表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
52/158

飛翔する獅子⑪

 エレンが顔を上げると、騎士が一人いた。


 外見はサイスと同じくらいの中年の男だった。騎士は残りのレストリウス兵を剣で次々と両断していった。


「あの……」


 エレンが礼を述べようとしたが、騎士は素早く立ち去った。エレンは騎士に生き延びてもらいたい、と心から願った。


 セイウンは城塔でジャグリスを振るっていた。五人の敵が、セイウンに向かって来た。敵の目的は城塔にかかげている旗を奪うことだった。一人目をジャグリスで突いたセイウンは、二人目も一気に殺し、三人目も突き伏せた。残りは二人だったが、もう疲れていた。


「セイウン!」


 エレンがセイウンの加勢に入った。同時にセイウンも駆けた。敵兵二人は瞬く間に、セイウンとエレンの手にかかった。


「遅いぞ、エレン」


「敵に邪魔されていたのよ。あんたこそ、あの程度の連中に手こずらないでよね。私の自慢の旦那なんだから、しっかりしなさいよ」


「分かっているよ」


 セイウンは、にやりと笑った。城塔から戦況をうかがったが、やはりよくなかった。兵士達に疲労の色がうかがえる。城門方面から太鼓の音が二度鳴った。もうすぐ城門が破られるという危険の知らせだった。


 冷や汗を流しているセイウンの目に、騎馬の部隊が映った。異様な気を放っている。まるで、己の気力を全て使うかのように城に向かって来ていた。先頭にいるのは、初老の男だった。セイウンは目がよい方だったので、遠くからでも男がの姿が確認できた。


 あの男がおそらく、大将のユースチスなのだろう。そうに違いない。凄まじい闘志である。城門を破ったら突入してくるつもりだろう。そして自分の首をとるつもりだ。いや、つもりではない。絶対にするのだ。


「セイウン、どうかしたの?」


「エレン、弓はあるか?」


「持ってないわ」


「そうか……」


「弓ならここだ」


 いつの間にやって来たのか、体中を血で濡らしたセングンが後ろに立っていた。左手には弓矢がしっかりと握られていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ