雰囲気が違っている。
黒くてまがまがしいものを、ナナーは感じ取った。
「僕は将軍職の他にもう一つ、医療班の隊長も兼務している。ここは医療班の拠点だ」
「ロウマや父から聞いているわ。あなたは最年少で隊長になったそうね」
「そんな事はどうでもいい。医療班の本拠地はもう一つ、ある事に使用されている」
「ある事?」
「重病患者の隔離施設だ」
息を呑んだ。隔離施設がレストリウス王国のどこかにあるということは、前から知っていたが、まさかこんな近くにあるとは、夢にも思わなかった。
「入るか?」
「…………」
「入るか?」
「はい……」
ナナーはようやく返事をした。シャニスは確認をとっているが、実際は無理やり入らせて現実というものをナナーに見せつけようとしているのだ。
シャニスが中に入ると、ナナーもおそるおそる、まるで危ないつり橋を渡るかのように足を踏み出した。一歩一歩がつらく、重く感じた。背中に岩を背負わされたかのようだった。
誰かが走って来た。




