ロウマとナナー④
ユースチスとは最後まで和解できなかった。それがロウマにとって心名残だが、死んだ者は二度と戻って来ないのである。
「後任は決まったのですか、師匠?まさか私ではないでしょうね?」
シャリーが期待というものを、顔にあからさまに出して尋ねた。
「まず有り得ない。お前はまだ副官としての力量が未熟だからな」
にべもなかった。ロウマの言ったことに、シャリ―はうなだれてしまった。
「ディナ、私はライナにしようと考えている」
「ライナ姉さんに?」
「そうだ。ライナは団長としての力量を持ち合わせている。だから、彼女を派遣したい。まず、すぐ下の妹である君の意見をうかがいたい」
「問題ありません。ライナ姉さんでしたら、私も喜んで賛成します」
「では決まりだな。陛下には私から報告しておく。辞令が届き次第、オルバス騎士団の城に向かわせろ」
「かしこまりました。ライナ姉さんには、私の方から伝えておきます」
ディナは幕舎から姿を消した。
ロウマは地図を取り出すと、ある一点に目を集中させた。
廃城。かつて父のジュリアスが陥落させた城だが、その城に再び人が集まり反乱が勃発した。よりによって頭領があの男だったとは意外である。あの男がクリスト=フォスターの息子というのも驚くことだった。
しかし、不思議ではないかもしれない。考えてみれば、あの男と初めて会った時から妙な違和感があった。宿命というものだろうか。それとも、本当にただの偶然か。
ロウマの心中でラトクリフとベサリウスが呟いた。
『俺は偶然だと思うぜ、兄弟』
『僕は違うね。宿命の方だな』
二人とも考えが違った。それぞれの意見が分かれるのも面白いものだった。
自分だったら、どれを取るだろうか。
決めた。
「二つともだな」
「えっ?何ですか、師匠?」
「いや、何でもない、シャリー。独り言だ」
「そうですか。誰かと話しているように感じましたけど。私の気のせいですかね?」
「気のせいだよ」
軽く流しておくことにした。




