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ロウマとナナー②

 容易に死ぬのだったら、戦場で死ねとは言わない。生きることで苦しめという意味だろう。右宰相にはブランカが就任して、キールは左宰相のままだった。


「師匠、調練が終わりました」


 幕舎にシャリーが入って来た。ロウマの横にいるシャニスが眉をひそめた。彼を気安く師匠と呼ぶシャリーに嫉妬しているのである。


「いやー、大変でしたよ。ロバートの調練が下手くそだから、姉として本当に苦労しますよ」


「そうか。私はロバートの方が上手に見えるがな」


「甘いですよ。あいつは表面だけです。師匠のいないところでは、さぼってますから」


 シャリーはロウマに猫のように、体をこすり付けてきた。近くにシャニスがいるのなんて、お構いなしだった。


「おい、女。元帥から離れろ」


「何よ、あんた?弟子が師匠と親しく会話をするのは、当たり前のことでしょう」


「それが会話だと?ただ惑わしているようにしか見えないぞ」


「慣れ合いよ、慣れ合い。私をナナーやアリスのような性欲の塊と一緒にしないでくれる」


 この場に二人がいたら、絶対に激怒するような事を平気で言うシャリーだった。


「分かった。あんたさては、私と師匠が仲良くしている事が気に入らないのでしょう」


「その通りだ。お前の無駄話のせいで、元帥の仕事に支障が出たらどうするのだ。元帥と話がしたかったら、まずは僕の許可を得ろ」


「あんた何様?私の方が年上なのよ。あんたこそ私に敬意というものを払いなさいよ」


「それは悪かった。あまりにも子供じみていたから、てっきり二つか三つほど年下かと思ってた」


「なんですって!師匠、こいつ性格が悪すぎですよ!」


 やはりこうなったか、とロウマは溜息をついた。シャニスの性格とシャリーの性格は合わないのではと予想はしていたが、こんなに早く的中するとは思わなかった。


「とにかく、僕はお前が、元帥の弟子なんて絶対に認めないぞ」


「あんたに言われる筋合はないわ。こっちこそ、あんたが師匠の親友だってこと自体、信じられないわ。師匠、よくこんな奴と十年以上も親友でいましたね。私だったら耐えきれなくて絶交しますよ」


 後から後から、お互いの口から出る罵詈雑言ばりぞうごんを聞いていると、ロウマは疲れてきた。

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